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彼女の今世
episode73
「想定外だわ」
ぽつりと呟いたエルニカ様は杖をひと振りする。シャラランと軽やかな音色が立つと周りの空気がよりいっそう澄んだ気がした。
「とりあえず抑えて……そもそもどうにかできるものなのかしら」
杖をくるくると回しながらエルニカ様の独り言は続く。
「ノルン様には絶対に小言を言わなければ。全てあの方が悪い。捕まえてとっちめてやるわ」
最後にダンっといささか乱暴に杖で地面を叩いたと同時、きらきらと祝福の光が空から神殿全体に降り注いだ。
わああと貴族達のいる場所から歓声が上がる。エルニカ様は先程までの険しい顔を隠し、慈愛に満ち溢れ、お淑やかだと評される猊下に戻る。
そうして事前聞いていた手順通り、エルニカ様が端に控えていた神官を伴って貴族達の元へ移動する後ろに私も着いていくはずだったのだが。
魔力不足で足元がおぼつかない。気づけば一人だけみんなから離れたところを歩いていた。
エルニカ様の後ろを着いていく友人達は、遥か後方にいる私に気づいていなかった。
「もう……む、り」
限界だった私は地面に手をついてしゃがみこんでしまった。
頭がくらくらして視界が歪む。平衡感覚を失い、立ち上がることも出来ず、下手したらここで気を失ってしまいそうだった。
その時、ぽちゃんと背後から水音がした。立て続けにぱしゃぱしゃと水音も大きくなり、湖面の波紋が広がっていく。
その音は私のすぐ後ろで止まり、視界の横からグイッと一人の青年が顔を覗かせた。
「大丈夫か」
「ヴィオ、レス様? どうしてここに」
「そんなのどうでもいいだろう」
ムスッとしている彼は服が濡れるのも厭わず私の前にしゃがみこむ。
「どうでもよくありません。いくら魔術師様といえど、ここは関係者以外立ち入り禁止のはずで……」
目眩がし、額を押える。
「体調が悪いんだろう。ほら、顔を見せてみろ」
「あっちょっと」
彼は私の忠告を無視してヴェールをめくりあげると大きく目を見開いた。しばし呆然として、けれども動揺を隠そうとする。
そうして言いにくそうに告げた。
「公爵令嬢、君の……瞳の色が」
(色?)
つられて水面に視線を移す。
「えっ」
水面に映る私の瞳は蜂蜜色の黄金ではなく、うっすら紫水を帯びていて。はらりと垂れてきた白銀のはずの髪も淡く金が混じっている。
思わず意味もないのに瞳を覆ってしまう。
(これではまるで)
──聖女のようではないか
ウィオレス様も同じことを思ったのだろう。だから珍しく動揺しているのだ。
「公爵令嬢は聖女の素質を持っていたのか?」
「──違います」
きっぱりと否定する。
「聖女では、ないです」
なぜ、瞳や髪が聖女の持つ色を帯びているのか分からないけれど、それだけは違うと言える。
たとえ傍から見ればそうであっても。
(その座はレリーナのもので私のものでは無い。ノルン様やエルニカ様達も愛し子と聖女を分けて話していたし、別のはず)
「だがこの色は」
納得のできないウィオレス様は口ごもりながらも私の髪に手を伸ばしてくる。さらりと彼の手のひらに乗った私の髪は、未だ金が混じっていた。
「完全な金髪ではありません。瞳だって、水滴を垂らしたくらいの僅かな差です。だから違います」
捲られたヴェールを元に戻し、彼の視線を遮る。
「ただ、まあ、その……似たような立ち位置にはいるかもしれません」
完璧な誤魔化しはここまでくると不可能だ。所々濁しながら真実を混ぜて話す。
「君の隠していることがそれに当たるのか」
「…………そういうことです、ね」
目の前で立ち上がったウィオレス様を見上げる。
「以前、無理やり暴きはしないと仰られましたよね。このことも言わないでください。特に皇家の方々には。理由はウィオレス様も知っているでしょう」
「まあ、知られれば問答無用で婚約者の座に就かされるね。避けてきた意味が無くなる」
こくんと頷く。彼ははぁとため息をついた。
「公爵令嬢は秘密が多いね。隙も多いし、私が口約束を破るとは思わないの」
「ウィオレス様はからかったり、意地悪をしてくることはありますが……私が本当に嫌だと感じることは絶対にしてこないでしょう? 信用に足ると思っています」
前世で周りにいた者と比べるとそれだけでも彼は信じられるというか、お願いを守ってくれると思えるのだ。
それに、この時点で高位の地位にいるのだから権力をふりかざす者の脅しに屈する形で、私のことを話すこともないだろう。
「本っ当に甘いな。話したところで何か莫大な利益が生まれる訳でもないし、労力の無駄だからするつもりはないけどさ」
呆れたような目をしたウィオレス様はパンパンと手を叩くともう一度屈んで──
「体調が悪いなら水に浸かってるのも体に悪い。望みの場所まで運ぶよ」
ぐいっと私を抱き上げる。
「重いですよ!」
「重くない重くない。持てないくらいなら魔法で軽減させるし、オークションの時だって公爵令嬢を抱き上げて走っていただろう?」
「あの時は緊急事態だったからで!」
ウィオレス様は眉を顰める。
「状況が違うとはいえ、体調が悪いのに歩けるのか? 無理だろう? さっきだってふらついて手を付いたじゃないか」
「それはその通りなのですけれど」
だんだん反論の声が弱々しくなってしまう。私もひとりで歩ける状態では無いことは分かっているけれど、ここは人の目もある。あの時と今日では事情が違うのだ。
「じゃあ歩いてみな」
ゆっくりと下ろされたが、彼の支えを失うと直ぐに頽れそうになった。
「ほーら見ろ。無理じゃないか」
ウィオレス様は私を抱え直す。仕方がないのでそのまま体を預けた。
「君の家の馬車に運べばいいか?」
「えっと、馬車ではなく、エルニカ猊下の元に連れて行っていただけますか?」
祝祭の後、話がしたいと言われていたのだ。気分が悪いのは治っていないけれど、約束を反故にすることも出来ない。それに、エルニカ様は治癒魔法が使えるので事情を話せば魔法をかけてくれるかもしれなかった。
「猊下の場所なんて知らないよ。公爵令嬢は知っているのか」
「いいえ、ですが執務室で待っているようにと」
「執務室って何処だ」
「ここの道を戻って一つ目の分かれ道を右に行き、突き当たったら左に行くとあります」
ウィオレス様が私の言った通りに右に曲がったところで、一番会いたくない人に会ってしまう。
「──誰を運んでいるんだ?」
その声に私は息を呑んで呼吸が止まりそうだった。ウィオレス様も「運が悪い」とボソッとつぶやく。
「アルバート殿下こんにちは。この方は気分が優れないようで、廊下で座り込んでいるのを見かけまして。医務室に連れていこうと」
愛想笑いを顔に乗せた彼は軽く会釈している。
「私が聞きたいのは違う。その腕の中にいるご令嬢は踊り手に選ばれた者だろう? ただ、そのような珍しい髪色の者はいなかったはずだが……」
訝しげな声に心臓が波打つ。
大きな柱の影が落ちること部分的に暗くなった箇所にいたので、少し離れているアルバート殿下には誰なのか断定できなかったらしい。
(お願いそのままどこかに行って!)
