82 / 99
彼女の今世
episode71
「お、目が覚めた?」
パチリと目を開けた私をウィオレス様は上から覗き込んでいた。驚いてしまい、グイッと顔を遠ざけると押し返された彼は不満そうな声を出す。
「何するのさ」
「顔が近すぎて……ってこの状況は?」
どうやら私は寝かされているようだった。後頭部に柔らかいものがあてがわれていて、ウィオレス様が退いた視界には見覚えのない天蓋がある。
体を起こそうと手を付くと、ふかふかな寝台が少し軋んだ。
「覚えてないのか? 君はそこの妖精が光属性だと言った途端、気を失ったんだ」
ウィオレス様が指したのは私の隣で。見るとそこにはしょんぼりと落ち込むルーチェが寝台の上に座っていた。
「気を失った人間をそのまま自宅に帰すなんてできないだろう。色々後処理もあるし、あの路地裏で起きるまで待つのは厳しいから魔法省の方に移動した」
軽い説明を終えた彼は湯気の立つ温かなココアの入ったコップを差し出してくる。
「体が冷えてるだろうから」
「ありがとうございます」
渡されたココアを一口含むと甘くて優しい味がした。体がポカポカしてくると沈黙していたルーチェが口を開く。
「──リーティアさまごめんなさい。私が了解も得ずに契約してしまったから……お嫌なのですよね?」
「違うわ。貴女との契約が嫌なわけではないの。ただ、私は……」
(色々としがらみが多いから、これ以上抱えたくなかっただけで)
とは言えず、誤魔化すようにルーチェを撫でる。
二人以上の精霊を使役することは少し珍しくはあるが、ないことはない。それが妖精となるとぐっと人数が減るが、「妖精に好かれやすい」という印象で終わるだろう。
しかし、ルーチェが光属性だと話は変わる。
(キャサリン様の時でもとても騒がれていたのに。私が契約したとなると)
ようやく遠ざけることに成功したアルバート殿下の婚約者ルートにぐっと近づいてしまう。
ただこれは彼女が悪い訳では無く、自分が抱えるものが彼女との契約と相性が悪いだけだ。
何らルーチェが気に病むことではない。
「契約を破棄することもできます。リーティアさまが望むなら、わたしからしますよ」
「そんなことさせないわ。契約の破棄は破棄した側にペナルティが付くのを知らないとでも?」
アリアとの契約を結ぶ際、先生から注意事項として教わった。気に入らないからと破棄をすれば種族関係なく罰が課せられると。
「──魔力が制限されるのでしょう? 本来の半分に」
「……そうです。ですが、長くても十年で解けますし、妖精にとっては短い時間ですから気にしなくていいのですよ」
そんな風に説得されても納得なんてできるはずがない。百年単位で生きる彼女達の感覚はそうであっても、人間の感覚ではとてつもなく長い時間だ。
(それに、もう決めたもの)
「ウィオレス様」
「なに」
「他の方には黙っていていただけますよね」
「と言うと?」
言いたいことは分かっているだろうにウィオレス様は私に問い直す。
「ルーチェが光属性だと誰にも話さないでいただけますか」
「隠すの? 公表すれば殿下の婚約者の地位──つまり、未来の帝国の頂点に立てるのに?」
「嫌味ですか」
彼は私が殿下を避けているのを知っているのでそうとしか思えなく、刺々しくなってしまった。
そんな私の反応に何故か満足したらしい。笑った彼は了承した。
「面白そうだからいいよ。黙っていてあげる」
「じゃあルーチェ、貴方は周りを土属性だと欺けるかしら」
「できると思います。この髪色なのも、人間に見つかった際、見た目で光属性だと判断されないようにするためで、本来の髪色は金髪なので」
ルーチェが指を一振りすると瞬く間に茶色からつややかな金に変わる。それはキャサリン様が契約しているルクスと同じ髪色だった。
「なら、お願いね」
「はい!」
羽をパタパタさせながら元気よく返事をしたルーチェは髪色を茶色に戻し、ちょこんと私の膝に乗った。
(とりあえずこの一件は終わり)
まだ不安は残るものの悩んでいても仕方がない。問題にぶつかったら対処療法的に対応していくしかないだろう。
そうして再びウィオレス様に目を向ける。
「あの、保護された妖精達の様子を見に行きたいのですが。彼女たちはどこにいますか」
「ここ」
「へ? …………わぁっ!」
寝台横で立っていたウィオレス様が指したのは床だ。私が視線を下ろすと、寝台によって死角になっていた場所からパッと何人もの妖精が飛び出してきた。
