14 / 88
第一章 私と殿下
手紙とインク
しおりを挟む
意気揚々と自室に戻った私は机から紙とインク壺を取り出す。
そして殿下に予定を空けてもらうため、お伺いの手紙をしたためる。
インク壺に浸したペン先でさらさらと紙の余白が文字で埋められていく。
「よし、出来たわ。えーっと今は何時かしら」
形式的な手紙をしたため終わった私は、チラリと時計を見るとまだ夕刻と言える時間帯だ。
この時間帯なら手紙を飛ばしても大丈夫だろう。
封筒に蝋を垂らし、自分のお気に入りの花柄の型を上から押して閉じ、魔法で窓から飛ばす。
(昔はよく手紙を送っていたっけ)
闇の中に溶けていく手紙を見送りながら、ぼんやりと考える。
毎日書いては王宮に飛ばして返ってくる返事を楽しみにしていたが、いつの間にか前回も今回も書かなくなっていた。
「久しぶりに……書こうかしら。マリーに」
殿下にと言う場面だろうが、まあ別に書かなくていい気がする。第一、この複雑な気持ちの中で私的な手紙を書くのはできそうにない。
それにマリーに手紙など今回は書いたことがない。きっと驚かれるだろう。想像しただけで楽しくなってきた。
私は覚えているうちに手紙を書こうと自室を漁って真新しい綺麗な便箋を見つける。
そして今度は黒ではなくて、蒼いインク壺にペンを浸す。蒼は親しいものに送る手紙などに使われる色だ。
瑞々しい蒼が楽しそうな感じな文字で手紙を綴る。
「ふふこれは飛ばさないで自分でマリーに持って行こう!」
彼女は今風邪で屋敷から出られないらしいので、お見舞いに行くついでに渡せばいい。そして久しぶりに沢山話をしよう。お菓子をこしらえて二人で食べながら。
でもその前に、ギルバート殿下に話をしに行かないと行けないことを思い出して気分が一気に急降下する。
日程を伺った手紙が一生戻って来なければいいのに。だけどきっと明日には返事が返ってくるだろう。いつもそうだったから。
そんなことを考えていたら開いた窓から風が入ってきてヒラヒラと何かが落ちてきた。
「え!? 早くない……? もう?」
ハラリと地面に落ちた手紙を裏っ返し、蝋の紋章を見てみると予想通りの王家の紋章だった。
恐ろしいほど早い返事が怖い。まだ、送ってから数時間くらいしか経ってないのに。
少し恐怖を感じながらペーパーナイフで開封をすると、明日の午後ならと書かれていた。
「明日の午後……殿下は暇人なのかしら……いや、そんな訳ないわよね」
明日の午後となると、どうやって説得するのか考える時間は一日分も無い。そんな短期間でいい案など思いつかない。
「なっ何とかなるわよね。ただ話をするだけだし」
私は考えるのをやめた。なぜなら考えれば考えるだけ思考のループに嵌るからだ。
私は殿下に話をする。という目を背けたい事柄を考えながら、ルーナが就寝の支度を手伝いに来るまでその場で頭を抱え、寝台の中に入っても真夜中まで頭を悩ますこととなった。
そして殿下に予定を空けてもらうため、お伺いの手紙をしたためる。
インク壺に浸したペン先でさらさらと紙の余白が文字で埋められていく。
「よし、出来たわ。えーっと今は何時かしら」
形式的な手紙をしたため終わった私は、チラリと時計を見るとまだ夕刻と言える時間帯だ。
この時間帯なら手紙を飛ばしても大丈夫だろう。
封筒に蝋を垂らし、自分のお気に入りの花柄の型を上から押して閉じ、魔法で窓から飛ばす。
(昔はよく手紙を送っていたっけ)
闇の中に溶けていく手紙を見送りながら、ぼんやりと考える。
毎日書いては王宮に飛ばして返ってくる返事を楽しみにしていたが、いつの間にか前回も今回も書かなくなっていた。
「久しぶりに……書こうかしら。マリーに」
殿下にと言う場面だろうが、まあ別に書かなくていい気がする。第一、この複雑な気持ちの中で私的な手紙を書くのはできそうにない。
それにマリーに手紙など今回は書いたことがない。きっと驚かれるだろう。想像しただけで楽しくなってきた。
私は覚えているうちに手紙を書こうと自室を漁って真新しい綺麗な便箋を見つける。
そして今度は黒ではなくて、蒼いインク壺にペンを浸す。蒼は親しいものに送る手紙などに使われる色だ。
瑞々しい蒼が楽しそうな感じな文字で手紙を綴る。
「ふふこれは飛ばさないで自分でマリーに持って行こう!」
彼女は今風邪で屋敷から出られないらしいので、お見舞いに行くついでに渡せばいい。そして久しぶりに沢山話をしよう。お菓子をこしらえて二人で食べながら。
でもその前に、ギルバート殿下に話をしに行かないと行けないことを思い出して気分が一気に急降下する。
日程を伺った手紙が一生戻って来なければいいのに。だけどきっと明日には返事が返ってくるだろう。いつもそうだったから。
そんなことを考えていたら開いた窓から風が入ってきてヒラヒラと何かが落ちてきた。
「え!? 早くない……? もう?」
ハラリと地面に落ちた手紙を裏っ返し、蝋の紋章を見てみると予想通りの王家の紋章だった。
恐ろしいほど早い返事が怖い。まだ、送ってから数時間くらいしか経ってないのに。
少し恐怖を感じながらペーパーナイフで開封をすると、明日の午後ならと書かれていた。
「明日の午後……殿下は暇人なのかしら……いや、そんな訳ないわよね」
明日の午後となると、どうやって説得するのか考える時間は一日分も無い。そんな短期間でいい案など思いつかない。
「なっ何とかなるわよね。ただ話をするだけだし」
私は考えるのをやめた。なぜなら考えれば考えるだけ思考のループに嵌るからだ。
私は殿下に話をする。という目を背けたい事柄を考えながら、ルーナが就寝の支度を手伝いに来るまでその場で頭を抱え、寝台の中に入っても真夜中まで頭を悩ますこととなった。
79
あなたにおすすめの小説
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる