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第一章 生まれ変わったみたいです
視線の先にあったもの(1)
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試験期間に入った私はエステルと試験勉強するために図書館に来ていた。
皆試験時に提出しなければならない課題に追われているようで、頭を抱えていたり、唸ってたり、中にはあきらめて居眠りしている人がいたり。人それぞれ思い思いの時間を過ごしていた。
一階の自習スペースは既に満席で、私は階段を上って二階に上がる。
ちょうど日当たりのよい席が二席空いていたので、そこを陣取った。
「エステルはなにをするの?」
「私は歴史学のレポートよ。この大陸、国同士の争いごとが多くてややこしいわ」
ため息をついてエステルはインク壺に羽根ペンの先を浸した。
どうやら白紙の紙に自ら大陸の地図を書いて、戦地を書き込んでいくらしい。そうして頭の中の情報を整理するんだとか。
「レーゼは書き終わっているの?」
「もちろん! 課題が提示された次の日に終わらせたわ」
「へえ凄い。五枚は最低限書きなさいって言われてたのに」
目を丸くするエステルにふふんと鼻を鳴らした。
彼女と違って二度目の人生である私。十三年前より研究が進んで教わる内容が変わっている科目もあるが、イザベルの時で一般教養は身につけている。
今のところ授業について行くことは造作もないし、多分寝ててもいい成績が取れると思う。が、先生の私に対する印象が最悪になるのは嫌なので、真面目に授業を受けている。
まあ、一年生の最初の学期が授業も一番簡単なので今が大丈夫でも、今後は身につけている教養では困難になっていくかもしれない。油断大敵だ。
「歴史学にちょうど良い資料があったはずだから探してくるね」
「いいの? お願い」
私は抱えていた自分の勉強道具を机に置いて、一階へと降りる。
歴史書が多く置いてある棚の端から順番に背表紙を確認していく。
お目当てのものを上段に発見した私が、背伸びして指に引っかけ、取り出そうとしたその時だった。
「──今日、ユリウス陛下が視察で学園を訪れてるらしいわよ」
取ろうとした本が手から滑り落ち、ドサドサッと運悪く周りの本も床に落ちる。
突然私が常に欲している話題が出て、耳は研ぎ澄まされ、一言も聞き漏らさないように神経を張り詰める。じわりと手に汗がにじむ。
声の出処は私がいる列の左奥にある閲覧席だ。そこに座っている女子生徒二人が一冊の書物と向かい合っている。
「それ本当なの!?」
目を輝かせる生徒に、もうひとりが首を縦に振る。
「さっき職員室に課題を提出しに行ったら、奥の方で先生たちが話していたわ。何でもお忍びらしくて。護衛も付けずに現れたそうよ」
その後もなにか話していたようだけれど、私の耳には入ってこなかった。
(ユースが……今、ここにいるの? 建物内に?)