「ルーチェから聞きました。貴方様が私達の恩人様だと」
「恩人だなんて大袈裟よ」
ルーチェにも言ったが、困っている者に手を貸すのは当たり前のことだ。ましてや命の危険が差し迫っている彼女たちを見て見ぬふりなど。
「みんな、怪我は治った? それか、他の魔術師様に治療してもらったかしら」
「はい、まだ怠さは残っていますが叩かれた箇所などはリーティア様のおかげで治りました」
アザや傷だらけだった彼女たちの腕は元通りになっていた。それを見て、私は安堵する。
「よかった。これで貴方達は森に帰れるかしら」
「そうですね。ただ、居場所が割れてしまったのでまた違う場所に移動します。あの森は居心地がよかったのですが仕方ありません」
寂しそうに笑った妖精は私に近づいてきて頬に軽くキスをする。
「私達、リーティア様に一言お礼を述べたくて目を覚まされるまで待っていたのです。魔術師様達には何があったのか既に伝えましたので、これでさよならです」
一箇所に集まった妖精達は私にぺこりと頭を下げた。
「本当に助けていただいてありがとうございました。何かありましたらルーチェ経由でお知らせください。リーティア様なら私達は力を貸します」
言って、彼女達は陣を展開して転移した。
その後、ウィオレス様が手配した馬車で帰宅した私はセシルに迎えられるが、彼女は私に抱きつこうとした寸前で踏みとどまり、訝しげに私の肩ら辺を見つめている。
「…………お姉様の近くにある気配が増えてる。なんで……?」
(セシルの察知能力が飛び抜けているわ)
セシルの視線の先には見つめられてきょとんとしているルーチェが乗っていたのだ。ちなみにアリアは私のポケットの中で呑気に寝ている。
ぐいーっと首を傾げるセシルに、私は告げた。
「あのね、契約精霊が増えたの」
「えっっ」
セシルは驚愕に目を見開いた。
「そこにいるの!?」
「いるのよ」
「種族は何?」
「妖精」
「えっなんで! なんで契約してるの!」
セシルの大きな声にルーチェが肩から飛んで私の背中に隠れた。
「セシル、落ち着いて。ルーチェが怯えているわ」
「ルーチェ? ルーチェが名前なの?」
「そうよ。ここにいるからセシルも挨拶をしてあげて」
私はルーチェを手に乗せてセシルの前へ差し出した。当たり前だが、まだ精霊と契約を結んだことの無いセシルにはルーチェを視認できないので、気配だけで目を合わせようとしていた。
「私、セシル・アリリエット。リーティアお姉様の妹なの」
「ルーチェです。不束者ですがよろしくお願いします」
ルーチェも挨拶するが、声は彼女に届かないので代わりに魔法を使ったようだ。ポンッポンッとセシルの周りに鮮やかな赤い花が舞い落ちる。
「ほ、本当にいるのね」
花を一輪手に取り、セシルは少しくちびるを尖らせながら言う。
「増えるのは嫌だけど、二人も妖精と契約できるのはお姉様がとっても凄いってことでしょ? 私、お姉様の凄さが目に見える形で分かるのとっても嬉しい。お父様やお母様も喜んで褒めるのではないかしら!」
「…………そうだと私も嬉しいわ」
「そうに決まっているわ! それに、お姉様は大祝祭のお手伝いもするのでしょう?」
きらきらと瞳を輝かせ、セシルは私の腕に絡んできた。
「祝祭用の衣装に身を包んだお姉様はきっとお美しいの! あー早く春になってほしいなぁ」
冬が開ければ春になる。大祝祭までも三ヶ月を切っており、関係各所はどんどん忙しくなっている。
とはいえ、私は踊り子になった他の令嬢方とは違い、エルニカ様のお手伝い役なので今のところ何かしている訳では無い。神殿に呼ばれても、ほかの精霊達と戯れているか、エルニカ様とのんびりお茶をするだけだ。
だから私自身は特に忙しい日々を送っているわけではなかった。
(大祝祭、何事もなく終わればいいな)
そう心の中で思うのだが、やっぱり物事は上手くいかないのをこの時の私はまだ知らなかった。
パチリと目を開けた私をウィオレス様は上から覗き込んでいた。驚いてしまい、グイッと顔を遠ざけると押し返された彼は不満そうな声を出す。
「何するのさ」
「顔が近すぎて……ってこの状況は?」
どうやら私は寝かされているようだった。後頭部に柔らかいものがあてがわれていて、ウィオレス様が退いた視界には見覚えのない天蓋がある。
体を起こそうと手を付くと、ふかふかな寝台が少し軋んだ。