きゅっとウィオレス様の胸元を掴んで身を寄せる。ヴェールを被って彼の胸元に顔を埋めているので、衣装で対象を絞れても、その中からピンポイントで私だとは分からないはずだ。
そんな中、彼は大胆な嘘をつく。
「殿下が誤解されるのも仕方がありませんが、この方は踊り手のご令嬢ではありませんよ。ただ何かあった場合、代わりに踊るために待機していた神官です」
「神官?」
「はい。ではこれで」
アルバート殿下の思考する時間を断ち切ったウィオレス様は歩みを進める。
危機から抜けてほっと一安心した私は、もう立ち去っただろうとヴェール越しにアルバート殿下のいた方向に目を向けたのだが。
「っ!」
殿下はそこに佇んでいて。凪いだ天の瞳がこちらをずっと見ていたのだ。
ぽつりと呟いたエルニカ様は杖をひと振りする。シャラランと軽やかな音色が立つと周りの空気がよりいっそう澄んだ気がした。
「とりあえず抑えて……そもそもどうにかできるものなのかしら」
杖をくるくると回しながらエルニカ様の独り言は続く。
「ノルン様には絶対に小言を言わなければ。全てあの方が悪い。捕まえてとっちめてやるわ」
最後にダンっといささか乱暴に杖で地面を叩いたと同時、きらきらと祝福の光が空から神殿全体に降り注いだ。
わああと貴族達のいる場所から歓声が上がる。エルニカ様は先程までの険しい顔を隠し、慈愛に満ち溢れ、お淑やかだと評される猊下に戻る。
そうして事前聞いていた手順通り、エルニカ様が端に控えていた神官を伴って貴族達の元へ移動する後ろに私も着いていくはずだったのだが。
魔力不足で足元がおぼつかない。気づけば一人だけみんなから離れたところを歩いていた。
エルニカ様の後ろを着いていく友人達は、遥か後方にいる私に気づいていなかった。
「もう……む、り」
限界だった私は地面に手をついてしゃがみこんでしまった。
頭がくらくらして視界が歪む。平衡感覚を失い、立ち上がることも出来ず、下手したらここで気を失ってしまいそうだった。
その時、ぽちゃんと背後から水音がした。立て続けにぱしゃぱしゃと水音も大きくなり、湖面の波紋が広がっていく。
その音は私のすぐ後ろで止まり、視界の横からグイッと一人の青年が顔を覗かせた。
「大丈夫か」
「ヴィオ、レス様? どうしてここに」
「そんなのどうでもいいだろう」
ムスッとしている彼は服が濡れるのも厭わず私の前にしゃがみこむ。
「どうでもよくありません。いくら魔術師様といえど、ここは関係者以外立ち入り禁止のはずで……」
目眩がし、額を押える。
「体調が悪いんだろう。ほら、顔を見せてみろ」
「あっちょっと」
彼は私の忠告を無視してヴェールをめくりあげると大きく目を見開いた。しばし呆然として、けれども動揺を隠そうとする。
そうして言いにくそうに告げた。
「公爵令嬢、君の……瞳の色が」
(色?)
つられて水面に視線を移す。
「えっ」
水面に映る私の瞳は蜂蜜色の黄金ではなく、うっすら紫水を帯びていて。はらりと垂れてきた白銀のはずの髪も淡く金が混じっている。
思わず意味もないのに瞳を覆ってしまう。
(これではまるで)
──聖女のようではないか
ウィオレス様も同じことを思ったのだろう。だから珍しく動揺しているのだ。
「公爵令嬢は聖女の素質を持っていたのか?」
「──違います」
きっぱりと否定する。
「聖女では、ないです」
なぜ、瞳や髪が聖女の持つ色を帯びているのか分からないけれど、それだけは違うと言える。
たとえ傍から見ればそうであっても。
(その座はレリーナのもので私のものでは無い。ノルン様やエルニカ様達も愛し子と聖女を分けて話していたし、別のはず)
「だがこの色は」
納得のできないウィオレス様は口ごもりながらも私の髪に手を伸ばしてくる。さらりと彼の手のひらに乗った私の髪は、未だ金が混じっていた。
「完全な金髪ではありません。瞳だって、水滴を垂らしたくらいの僅かな差です。だから違います」
捲られたヴェールを元に戻し、彼の視線を遮る。
「ただ、まあ、その……似たような立ち位置にはいるかもしれません」
完璧な誤魔化しはここまでくると不可能だ。所々濁しながら真実を混ぜて話す。
「君の隠していることがそれに当たるのか」
「…………そういうことです、ね」
目の前で立ち上がったウィオレス様を見上げる。
