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彼女の今世
episode70
爆発音が響き渡り、魔術師様たちは一斉に魔法を展開し始めた。
「一帯は封鎖した! 一人残らず捕縛しろっ」
色とりどりの魔法陣が展開され、運悪く魔術師様の近くにいた者たちからお縄についている。が、大半はパニック状態で阿鼻叫喚となり、魔力を持つ──恐らく貴族の者は攻撃魔法で応戦しようとしていた。
そんな中、ウィオレス様は身体強化の魔法をかけているのか、常人を逸した脚力でオールポートから距離をとるため数十歩後ろに跳躍した。
「あのっあ、ありがとうご────……」
危機一髪のところを助けてもらい、お礼を言おうとするが彼は険しい顔のまま驚く行動に出た。
「舌を噛みたくなければ話すな」
「きゃあ!」
ぐるんと天と地が逆転する。どうやら担がれたらしく、彼の腕が腹部に食い込む。断りもなく突然世界が反転して寿命が縮んでしまいそうだ。
担がれて終わりかと思いきや、彼は間髪を入れず踵を返して走り始める。
「走れますっ! 走れますよ!?」
「こっちの方が早い」
乙女心としてこの格好で担がれるのは嫌すぎるのだが。私の訴えをがん無視してウィオレス様は階段を駆け上がる。私は振り落とされないよう必死に彼にしがみつく。
「転移しないんですか?」
「しないんじゃなくて出来ないんだ」
「……どうし、」
ウィオレス様が大きく動き、声が途切れてしまう。
「取り逃してるじゃないか」
彼は舌打ちをして手を後ろにかざす。見れば、捕縛から逃れたらしい参加者達が階段を登ってきていた。
「何で担当じゃない私がこんなことに駆り出されてるんだ……絶対休暇と特別手当もぎ取ってやる」
ぶつぶつと文句を言いつつも、ウィオレス様はきちんとこなしているので真面目な人なのだろう。
彼が指を鳴らすと半透明な壁が私達と彼らとの間に出現し、勢いを止められずに追いかけてきていた者たちは激突した。
情けない声が後ろから聞こえてくる。そうして階段の終わりが見えてきたところで私は気づいた。
「あっ! ま、待ってください……!」
「嫌だ待たない」
「そんなこと言わずにお願いします」
しかしウィオレス様の足は止まらない。仕方ないので私は彼の脇をつねって無理やり止めようとしたのだが、睨まれてしまった。
「止まって何がしたいのさ。私の役割は君を無事救出するだけなんだけど」
「では追加でお願いします。私がいた場所に囚われた妖精たちがいたのですが、鳥籠から手を離してしまって……ウィオレス様が助け出してくれませんか?」
「そんなの他の者に任せればいいじゃないか」
「ダメです。とても弱っていましたし、保護魔法のかかっていない鳥籠は、魔術師様たちの魔法が当たってしまうかもしれません。一刻も早く助け出さないと」
(魔術師様たちは逃げないオークションの品物よりも逃亡を図る参加者たちの捕獲に走ると思うのよね)
可能性は低いが、魔術師様の包囲網をかいくぐって逃げ出せた者がいた場合、その人が妖精たちを連れて行ってしまうこともあるだろう。
彼女たちを闇市場で売れば金貨が袋いっぱいに手に入るだろうし、逃亡資金となりえる。
その筆頭としては魔力の色が見えると言っていたオールポートだ。彼は支配人らしいから、スタッフや参加者よりも頭の回転が早そうであるし、私に明かしたもの以外にまだ奥の手を隠しているかもしれない。
(ああ、死ぬ気で取っ手を掴んでおけばよかった)
触れた際、手に走った痛みで離してしまったのを今更ながら後悔する。
問題は混沌としているあの場からウィオレス様が鳥籠を探し出せるのということだが、私は良い方法を思いついていた。
「ウィオレス様は追跡魔法を使えますか? 妖精たちの入った鳥籠にかけられた魔法を私が解いたので……たぶん、魔力の残滓が残ってるはずです。そこから辿れますよね?」
「辿れるけど…………自分で抱えてよね」
階段を駆け上がりながらパチンと指を弾く。しばらくして前方の空中に鳥籠が出現した。そこに踏みとどまるのかと思いきや、間髪を入れずに鳥籠は地面に向かって落ちていく。
「わっちょっ」
運良くキャッチした私は、抗議の声を上げた。
「落とすなんて最低ですよ!」
「そこまでの面倒は見切れない。きちんと見つけてこっちに引き寄せたじゃないか」
「普通に考えたらそんなことしませんよね!?」
「じゃあ私は普通じゃないんだろう」
(……屁理屈!!)
