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彼女の今世
episode67
「…………?」
(悪女ってどんな悪女?)
理解が追いつかない。
「リーリー、悪者になるの?」
アリアも不思議そうに私を見上げる。
「何言ってるんだって思いますよね。きちんとご説明します」
クリス様は慌ただしげにソファに座り直し、説明を始める。
「ルーチェさんを捕まえた組織と私達が追っていた組織は同一のものです。根城の場所も突き止め、明日のオークションについても耳に入っています。あとは突入して全員を捕縛すればよいだけなのですが……」
クリス様は言葉を濁し、ウィオレス様が後を継ぐ。
「闇オークションには招待状が必要で、それを持つヤツを拷問して手に入れたのにも関わらず、そこに書かれていた名前は誰だと思う?」
サラリと物騒な単語が飛び出てきたのを一旦無視する。
「見当もつきません」
「拷問されたやつと、その娘だ。ちなみに、年齢は公爵令嬢と近い」
(…………娘が参加するの!?)
私はとても動揺してしまう。親に無理やり連れていかれているのだろうかと思ったが、ウィオレス様の次の一言でバッサリ切り捨てられた。
「何でも、その年齢にして傲慢で我儘で。買った妖精を甚振り、羽を毟りとって殺すのが趣味ときた。狂って──……」
「あああっ! ウィオレスそれくらいに! リーティア嬢には刺激が強いです」
ぐっとクリス様がウィオレス様の口を塞いだ。納得いかないのか彼は眉を顰めている。
私は平気だったけれども、アリアとルーチェは想像してしまったのか、ゾゾっと身震いし、身体を寄せあって私の首にひしと抱き着いてきた。ちょっと首が苦しい。
「すみません。気分が悪くなるような話で」
もごもごと口を動かすウィオレス様を全力で阻止しながら、クリス様が謝罪する。
「驚きましたが別に平気です」
公爵家の娘ということでそういうものを知らないと思っているのだろう。動揺こそしてしまうが、前世でそこそこ厳しい人生を送ってきたのでこれくらいで真っ青になるほどか弱くはない。
「そ、そうですか? ご令嬢には結構刺激が強いと思うのですが」
「大丈夫ですので続きをお願いします」
促せば戸惑いながらも口を開いた。
「魔術師なのだから転移して一気にドカンとやってしまえばいいのでは……? と思うかもしれませんが、会場が外部からの魔法を遮断する魔法がかけられていて、不可能なのです。無理やり破壊しようとすると周りにある建物のへの被害も尋常ではないですし」
(だから招待客に成り代わって潜入して中から壊すってことね)
肯定するように考えていた事とほぼ同じ内容が続く。
「ただ、一人でも中に入ってさえしまえばその人を軸に転移が可能になるのです」
「──私はその娘を演じてもう一人の方と一緒にオークションに参加すればよいということですね」
「そうです。理解が早くて助かります」
「ですが、疑問があります」
未だ首に縋り付く二人を手の上に乗せ、膝の上に移動させる。
「未熟な私ではなく、魔法省に所属している女性の魔術師様の方が適任かと……」
性別は無理でも、魔法で身体を縮めることは可能だ。女性の魔術師様は数が少ないがいないわけではない。こんな部外者の私よりも事情を知っていて、任務にも慣れているだろうに。
「あーほかの者はですね、その、」
「──ガサツだから無理。貴族の娘なんて演じられない」
言い淀むクリス様の手を引き剥がし、これまたウィオレス様がはっきりと言ってしまう。
「娘は高飛車だがマナーは身につけているという極めてめんどくさいちぐはぐだ。これが頭からっぽの娘とかだったら演じられただろうけど、立ち振る舞いなんて一朝一夕で身につくものではない。そのような人材は魔法省に居ない」
流水のように止まることなく毒を吐きすぎて、もうクリス様は頭を抱えている。
「──そこで公爵令嬢だ。君は年齢もほぼ合っているし、何よりマナーが既に身についている。魔術師ではないが、魔法省とも縁がないわけでは無い。落ち着いているし頭も回る。何か起こってもパニックになりにくい、条件が揃っている」
これは遠回しに褒められているのだろうか。よく分からない。
「とまあ、そのような事情がありましてリーティア嬢には悪女になって頂きたいのです」
クリス様は自由にしていると何を言い始めるか分からないウィオレス様の口を再び塞ぎ、かなり強引にまとめようとしている。
「身の安全は保証致しますと言いたいところですが、なにせ敵地ですので……危険な目に合わせてしまう可能性は大きいです」
私の顔色を窺っているが、答えは既に決まっていた。
約束をした時点で、出来る限りことはすると誓ったのだから。
「お引き受け致します」
きちんと演じられるだろうか。悪女になりきれる自信は全く無くて、不安しかない。やる気だけでは務まらない。
「ありがとうございます。では、口調と仕草を多少変えていただく必要がありますね。今のリーティア嬢はお淑やかすぎますから」
「……口調」
それはマナーと同じように一朝一夕で変えられるものでは無い気がする。初っ端から無理難題である。
「傍若無人に振る舞えばいいんだ。高笑いとか目を吊り上げたりだとか。とにかく偉そうにするんだ」
ようやく口が自由になったウィオレス様が言う。
「…………お手本が欲しいです」
周りにいる友人も家族も、私と同じような口調や立ち振る舞い。「偉そう」というのが、想像つかなかった。
するとウィオレス様が懐から書物を取りだした。
「この主人公を虐めぬく娘の真似をするんだ。時間が無いから付け焼き刃でいい。短時間で叩き込むんだ」
頷いて渡された書物に目を通す。
(〝女狐!〟……? 〝ゴミ屑以下の分際で、視界に入ってこないでいただきたいですわっ!〟…………なにこれ)
どうやら主人公は様々な嫌がらせを受けるらしい。終いには、ウィオレス様が参考にしろといった令嬢によって階段から突き落とされたり、池で溺れ死にそうになっている。
「あの、これ、本当にこんな直接的に行ったり言ったりする人いるんですか……?」
パタンと本を閉じ、絶句してしまう。一体どのような本なのだろうかとタイトルを見る。
『傷心令嬢は王太子に見初められ溺愛される』
巻かれている帯には人気シリーズなんて書いてあるが、ちっとも良さが理解できない。だって現実味が無いのだ。
(平民の娘を婚約者にしようなんて考えは、どう頑張っても貴族から顰蹙を買い、敵に回す行為よ)
愛の力で──そんな砂糖菓子のような考えが通るほど現実は甘くない。下手したら王家に見切りをつけて反逆を企てる者も現れ、国が荒れてしまう。
私の場合、レリーナという例外があるが、彼女は普通の平民ではなかったから。
「中身はどうでもいいんだ。というか、気にしないでくれ。公爵令嬢はこの悪女を真似すればいい」
指し示したのは赤髪につり目の瞳が冷たさを感じる挿絵の女性。確かに作中に登場する王太子の婚約者であるこの公爵令嬢は、非道なことばかりしていて悪女だ。参考にはなる。
「この『ですわ』口調をすれば良いんですね?」
「そうだ」
私は日が暮れるまで「悪女」というものを練習した。クリス様も彼が知っている悪い女というものを教えてくれて、練習に付き合ってくださった。
出来に納得はしていないけれど、二人のおかげで何とか形になったと思いたい。
ただ、帰宅したのちにアリアから「リーリー、悪女を演じようと頑張ってるけどなりきれない人って感じ」と言われてしまい、必死にかき集めた少しばかりの自信も消えてしまった。
◇◇◇
待ち合わせ場所に着き、クリス様やウィオレス様と合流する。手渡された服に着替え、魔法で髪の色を変えてもらい、準備を整えた。
私はポケットをのぞき込む。
「アリア、ルーチェ、絶対に出てきちゃダメよ」
「うん」「はい」
彼女達は狙われてしまうからお留守番してもらおうと思っていたのに。頑なに絶対ついて行くと言って聞かないものだから、私が折れたのだった。
代わりに、何があっても姿を現さないよう約束を取り付けてある。
クリス様とウィオレス様は複数人の魔術師様を引き連れていた。今日も今日とて雨が降っていて気温が低い。マントについているフードで雨露をしのぐ軍団は、霧が漂っているのも相俟って物々しい印象だ。
彼らは合図があるまで付近の物陰や建物内で待機しているらしい。これだけの魔術師様が関わっているとなれば、予測不能の事態が起きてもなんとかなるだろう。
「さあ、行きましょう」
言われて、父役をすることになったクリス様と本物の親子のように手を繋ぐ。そうして私はオークション会場となる場所の近くに転移したのだった。
(悪女ってどんな悪女?)