「覚えてないのか? 君はそこの妖精が光属性だと言った途端、気を失ったんだ」
ウィオレス様が指したのは私の隣で。見るとそこにはしょんぼりと落ち込むルーチェが寝台の上に座っていた。
「気を失った人間をそのまま自宅に帰すなんてできないだろう。色々後処理もあるし、あの路地裏で起きるまで待つのは厳しいから魔法省の方に移動した」
軽い説明を終えた彼は湯気の立つ温かなココアの入ったコップを差し出してくる。
「体が冷えてるだろうから」
「ありがとうございます」
渡されたココアを一口含むと甘くて優しい味がした。体がポカポカしてくると沈黙していたルーチェが口を開く。
「──リーティアさまごめんなさい。私が了解も得ずに契約してしまったから……お嫌なのですよね?」
「違うわ。貴女との契約が嫌なわけではないの。ただ、私は……」
(色々としがらみが多いから、これ以上抱えたくなかっただけで)
とは言えず、誤魔化すようにルーチェを撫でる。
二人以上の精霊を使役することは少し珍しくはあるが、ないことはない。それが妖精となるとぐっと人数が減るが、「妖精に好かれやすい」という印象で終わるだろう。
しかし、ルーチェが光属性だと話は変わる。
(キャサリン様の時でもとても騒がれていたのに。私が契約したとなると)
ようやく遠ざけることに成功したアルバート殿下の婚約者ルートにぐっと近づいてしまう。
ただこれは彼女が悪い訳では無く、自分が抱えるものが彼女との契約と相性が悪いだけだ。
何らルーチェが気に病むことではない。
「契約を破棄することもできます。リーティアさまが望むなら、わたしからしますよ」
「そんなことさせないわ。契約の破棄は破棄した側にペナルティが付くのを知らないとでも?」
アリアとの契約を結ぶ際、先生から注意事項として教わった。気に入らないからと破棄をすれば種族関係なく罰が課せられると。
「──魔力が制限されるのでしょう? 本来の半分に」
「……そうです。ですが、長くても十年で解けますし、妖精にとっては短い時間ですから気にしなくていいのですよ」
そんな風に説得されても納得なんてできるはずがない。百年単位で生きる彼女達の感覚はそうであっても、人間の感覚ではとてつもなく長い時間だ。
(それに、もう決めたもの)
「ウィオレス様」
「なに」
「他の方には黙っていていただけますよね」
「と言うと?」
言いたいことは分かっているだろうにウィオレス様は私に問い直す。
「ルーチェが光属性だと誰にも話さないでいただけますか」
「隠すの? 公表すれば殿下の婚約者の地位──つまり、未来の帝国の頂点に立てるのに?」
「嫌味ですか」
彼は私が殿下を避けているのを知っているのでそうとしか思えなく、刺々しくなってしまった。
そんな私の反応に何故か満足したらしい。笑った彼は了承した。
「面白そうだからいいよ。黙っていてあげる」
「じゃあルーチェ、貴方は周りを土属性だと欺けるかしら」
「できると思います。この髪色なのも、人間に見つかった際、見た目で光属性だと判断されないようにするためで、本来の髪色は金髪なので」
ルーチェが指を一振りすると瞬く間に茶色からつややかな金に変わる。それはキャサリン様が契約しているルクスと同じ髪色だった。
「なら、お願いね」
「はい!」
羽をパタパタさせながら元気よく返事をしたルーチェは髪色を茶色に戻し、ちょこんと私の膝に乗った。
(とりあえずこの一件は終わり)
まだ不安は残るものの悩んでいても仕方がない。問題にぶつかったら対処療法的に対応していくしかないだろう。
そうして再びウィオレス様に目を向ける。
「あの、保護された妖精達の様子を見に行きたいのですが。彼女たちはどこにいますか」
「ここ」
「へ? …………わぁっ!」
寝台横で立っていたウィオレス様が指したのは床だ。私が視線を下ろすと、寝台によって死角になっていた場所からパッと何人もの妖精が飛び出してきた。
「ルーチェから聞きました。貴方様が私達の恩人様だと」
「恩人だなんて大袈裟よ」
ルーチェにも言ったが、困っている者に手を貸すのは当たり前のことだ。ましてや命の危険が差し迫っている彼女たちを見て見ぬふりなど。
「みんな、怪我は治った? それか、他の魔術師様に治療してもらったかしら」
「はい、まだ怠さは残っていますが叩かれた箇所などはリーティア様のおかげで治りました」
アザや傷だらけだった彼女たちの腕は元通りになっていた。それを見て、私は安堵する。