ウィオレス様は私の抗議を聞き流し、ドアを蹴破った。
木でできたドアは蝶番が壊れ、バキッと木目に沿って割れる。
途端、冷たい冷気が頬を掠めていく。どうやら外に出たらしい。来た時と同じようにしとしとと雨が降り注いでいるが、ウィオレス様が頭上に魔法で壁を作っているらしく、濡れることはなかった。
「はい、任務しゅーりょー」
その言葉と共に地面に下ろされる。鳥籠を両手で抱えながら私は石畳に足をつけた。
するとなんだか体から力が抜けてしまって。濡れているにもかかわらず冷たい石畳にへたり込んでしまう。
「怪我はないよね」
街灯がない地域なので夜となると真っ暗で、ウィオレス様は手の上に出した光球を私の方へ寄せる。
「私は平気です。でも、この子達が……もう少し明かりをこちらに持ってきてもらっても?」
暗くて様子がわかりにくかった。
「リーリー、もう出てもいい?」
ひょっこりポケットから顔を出したのはアリアだった。続いてルーチェもおそるおそる顔を出す。
「わ、わたしも仲間の様子を見てもいいですか……?」
「ええいいわよ。ポケットの中は窮屈だったでしょう」
言えば、二人は飛び出してきてルーチェは錠前を魔法で破壊し、こじ開ける。
「ルルっ! ルル! 起きて!」
私は彼女ごと中に閉じ込められていた妖精たちを膝の上に乗せる。
みんなぼろぼろで見ていて目を逸らしたくなるほどだった。ルーチェはその中の一人の体を揺すっている。
私はルーチェの時と同じように急いで彼女たちに回復の魔法をかける。ぽわっと淡い光が包み、収束する頃には傷が癒える。
すると微動だにしなかった彼女たちの瞼が微かに動く。ルーチェと私はそれを見て安堵の息を吐いた。
「リーティアさまありがとうございます」
「礼を言うのは早いわ。みんなが何事もなく目を覚ましたかまだ確認できてないもの」
潤む瞳を向けながら深く頭を下げてくるので顔を上げるようルーチェを制止する。
「でも、傷を治してくれましたし、私ではみんなを助け出せなかったですからこの時点でリーティアさまは恩人ですよ」
ルーチェは羽を広げて顔の前に飛んでくる。
「だから、受け取ってくださいね」
そうして頬に口づけされた。触れられたところから若干の魔力が流れ込んでくる。
「リーティアさま、ルーチェって一度呼んでください」
「──ルーチェ…………えっ」
よく分からないまま、名を呼べば右手首──アリアとの契約の印の下に似たような文字が刻み込まれていくではないか。
(あっこれはややこしくなるやつ)
悟った私はルーチェに再度目を合わせる。
「いま……何をしたのか教えてくれる?」
羽をパタパタさせながら元気よく答える。
「はい、祝福と契約ですね! 後者はアリアとリーティアさまが結んでいるものと同じです!」
「へぇ二人目を使役するのか。しかも妖精から望む形で。凄いな」
一人が二人に増えてもあまり変わらないしまあいいか。それに伴う問題は……どうにかなるだろう。というかどうにかなって欲しい。なってくれないととても困る。
──なんて無理やり結論付けて考えることを放棄した私は、ルーチェに騙し討ちされたようなものではあるが、承諾するより先に属性を聞かなかったことを数秒後、死ぬほど後悔することになる。
「そういえばルーチェは何属性なの? 土とかかしら」
茶色い髪の毛だったのでそう思ったのだが、彼女は胸を張って自信げにこう言い切った。
「いいえ、私は光属性です! だから色んな面でリーティアさまのお役に立てると思います!!」
「…………」
隣から「おっ、ラッキーじゃん。契約できる機会は滅多にない」なんてそんな呑気な声が聞こえたけれど、もうこれ以上私に何も背負わせないで欲しいと現実から目を背けたくて意識を手放した。
「一帯は封鎖した! 一人残らず捕縛しろっ」
色とりどりの魔法陣が展開され、運悪く魔術師様の近くにいた者たちからお縄についている。が、大半はパニック状態で阿鼻叫喚となり、魔力を持つ──恐らく貴族の者は攻撃魔法で応戦しようとしていた。