心臓がはち切れてしまいそうなほど高鳴っている。
皇帝になったユースは滅多に公の場に姿を現さない。社交界デビューをしていない私は、皇家主催の舞踏会にも参加が叶わず、顔を拝見することさえ困難なのだ。
とりあえず床に落としてしまった書物を元の棚に戻し、お目当ての本をエステルに渡す。
「誘っといてなんだけど、私用事を思い出して……ちょっとの間抜けてもいい?」
「構わないけど」
エステルは地図帳と睨めっこしながら了承してくれた。
「ありがとう!」
私は周りの迷惑にならない程度に早足に図書館を出る。
「視察って言ったっけ。なら何処に行くんだろう」
見当もつかない。虱潰しに校舎内を回れば会えるだろうか。それに、学園関係者のお偉い人といるだろうから二人組以上の大人を探す。
階段を駆け上がり、上の階から見ていくがそのような人は見当たらない。
「はあ~~、そう簡単に会えるわけないわよね」
踊り場の手すりに寄りかかりながら落胆する。ドキドキしていた心臓の鼓動が収まっていく。
「エステルのところに戻るかなぁ」
階段を降りようと手すりから手を離し、ふと窓の外を見た私はそこにあった光景に目を見開いた。
皆試験時に提出しなければならない課題に追われているようで、頭を抱えていたり、唸ってたり、中にはあきらめて居眠りしている人がいたり。人それぞれ思い思いの時間を過ごしていた。
一階の自習スペースは既に満席で、私は階段を上って二階に上がる。
ちょうど日当たりのよい席が二席空いていたので、そこを陣取った。
「エステルはなにをするの?」
「私は歴史学のレポートよ。この大陸、国同士の争いごとが多くてややこしいわ」
ため息をついてエステルはインク壺に羽根ペンの先を浸した。
どうやら白紙の紙に自ら大陸の地図を書いて、戦地を書き込んでいくらしい。そうして頭の中の情報を整理するんだとか。
「レーゼは書き終わっているの?」
「もちろん! 課題が提示された次の日に終わらせたわ」
「へえ凄い。五枚は最低限書きなさいって言われてたのに」
目を丸くするエステルにふふんと鼻を鳴らした。
彼女と違って二度目の人生である私。十三年前より研究が進んで教わる内容が変わっている科目もあるが、イザベルの時で一般教養は身につけている。
今のところ授業について行くことは造作もないし、多分寝ててもいい成績が取れると思う。が、先生の私に対する印象が最悪になるのは嫌なので、真面目に授業を受けている。
まあ、一年生の最初の学期が授業も一番簡単なので今が大丈夫でも、今後は身につけている教養では困難になっていくかもしれない。油断大敵だ。
「歴史学にちょうど良い資料があったはずだから探してくるね」
「いいの? お願い」
私は抱えていた自分の勉強道具を机に置いて、一階へと降りる。
歴史書が多く置いてある棚の端から順番に背表紙を確認していく。
お目当てのものを上段に発見した私が、背伸びして指に引っかけ、取り出そうとしたその時だった。
「──今日、ユリウス陛下が視察で学園を訪れてるらしいわよ」
取ろうとした本が手から滑り落ち、ドサドサッと運悪く周りの本も床に落ちる。
突然私が常に欲している話題が出て、耳は研ぎ澄まされ、一言も聞き漏らさないように神経を張り詰める。じわりと手に汗がにじむ。
声の出処は私がいる列の左奥にある閲覧席だ。そこに座っている女子生徒二人が一冊の書物と向かい合っている。
「それ本当なの!?」
目を輝かせる生徒に、もうひとりが首を縦に振る。
「さっき職員室に課題を提出しに行ったら、奥の方で先生たちが話していたわ。何でもお忍びらしくて。護衛も付けずに現れたそうよ」
その後もなにか話していたようだけれど、私の耳には入ってこなかった。
(ユースが……今、ここにいるの? 建物内に?)
心臓がはち切れてしまいそうなほど高鳴っている。
皇帝になったユースは滅多に公の場に姿を現さない。社交界デビューをしていない私は、皇家主催の舞踏会にも参加が叶わず、顔を拝見することさえ困難なのだ。
とりあえず床に落としてしまった書物を元の棚に戻し、お目当ての本をエステルに渡す。
「誘っといてなんだけど、私用事を思い出して……ちょっとの間抜けてもいい?」
「構わないけど」
エステルは地図帳と睨めっこしながら了承してくれた。
「ありがとう!」
私は周りの迷惑にならない程度に早足に図書館を出る。
「視察って言ったっけ。なら何処に行くんだろう」
見当もつかない。虱潰しに校舎内を回れば会えるだろうか。それに、学園関係者のお偉い人といるだろうから二人組以上の大人を探す。
階段を駆け上がり、上の階から見ていくがそのような人は見当たらない。
「はあ~~、そう簡単に会えるわけないわよね」
踊り場の手すりに寄りかかりながら落胆する。ドキドキしていた心臓の鼓動が収まっていく。
「エステルのところに戻るかなぁ」
階段を降りようと手すりから手を離し、ふと窓の外を見た私はそこにあった光景に目を見開いた。
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