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彼女の今世
episode74
ヴェール越しなので見抜かれてはいないはずだ。不自然にならないようゆっくりとウィオレス様の胸元に顔を埋めた。
どくどくと嫌な音を心臓は立てているが、すぐに目を逸らした事で段々と落ち着いてくる。
「着いたよ。ここで合ってる?」
そんな声にようやく顔を上げた私の額に浮かんだ冷や汗を、彼は優しく拭ってくれた。柔らかなハンカチの感触に強ばっていた体が弛緩する。
安心したことが伝わったのだろう。ウィオレス様はふっと表情を緩めたあと、少しからかうように首を傾げる。
「今の公爵令嬢を見ていると殿下に同情したくなるな」
「それは……私自身も思いますよ」
第三者からすると、アルバート殿下が理不尽に避けられているように映るだろう。だって今世の彼はまだ何もしていないのだから。
良心の呵責に目を逸らす。ウィオレス様は目の前にあるドアをノックする前に、重くなってしまった空気を吹き飛ばすためか溌剌とした声でもう一言加えた。
「君は私にたくさんの借りがあるね。今後どうやって返してもらおうか」
「…………犯罪以外で私に出来ることがあるならば何でも」
「そんなことを私がするように見えるのか」
見えないと言ったら嘘になる。犯罪ギリギリのところには手を出していそうな雰囲気があるから。絶対に清廉潔白ではないだろう。
「ではいつか、君のその秘密の力も貸してくれるのか」
「ええ、まあ、お貸しすることは可能ですが。秘密と言ってもそれほど対した力ではないと思いますよ?」
ただただ魔力が多いだけだと思っていたけれど、今回の件からどうやらそれは違うらしい。髪と瞳の色が変化する原因を問いたださなければと話しながら決意する。
「そんなの分からないだろ。現に精霊にも好かれる体質のようだし。それだけで貴重な存在だ」
約束だ、と彼は私を抱き抱えながら小指を差し出してくるので私も自身のを絡ませる。
ウィオレス様の指は当たり前だが私よりも大きくて、ちょっと固くて、でも優しい指切りだった。
その後、ウィオレス様がエルニカ猊下の部屋をノックしたのだが、中からは全く応答がない。試しにということでドアノブを捻ると呆気なくドアが開いた。
「失礼します。公爵令嬢の体調が優れないようで私がお連れしたのですが、誰かいらっしゃいますか」
声をかけながらウィオレス様は中に入っていくが、部屋の中はもぬけの殻だった。
窓を閉め忘れたのか春風に揺られて真っ白なカーテンが揺蕩い、さやさやと木々の擦れる爽やかな音が耳に届く。
私よりも先に会場を後にしていたのに、戻る最中誰かに捕まったのか、はたまた約束を忘れているのか。部屋の主はまだ戻っていないようだ。
「ウィオレス様、ここまで送って下さりありがとうございました。あそこにあるソファに下ろしてください」
エルニカ猊下が戻ってくるまでウィオレス様を付き合わせるのは申し訳ない。そう思い、ソファに下ろしてもらいつつ私はもう大丈夫だからと帰るように促そうとしたのだけれど。
彼はまたため息を吐いて眉間に皺を寄せる。
「熱があるくせによく言う」
すっと伸びてきた大きな手が優しく額を撫で、ひんやりとした感触が伝わる。見ると、私の額と彼の手の間に小さな魔法陣が浮かんでいた。
そうして幼子をあやすように頭を撫でる。
「こういう時まで大人びていなくていいんだ。君はまだ子供なのだから。体調が悪いときくらい、気を張らずに周りの者を頼ればいい」
諭され、丁寧な手つきで横に寝かせられた。パチンと彼が指を弾くとどこからともなく柔らかいブランケットが現れて、私を包み込む。
「猊下がお戻りになられたら事情を説明しておいてあげるから。それまではおやすみ」
最後にトンっと小突かれると同時、私の視界は真っ黒に染まった。
◇◇◇
パチリと目を覚ました時には見慣れない天蓋で。ああまたかと、不思議に思うよりも先に既視感を感じた。
何だか最近、ことある事に意識を手放している。そろそろ私もなにか対策をした方が良い気がしてきた。
(さてと、今の私の状態は)
額に浮かんでいた魔法陣は既に消え、代わりに濡れた清潔なタオルが置かれていた。
着用している服もネグリジェのような軽くて動きやすい物に代わっている。
ゆっくり身体を起こし、周りの状態も把握する。
ぱっと見上げた視線の先、バルコニーに続く大きな窓は全開になっていて、一面見たこともない花で覆い尽くされていた。その奥には湖があり、風が吹くと薔薇にも似た匂いが漂ってくる。
「神殿でも、公爵邸、魔法省の何処でもない」
そうして窓のギリギリに映り込む木々の葉の色に目を疑う。
「銀? しかも光り輝いているわ」
当然だが、ルーキアの植生では有り得ない。大陸の他の国でも光り輝く銀の葉をつける木はないだろう。
だが、見聞きしたことはある。
(文献の中で。この神秘的な木の生えている場所は──)