そんな中、ウィオレス様は身体強化の魔法をかけているのか、常人を逸した脚力でオールポートから距離をとるため数十歩後ろに跳躍した。
「あのっあ、ありがとうご────……」
危機一髪のところを助けてもらい、お礼を言おうとするが彼は険しい顔のまま驚く行動に出た。
「舌を噛みたくなければ話すな」
「きゃあ!」
ぐるんと天と地が逆転する。どうやら担がれたらしく、彼の腕が腹部に食い込む。断りもなく突然世界が反転して寿命が縮んでしまいそうだ。
担がれて終わりかと思いきや、彼は間髪を入れず踵を返して走り始める。
「走れますっ! 走れますよ!?」
「こっちの方が早い」
乙女心としてこの格好で担がれるのは嫌すぎるのだが。私の訴えをがん無視してウィオレス様は階段を駆け上がる。私は振り落とされないよう必死に彼にしがみつく。
「転移しないんですか?」
「しないんじゃなくて出来ないんだ」
「……どうし、」
ウィオレス様が大きく動き、声が途切れてしまう。
「取り逃してるじゃないか」
彼は舌打ちをして手を後ろにかざす。見れば、捕縛から逃れたらしい参加者達が階段を登ってきていた。
「何で担当じゃない私がこんなことに駆り出されてるんだ……絶対休暇と特別手当もぎ取ってやる」
ぶつぶつと文句を言いつつも、ウィオレス様はきちんとこなしているので真面目な人なのだろう。
彼が指を鳴らすと半透明な壁が私達と彼らとの間に出現し、勢いを止められずに追いかけてきていた者たちは激突した。
情けない声が後ろから聞こえてくる。そうして階段の終わりが見えてきたところで私は気づいた。
「あっ! ま、待ってください……!」
「嫌だ待たない」
「そんなこと言わずにお願いします」
しかしウィオレス様の足は止まらない。仕方ないので私は彼の脇をつねって無理やり止めようとしたのだが、睨まれてしまった。
「止まって何がしたいのさ。私の役割は君を無事救出するだけなんだけど」
「では追加でお願いします。私がいた場所に囚われた妖精たちがいたのですが、鳥籠から手を離してしまって……ウィオレス様が助け出してくれませんか?」
「そんなの他の者に任せればいいじゃないか」
「ダメです。とても弱っていましたし、保護魔法のかかっていない鳥籠は、魔術師様たちの魔法が当たってしまうかもしれません。一刻も早く助け出さないと」
(魔術師様たちは逃げないオークションの品物よりも逃亡を図る参加者たちの捕獲に走ると思うのよね)
可能性は低いが、魔術師様の包囲網をかいくぐって逃げ出せた者がいた場合、その人が妖精たちを連れて行ってしまうこともあるだろう。
彼女たちを闇市場で売れば金貨が袋いっぱいに手に入るだろうし、逃亡資金となりえる。
その筆頭としては魔力の色が見えると言っていたオールポートだ。彼は支配人らしいから、スタッフや参加者よりも頭の回転が早そうであるし、私に明かしたもの以外にまだ奥の手を隠しているかもしれない。
(ああ、死ぬ気で取っ手を掴んでおけばよかった)
触れた際、手に走った痛みで離してしまったのを今更ながら後悔する。
問題は混沌としているあの場からウィオレス様が鳥籠を探し出せるのということだが、私は良い方法を思いついていた。
「ウィオレス様は追跡魔法を使えますか? 妖精たちの入った鳥籠にかけられた魔法を私が解いたので……たぶん、魔力の残滓が残ってるはずです。そこから辿れますよね?」
「辿れるけど…………自分で抱えてよね」
階段を駆け上がりながらパチンと指を弾く。しばらくして前方の空中に鳥籠が出現した。そこに踏みとどまるのかと思いきや、間髪を入れずに鳥籠は地面に向かって落ちていく。
「わっちょっ」
運良くキャッチした私は、抗議の声を上げた。
「落とすなんて最低ですよ!」
「そこまでの面倒は見切れない。きちんと見つけてこっちに引き寄せたじゃないか」
「普通に考えたらそんなことしませんよね!?」
「じゃあ私は普通じゃないんだろう」
(……屁理屈!!)