理解が追いつかない。
「リーリー、悪者になるの?」
アリアも不思議そうに私を見上げる。
「何言ってるんだって思いますよね。きちんとご説明します」
クリス様は慌ただしげにソファに座り直し、説明を始める。
「ルーチェさんを捕まえた組織と私達が追っていた組織は同一のものです。根城の場所も突き止め、明日のオークションについても耳に入っています。あとは突入して全員を捕縛すればよいだけなのですが……」
クリス様は言葉を濁し、ウィオレス様が後を継ぐ。
「闇オークションには招待状が必要で、それを持つヤツを拷問して手に入れたのにも関わらず、そこに書かれていた名前は誰だと思う?」
サラリと物騒な単語が飛び出てきたのを一旦無視する。
「見当もつきません」
「拷問されたやつと、その娘だ。ちなみに、年齢は公爵令嬢と近い」
(…………娘が参加するの!?)
私はとても動揺してしまう。親に無理やり連れていかれているのだろうかと思ったが、ウィオレス様の次の一言でバッサリ切り捨てられた。
「何でも、その年齢にして傲慢で我儘で。買った妖精を甚振り、羽を毟りとって殺すのが趣味ときた。狂って──……」
「あああっ! ウィオレスそれくらいに! リーティア嬢には刺激が強いです」
ぐっとクリス様がウィオレス様の口を塞いだ。納得いかないのか彼は眉を顰めている。
私は平気だったけれども、アリアとルーチェは想像してしまったのか、ゾゾっと身震いし、身体を寄せあって私の首にひしと抱き着いてきた。ちょっと首が苦しい。
「すみません。気分が悪くなるような話で」
もごもごと口を動かすウィオレス様を全力で阻止しながら、クリス様が謝罪する。
「驚きましたが別に平気です」
公爵家の娘ということでそういうものを知らないと思っているのだろう。動揺こそしてしまうが、前世でそこそこ厳しい人生を送ってきたのでこれくらいで真っ青になるほどか弱くはない。
「そ、そうですか? ご令嬢には結構刺激が強いと思うのですが」
「大丈夫ですので続きをお願いします」
促せば戸惑いながらも口を開いた。
「魔術師なのだから転移して一気にドカンとやってしまえばいいのでは……? と思うかもしれませんが、会場が外部からの魔法を遮断する魔法がかけられていて、不可能なのです。無理やり破壊しようとすると周りにある建物のへの被害も尋常ではないですし」
(だから招待客に成り代わって潜入して中から壊すってことね)
肯定するように考えていた事とほぼ同じ内容が続く。
「ただ、一人でも中に入ってさえしまえばその人を軸に転移が可能になるのです」
「──私はその娘を演じてもう一人の方と一緒にオークションに参加すればよいということですね」
「そうです。理解が早くて助かります」
「ですが、疑問があります」
未だ首に縋り付く二人を手の上に乗せ、膝の上に移動させる。
「未熟な私ではなく、魔法省に所属している女性の魔術師様の方が適任かと……」
性別は無理でも、魔法で身体を縮めることは可能だ。女性の魔術師様は数が少ないがいないわけではない。こんな部外者の私よりも事情を知っていて、任務にも慣れているだろうに。
「あーほかの者はですね、その、」
「──ガサツだから無理。貴族の娘なんて演じられない」
言い淀むクリス様の手を引き剥がし、これまたウィオレス様がはっきりと言ってしまう。
「娘は高飛車だがマナーは身につけているという極めてめんどくさいちぐはぐだ。これが頭からっぽの娘とかだったら演じられただろうけど、立ち振る舞いなんて一朝一夕で身につくものではない。そのような人材は魔法省に居ない」
流水のように止まることなく毒を吐きすぎて、もうクリス様は頭を抱えている。
「──そこで公爵令嬢だ。君は年齢もほぼ合っているし、何よりマナーが既に身についている。魔術師ではないが、魔法省とも縁がないわけでは無い。落ち着いているし頭も回る。何か起こってもパニックになりにくい、条件が揃っている」
これは遠回しに褒められているのだろうか。よく分からない。
「とまあ、そのような事情がありましてリーティア嬢には悪女になって頂きたいのです」
クリス様は自由にしていると何を言い始めるか分からないウィオレス様の口を再び塞ぎ、かなり強引にまとめようとしている。
「身の安全は保証致しますと言いたいところですが、なにせ敵地ですので……危険な目に合わせてしまう可能性は大きいです」
私の顔色を窺っているが、答えは既に決まっていた。
約束をした時点で、出来る限りことはすると誓ったのだから。
「お引き受け致します」
きちんと演じられるだろうか。悪女になりきれる自信は全く無くて、不安しかない。やる気だけでは務まらない。
「ありがとうございます。では、口調と仕草を多少変えていただく必要がありますね。今のリーティア嬢はお淑やかすぎますから」
「……口調」
それはマナーと同じように一朝一夕で変えられるものでは無い気がする。初っ端から無理難題である。
「傍若無人に振る舞えばいいんだ。高笑いとか目を吊り上げたりだとか。とにかく偉そうにするんだ」
ようやく口が自由になったウィオレス様が言う。
「…………お手本が欲しいです」
周りにいる友人も家族も、私と同じような口調や立ち振る舞い。「偉そう」というのが、想像つかなかった。
するとウィオレス様が懐から書物を取りだした。
「この主人公を虐めぬく娘の真似をするんだ。時間が無いから付け焼き刃でいい。短時間で叩き込むんだ」
頷いて渡された書物に目を通す。
(〝女狐!〟……? 〝ゴミ屑以下の分際で、視界に入ってこないでいただきたいですわっ!〟…………なにこれ)
どうやら主人公は様々な嫌がらせを受けるらしい。終いには、ウィオレス様が参考にしろといった令嬢によって階段から突き落とされたり、池で溺れ死にそうになっている。
「あの、これ、本当にこんな直接的に行ったり言ったりする人いるんですか……?」
パタンと本を閉じ、絶句してしまう。一体どのような本なのだろうかとタイトルを見る。
『傷心令嬢は王太子に見初められ溺愛される』
巻かれている帯には人気シリーズなんて書いてあるが、ちっとも良さが理解できない。だって現実味が無いのだ。
(平民の娘を婚約者にしようなんて考えは、どう頑張っても貴族から顰蹙を買い、敵に回す行為よ)
愛の力で──そんな砂糖菓子のような考えが通るほど現実は甘くない。下手したら王家に見切りをつけて反逆を企てる者も現れ、国が荒れてしまう。
私の場合、レリーナという例外があるが、彼女は普通の平民ではなかったから。
「中身はどうでもいいんだ。というか、気にしないでくれ。公爵令嬢はこの悪女を真似すればいい」
指し示したのは赤髪につり目の瞳が冷たさを感じる挿絵の女性。確かに作中に登場する王太子の婚約者であるこの公爵令嬢は、非道なことばかりしていて悪女だ。参考にはなる。
「この『ですわ』口調をすれば良いんですね?」
「そうだ」
私は日が暮れるまで「悪女」というものを練習した。クリス様も彼が知っている悪い女というものを教えてくれて、練習に付き合ってくださった。
出来に納得はしていないけれど、二人のおかげで何とか形になったと思いたい。
ただ、帰宅したのちにアリアから「リーリー、悪女を演じようと頑張ってるけどなりきれない人って感じ」と言われてしまい、必死にかき集めた少しばかりの自信も消えてしまった。
◇◇◇
待ち合わせ場所に着き、クリス様やウィオレス様と合流する。手渡された服に着替え、魔法で髪の色を変えてもらい、準備を整えた。
私はポケットをのぞき込む。
「アリア、ルーチェ、絶対に出てきちゃダメよ」
「うん」「はい」
彼女達は狙われてしまうからお留守番してもらおうと思っていたのに。頑なに絶対ついて行くと言って聞かないものだから、私が折れたのだった。
代わりに、何があっても姿を現さないよう約束を取り付けてある。
クリス様とウィオレス様は複数人の魔術師様を引き連れていた。今日も今日とて雨が降っていて気温が低い。マントについているフードで雨露をしのぐ軍団は、霧が漂っているのも相俟って物々しい印象だ。
彼らは合図があるまで付近の物陰や建物内で待機しているらしい。これだけの魔術師様が関わっているとなれば、予測不能の事態が起きてもなんとかなるだろう。
「さあ、行きましょう」
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