すると、突然辺りに響く大きな声に遮られ、部屋の扉が開かれた。
「既に手遅れですけど、ほんっっとうにどうにもならなくなったら、如何なる手を使ってでも解決してくださいよ! 約束ですよ!? ぜんっっぶ貴女様のせいでこうなっているのですから!」
後ろにいるらしきもう一人の人物に向かって怒りをあらわにしている女性は、くるりと顔を正面に戻した。
「あら、起きたのね」
視線が合い、憤慨していたその人──エルニカ猊下は途端に優しい微笑を向けてくる。
「目が覚めるまではもう少し時間がかかると思っていたけど」
スタスタと寝台まで近寄ってきたエルニカ猊下は熱を計るためか、私の額に手を添え、次に頬を両手で包む。
「調子はどうかしら」
「今は元気です」
ウィオレス様に指摘された熱も下がり、だるさも解消されていた。むしろ体力が有り余っているように感じる。
「なら良かったわ。ごめんなさいね。儀式の際に一時的に制限を外し、枯渇にだけ気をつければ大丈夫だろうという考えが甘かったの。一応魔力自体は残っていたのだけど、一気に吸い上げた影響で貴女の身体が枯渇したと錯覚したみたいで……魔術師の彼から事情は聞いたわ」
「つまり、擬似の魔力不足になっていたと」
「そういうこと」
根こそぎ持っていかれる感覚はあったので、すとんと腑に落ちる。
(大したことではなくて良かった)
「色々説明して頂きたいことはありますが」
そこで区切り、エルニカ猊下にこっぴどく叱られ、部屋に入るか入らないか迷っている人物に視線を向ける。
「お久しぶりですノルン様」
裾がふわりとした柔らかな淡い檸檬色のワンピースに身を包み、長い金の髪を右側に流している彼女は気まずそうに頬をかく。
「ひさしぶり。会えて嬉しいわ」
「お入りになられないのですか?」
もっと近くに来ればいいのに、一向に部屋の中に入ろうとはせず、廊下にいる。
「あまり近寄りたくないというか……ううん! リティ、貴女のことではないのよ」
言いながら恐る恐る入室するノルン様はチラチラとエルニカ猊下の様子を窺っていた。
「びっくりしたでしょう。起きたら見たことも無い部屋で」
「いいえ。最近、よく同じような状況に置かれることが多いので」
そう返すと、「人のこと言えないけれど、それはそれでどうなのかしら」とノルン様は怪訝な顔をする。
「何故、ノルン様がここに? お忙しいと存じ上げてますが」
「ああ、それはここが私の住まいで、人の間では……ええっと……」
窓から入ってきた摩訶不思議な光る蝶を指にとめながら、ノルン様は告げた。
「人はここを天界と呼ぶわ」
どくどくと嫌な音を心臓は立てているが、すぐに目を逸らした事で段々と落ち着いてくる。
「着いたよ。ここで合ってる?」
そんな声にようやく顔を上げた私の額に浮かんだ冷や汗を、彼は優しく拭ってくれた。柔らかなハンカチの感触に強ばっていた体が弛緩する。
安心したことが伝わったのだろう。ウィオレス様はふっと表情を緩めたあと、少しからかうように首を傾げる。
「今の公爵令嬢を見ていると殿下に同情したくなるな」
「それは……私自身も思いますよ」
第三者からすると、アルバート殿下が理不尽に避けられているように映るだろう。だって今世の彼はまだ何もしていないのだから。
良心の呵責に目を逸らす。ウィオレス様は目の前にあるドアをノックする前に、重くなってしまった空気を吹き飛ばすためか溌剌とした声でもう一言加えた。
「君は私にたくさんの借りがあるね。今後どうやって返してもらおうか」
「…………犯罪以外で私に出来ることがあるならば何でも」
「そんなことを私がするように見えるのか」
見えないと言ったら嘘になる。犯罪ギリギリのところには手を出していそうな雰囲気があるから。絶対に清廉潔白ではないだろう。
「ではいつか、君のその秘密の力も貸してくれるのか」
「ええ、まあ、お貸しすることは可能ですが。秘密と言ってもそれほど対した力ではないと思いますよ?」
ただただ魔力が多いだけだと思っていたけれど、今回の件からどうやらそれは違うらしい。髪と瞳の色が変化する原因を問いたださなければと話しながら決意する。
「そんなの分からないだろ。現に精霊にも好かれる体質のようだし。それだけで貴重な存在だ」
約束だ、と彼は私を抱き抱えながら小指を差し出してくるので私も自身のを絡ませる。
ウィオレス様の指は当たり前だが私よりも大きくて、ちょっと固くて、でも優しい指切りだった。
その後、ウィオレス様がエルニカ猊下の部屋をノックしたのだが、中からは全く応答がない。試しにということでドアノブを捻ると呆気なくドアが開いた。
「失礼します。公爵令嬢の体調が優れないようで私がお連れしたのですが、誰かいらっしゃいますか」
声をかけながらウィオレス様は中に入っていくが、部屋の中はもぬけの殻だった。
窓を閉め忘れたのか春風に揺られて真っ白なカーテンが揺蕩い、さやさやと木々の擦れる爽やかな音が耳に届く。
私よりも先に会場を後にしていたのに、戻る最中誰かに捕まったのか、はたまた約束を忘れているのか。部屋の主はまだ戻っていないようだ。
「ウィオレス様、ここまで送って下さりありがとうございました。あそこにあるソファに下ろしてください」
エルニカ猊下が戻ってくるまでウィオレス様を付き合わせるのは申し訳ない。そう思い、ソファに下ろしてもらいつつ私はもう大丈夫だからと帰るように促そうとしたのだけれど。
彼はまたため息を吐いて眉間に皺を寄せる。
「熱があるくせによく言う」
すっと伸びてきた大きな手が優しく額を撫で、ひんやりとした感触が伝わる。見ると、私の額と彼の手の間に小さな魔法陣が浮かんでいた。
そうして幼子をあやすように頭を撫でる。
「こういう時まで大人びていなくていいんだ。君はまだ子供なのだから。体調が悪いときくらい、気を張らずに周りの者を頼ればいい」
諭され、丁寧な手つきで横に寝かせられた。パチンと彼が指を弾くとどこからともなく柔らかいブランケットが現れて、私を包み込む。
「猊下がお戻りになられたら事情を説明しておいてあげるから。それまではおやすみ」
最後にトンっと小突かれると同時、私の視界は真っ黒に染まった。
◇◇◇
パチリと目を覚ました時には見慣れない天蓋で。ああまたかと、不思議に思うよりも先に既視感を感じた。
何だか最近、ことある事に意識を手放している。そろそろ私もなにか対策をした方が良い気がしてきた。
(さてと、今の私の状態は)
額に浮かんでいた魔法陣は既に消え、代わりに濡れた清潔なタオルが置かれていた。
着用している服もネグリジェのような軽くて動きやすい物に代わっている。
ゆっくり身体を起こし、周りの状態も把握する。
ぱっと見上げた視線の先、バルコニーに続く大きな窓は全開になっていて、一面見たこともない花で覆い尽くされていた。その奥には湖があり、風が吹くと薔薇にも似た匂いが漂ってくる。
「神殿でも、公爵邸、魔法省の何処でもない」
そうして窓のギリギリに映り込む木々の葉の色に目を疑う。
「銀? しかも光り輝いているわ」
当然だが、ルーキアの植生では有り得ない。大陸の他の国でも光り輝く銀の葉をつける木はないだろう。
だが、見聞きしたことはある。
(文献の中で。この神秘的な木の生えている場所は──)
すると、突然辺りに響く大きな声に遮られ、部屋の扉が開かれた。
「既に手遅れですけど、ほんっっとうにどうにもならなくなったら、如何なる手を使ってでも解決してくださいよ! 約束ですよ!? ぜんっっぶ貴女様のせいでこうなっているのですから!」
後ろにいるらしきもう一人の人物に向かって怒りをあらわにしている女性は、くるりと顔を正面に戻した。
「あら、起きたのね」
視線が合い、憤慨していたその人──エルニカ猊下は途端に優しい微笑を向けてくる。
「目が覚めるまではもう少し時間がかかると思っていたけど」
スタスタと寝台まで近寄ってきたエルニカ猊下は熱を計るためか、私の額に手を添え、次に頬を両手で包む。
「調子はどうかしら」
「今は元気です」
ウィオレス様に指摘された熱も下がり、だるさも解消されていた。むしろ体力が有り余っているように感じる。
「なら良かったわ。ごめんなさいね。儀式の際に一時的に制限を外し、枯渇にだけ気をつければ大丈夫だろうという考えが甘かったの。一応魔力自体は残っていたのだけど、一気に吸い上げた影響で貴女の身体が枯渇したと錯覚したみたいで……魔術師の彼から事情は聞いたわ」
「つまり、擬似の魔力不足になっていたと」
「そういうこと」
根こそぎ持っていかれる感覚はあったので、すとんと腑に落ちる。
(大したことではなくて良かった)
「色々説明して頂きたいことはありますが」
そこで区切り、エルニカ猊下にこっぴどく叱られ、部屋に入るか入らないか迷っている人物に視線を向ける。
「お久しぶりですノルン様」
裾がふわりとした柔らかな淡い檸檬色のワンピースに身を包み、長い金の髪を右側に流している彼女は気まずそうに頬をかく。
「ひさしぶり。会えて嬉しいわ」
「お入りになられないのですか?」
もっと近くに来ればいいのに、一向に部屋の中に入ろうとはせず、廊下にいる。
「あまり近寄りたくないというか……ううん! リティ、貴女のことではないのよ」
言いながら恐る恐る入室するノルン様はチラチラとエルニカ猊下の様子を窺っていた。
「びっくりしたでしょう。起きたら見たことも無い部屋で」
「いいえ。最近、よく同じような状況に置かれることが多いので」
そう返すと、「人のこと言えないけれど、それはそれでどうなのかしら」とノルン様は怪訝な顔をする。
「何故、ノルン様がここに? お忙しいと存じ上げてますが」
「ああ、それはここが私の住まいで、人の間では……ええっと……」
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