「よかった。これで貴方達は森に帰れるかしら」
「そうですね。ただ、居場所が割れてしまったのでまた違う場所に移動します。あの森は居心地がよかったのですが仕方ありません」
寂しそうに笑った妖精は私に近づいてきて頬に軽くキスをする。
「私達、リーティア様に一言お礼を述べたくて目を覚まされるまで待っていたのです。魔術師様達には何があったのか既に伝えましたので、これでさよならです」
一箇所に集まった妖精達は私にぺこりと頭を下げた。
「本当に助けていただいてありがとうございました。何かありましたらルーチェ経由でお知らせください。リーティア様なら私達は力を貸します」
言って、彼女達は陣を展開して転移した。
その後、ウィオレス様が手配した馬車で帰宅した私はセシルに迎えられるが、彼女は私に抱きつこうとした寸前で踏みとどまり、訝しげに私の肩ら辺を見つめている。
「…………お姉様の近くにある気配が増えてる。なんで……?」
(セシルの察知能力が飛び抜けているわ)
セシルの視線の先には見つめられてきょとんとしているルーチェが乗っていたのだ。ちなみにアリアは私のポケットの中で呑気に寝ている。
ぐいーっと首を傾げるセシルに、私は告げた。
「あのね、契約精霊が増えたの」
「えっっ」
セシルは驚愕に目を見開いた。
「そこにいるの!?」
「いるのよ」
「種族は何?」
「妖精」
「えっなんで! なんで契約してるの!」
セシルの大きな声にルーチェが肩から飛んで私の背中に隠れた。
「セシル、落ち着いて。ルーチェが怯えているわ」
「ルーチェ? ルーチェが名前なの?」
「そうよ。ここにいるからセシルも挨拶をしてあげて」
私はルーチェを手に乗せてセシルの前へ差し出した。当たり前だが、まだ精霊と契約を結んだことの無いセシルにはルーチェを視認できないので、気配だけで目を合わせようとしていた。
「私、セシル・アリリエット。リーティアお姉様の妹なの」
「ルーチェです。不束者ですがよろしくお願いします」
ルーチェも挨拶するが、声は彼女に届かないので代わりに魔法を使ったようだ。ポンッポンッとセシルの周りに鮮やかな赤い花が舞い落ちる。
「ほ、本当にいるのね」
花を一輪手に取り、セシルは少しくちびるを尖らせながら言う。
「増えるのは嫌だけど、二人も妖精と契約できるのはお姉様がとっても凄いってことでしょ? 私、お姉様の凄さが目に見える形で分かるのとっても嬉しい。お父様やお母様も喜んで褒めるのではないかしら!」
「…………そうだと私も嬉しいわ」
「そうに決まっているわ! それに、お姉様は大祝祭のお手伝いもするのでしょう?」
きらきらと瞳を輝かせ、セシルは私の腕に絡んできた。
「祝祭用の衣装に身を包んだお姉様はきっとお美しいの! あー早く春になってほしいなぁ」
冬が開ければ春になる。大祝祭までも三ヶ月を切っており、関係各所はどんどん忙しくなっている。
とはいえ、私は踊り子になった他の令嬢方とは違い、エルニカ様のお手伝い役なので今のところ何かしている訳では無い。神殿に呼ばれても、ほかの精霊達と戯れているか、エルニカ様とのんびりお茶をするだけだ。
だから私自身は特に忙しい日々を送っているわけではなかった。
(大祝祭、何事もなく終わればいいな)
そう心の中で思うのだが、やっぱり物事は上手くいかないのをこの時の私はまだ知らなかった。
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……
ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」
この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。
選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。
そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。
クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。
しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。
※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。