ウィオレス様は私の抗議を聞き流し、ドアを蹴破った。
木でできたドアは蝶番が壊れ、バキッと木目に沿って割れる。
途端、冷たい冷気が頬を掠めていく。どうやら外に出たらしい。来た時と同じようにしとしとと雨が降り注いでいるが、ウィオレス様が頭上に魔法で壁を作っているらしく、濡れることはなかった。
「はい、任務しゅーりょー」
その言葉と共に地面に下ろされる。鳥籠を両手で抱えながら私は石畳に足をつけた。
するとなんだか体から力が抜けてしまって。濡れているにもかかわらず冷たい石畳にへたり込んでしまう。
「怪我はないよね」
街灯がない地域なので夜となると真っ暗で、ウィオレス様は手の上に出した光球を私の方へ寄せる。
「私は平気です。でも、この子達が……もう少し明かりをこちらに持ってきてもらっても?」
暗くて様子がわかりにくかった。
「リーリー、もう出てもいい?」
ひょっこりポケットから顔を出したのはアリアだった。続いてルーチェもおそるおそる顔を出す。
「わ、わたしも仲間の様子を見てもいいですか……?」
「ええいいわよ。ポケットの中は窮屈だったでしょう」
言えば、二人は飛び出してきてルーチェは錠前を魔法で破壊し、こじ開ける。
「ルルっ! ルル! 起きて!」
私は彼女ごと中に閉じ込められていた妖精たちを膝の上に乗せる。
みんなぼろぼろで見ていて目を逸らしたくなるほどだった。ルーチェはその中の一人の体を揺すっている。
私はルーチェの時と同じように急いで彼女たちに回復の魔法をかける。ぽわっと淡い光が包み、収束する頃には傷が癒える。
すると微動だにしなかった彼女たちの瞼が微かに動く。ルーチェと私はそれを見て安堵の息を吐いた。
「リーティアさまありがとうございます」
「礼を言うのは早いわ。みんなが何事もなく目を覚ましたかまだ確認できてないもの」
潤む瞳を向けながら深く頭を下げてくるので顔を上げるようルーチェを制止する。
「でも、傷を治してくれましたし、私ではみんなを助け出せなかったですからこの時点でリーティアさまは恩人ですよ」
ルーチェは羽を広げて顔の前に飛んでくる。
「だから、受け取ってくださいね」
そうして頬に口づけされた。触れられたところから若干の魔力が流れ込んでくる。
「リーティアさま、ルーチェって一度呼んでください」
「──ルーチェ…………えっ」
よく分からないまま、名を呼べば右手首──アリアとの契約の印の下に似たような文字が刻み込まれていくではないか。
(あっこれはややこしくなるやつ)
悟った私はルーチェに再度目を合わせる。
「いま……何をしたのか教えてくれる?」
羽をパタパタさせながら元気よく答える。
「はい、祝福と契約ですね! 後者はアリアとリーティアさまが結んでいるものと同じです!」
「へぇ二人目を使役するのか。しかも妖精から望む形で。凄いな」
一人が二人に増えてもあまり変わらないしまあいいか。それに伴う問題は……どうにかなるだろう。というかどうにかなって欲しい。なってくれないととても困る。
──なんて無理やり結論付けて考えることを放棄した私は、ルーチェに騙し討ちされたようなものではあるが、承諾するより先に属性を聞かなかったことを数秒後、死ぬほど後悔することになる。
「そういえばルーチェは何属性なの? 土とかかしら」
茶色い髪の毛だったのでそう思ったのだが、彼女は胸を張って自信げにこう言い切った。
「いいえ、私は光属性です! だから色んな面でリーティアさまのお役に立てると思います!!」
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