「以前、無理やり暴きはしないと仰られましたよね。このことも言わないでください。特に皇家の方々には。理由はウィオレス様も知っているでしょう」
「まあ、知られれば問答無用で婚約者の座に就かされるね。避けてきた意味が無くなる」
こくんと頷く。彼ははぁとため息をついた。
「公爵令嬢は秘密が多いね。隙も多いし、私が口約束を破るとは思わないの」
「ウィオレス様はからかったり、意地悪をしてくることはありますが……私が本当に嫌だと感じることは絶対にしてこないでしょう? 信用に足ると思っています」
前世で周りにいた者と比べるとそれだけでも彼は信じられるというか、お願いを守ってくれると思えるのだ。
それに、この時点で高位の地位にいるのだから権力をふりかざす者の脅しに屈する形で、私のことを話すこともないだろう。
「本っ当に甘いな。話したところで何か莫大な利益が生まれる訳でもないし、労力の無駄だからするつもりはないけどさ」
呆れたような目をしたウィオレス様はパンパンと手を叩くともう一度屈んで──
「体調が悪いなら水に浸かってるのも体に悪い。望みの場所まで運ぶよ」
ぐいっと私を抱き上げる。
「重いですよ!」
「重くない重くない。持てないくらいなら魔法で軽減させるし、オークションの時だって公爵令嬢を抱き上げて走っていただろう?」
「あの時は緊急事態だったからで!」
ウィオレス様は眉を顰める。
「状況が違うとはいえ、体調が悪いのに歩けるのか? 無理だろう? さっきだってふらついて手を付いたじゃないか」
「それはその通りなのですけれど」
だんだん反論の声が弱々しくなってしまう。私もひとりで歩ける状態では無いことは分かっているけれど、ここは人の目もある。あの時と今日では事情が違うのだ。
「じゃあ歩いてみな」
ゆっくりと下ろされたが、彼の支えを失うと直ぐに頽れそうになった。
「ほーら見ろ。無理じゃないか」
ウィオレス様は私を抱え直す。仕方がないのでそのまま体を預けた。
「君の家の馬車に運べばいいか?」
「えっと、馬車ではなく、エルニカ猊下の元に連れて行っていただけますか?」
祝祭の後、話がしたいと言われていたのだ。気分が悪いのは治っていないけれど、約束を反故にすることも出来ない。それに、エルニカ様は治癒魔法が使えるので事情を話せば魔法をかけてくれるかもしれなかった。
「猊下の場所なんて知らないよ。公爵令嬢は知っているのか」
「いいえ、ですが執務室で待っているようにと」
「執務室って何処だ」
「ここの道を戻って一つ目の分かれ道を右に行き、突き当たったら左に行くとあります」
ウィオレス様が私の言った通りに右に曲がったところで、一番会いたくない人に会ってしまう。
「──誰を運んでいるんだ?」
その声に私は息を呑んで呼吸が止まりそうだった。ウィオレス様も「運が悪い」とボソッとつぶやく。
「アルバート殿下こんにちは。この方は気分が優れないようで、廊下で座り込んでいるのを見かけまして。医務室に連れていこうと」
愛想笑いを顔に乗せた彼は軽く会釈している。
「私が聞きたいのは違う。その腕の中にいるご令嬢は踊り手に選ばれた者だろう? ただ、そのような珍しい髪色の者はいなかったはずだが……」
訝しげな声に心臓が波打つ。
大きな柱の影が落ちること部分的に暗くなった箇所にいたので、少し離れているアルバート殿下には誰なのか断定できなかったらしい。
(お願いそのままどこかに行って!)
きゅっとウィオレス様の胸元を掴んで身を寄せる。ヴェールを被って彼の胸元に顔を埋めているので、衣装で対象を絞れても、その中からピンポイントで私だとは分からないはずだ。
そんな中、彼は大胆な嘘をつく。
「殿下が誤解されるのも仕方がありませんが、この方は踊り手のご令嬢ではありませんよ。ただ何かあった場合、代わりに踊るために待機していた神官です」
「神官?」
「はい。ではこれで」
アルバート殿下の思考する時間を断ち切ったウィオレス様は歩みを進める。
危機から抜けてほっと一安心した私は、もう立ち去っただろうとヴェール越しにアルバート殿下のいた方向に目を向けたのだが。
「っ!」
殿下はそこに佇んでいて。凪いだ天の瞳がこちらをずっと見ていたのだ。
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