Desperado~エピローグから始まる異世界放浪紀

ダメ人間共同体

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Take the devil 14

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男はライザを左腕で抱きかかえ右手で転移のペンダントを左袖の中から取り出すと優しく握った。

「しっかり捕まっていろ」

男の言うとおりライザは掴まった。
男はゼンセン城をイメージすると回りの風景が歪んでいく。
風景の歪みが終わるとゼンセン城の付近の林の中だった。

「え! シロ!! 何、これ!一瞬で!」

「これが転移魔法だ。行ったことのある場所なら一瞬で転移できる」

が、ゼンセン城は跡形も無く崩れ去っていた。

「この力があればパパを助けることが出来たんじゃない!!」
ライザは語気を強めていった。

「あぁ! 可能だろうな」

「じゃなんでパパを助けてくれなかったの?」

「ヘルザイムがそれを望んでいなかったからだ」

「でもシロの力があればパパを助けられたはずよ!」

「ライザ、いいことを教えてやろう。
 女、子供が男の覚悟に口を出してはいけない!
 嫌、何者であろうが男の覚悟に口を出してはいけない!!
 あのときのヘルザイムは男の!魔王としての覚悟があった。
 自分の使命を果たそうとする男の覚悟があった。
 俺も男として、その覚悟に水を刺すことはできなかった。
 いい女は男の覚悟に黙って頷くものだ。 口を出すような女は大した女では無い。
 覚えておけ」

「わ、分かった」
と言うと大人しく頷いた。

「それにしても跡形なく崩れたもんだな。
 誰もここに城があったとは思えないだろうな」

とは言うもの崩れた瓦礫は辺りに散乱していたが、何かが建っていたのかもしれないと言う有様だった。

「遺体が一つもないな~
 まさか勇者たちだけで攻めてきたわけじゃないだろうし、ヘルザイムの部下が全員裏切るとも思えないのだがな~」

しばらくサイゼン城の方へ向かって歩くと血の臭いを感じた。
そして林を抜けると遺体で作られた小山が出来ていた。
よくみると魔族や亜人、それに人族の遺体も一緒に山積みにされていた。

「見るな!!」

男は慌ててライザの両目を右手で塞いだ。

「おいおい、自分のとこの兵士も放置したままかよ! 普通、遺体は遺族のために持ち帰るだろ~
 あのお姫様なら一人残らず連れ帰るだろうに。知ったら大激怒ものだな!」
男は優しくも聡明な姫を思い出していた。

「今度の作戦指揮官は血も涙もないヤツだな! 手加減してやる必要は無さそうだな!
 遺体をこのまま野ざらしにしておくのも偲びない」

左手を異体の山に向け魔法を唱えた。

「フレイムナパーム!」

男の袖から業火が飛び出し遺体の山を焼き尽くした。
そして男は両膝を地面につけ両手を揃え拝んだ。
別に神を信仰しているわけではないのだが生まれ故郷のしきたりであったため体に染み付いている風習がそうさせた。

「シロ。ありがとう」
とライザも男を真似て跪いて両手を揃え拝んだ。
祈りが終わると男は立ち上がりライザに声を掛けた。

「もう一度、飛ぶ。今度はサイゼン城内に。ゆっくりしているとペンザが危ない!
 処刑するとしたら、城内の広場だろうな」

と言うとライザの体を引き寄せサイゼン城の広場が見える時計塔の内部へ飛んだ。
時計塔の内部は小部屋になっており、大時計を動かす歯車などが剥きだしになっていたが、思いのほか広く10畳くらいの開きスペースがあった。
「ここなら広場のすべてが見えるぞ」

時計塔の小窓を開けると広場が一望できる。
広場には多くの兵士が集まってり中心にはギロチン台が設置されていた。
ほとんどが鎧やローブなどの武具を装備しており民間人に見える者は皆無だった。

「シロ!どうするの?」

「さぁ~どうしようかな~」

ガタッ!

「誰だ!」

「ファイヤーボール!!」
物音がした瞬間、何者かが魔法を放った。
男は左手を突き出しマジックバッグにファイヤーボールを吸い込ませる。

「おいおい、こんな狭いところで魔法なんて撃つなよ!
 隠れていないで出て来いよ! 魔道師さん!」

歯車の影から紺色のローブに杖を持ったライザと同じくらいの少女が出てきた。
紺色の魔道師帽を被り白髪の髪が帽子の隙間から見え隠れしていた。

「王国の魔道師さんかな? こんなところで何をやっているんだい?
 こんな所にいないででっかいペンギンの処刑ショーを見に行ったほうがいいんじゃないかい?」

「人間! お前こそ広場に行った方がいいと思うぞ。それとも私の邪魔をしに来たのか?」

「人間?」
男は少女の言葉が引っかかった。
少女は杖を構え次の魔法の準備に取り掛かった。

「サイサリー?」
ライザが疑問形の声を上げながら物陰から顔を出した。
男は咄嗟にライザを庇うように前に立った。
ライザは男の横から顔を出すと

「サイサリーじゃない! 無事だったのね! 良かったーー!!」

と言うと飛び出し魔道師の前に行き手を取った。

「ライザ! 危ない!!」
男が警戒の声を上げると少女は跪き頭を垂れた。

「ライザ様! ご無事で」
「サイサリーこそ無事で良かったーーー!」

とライザは跪いている魔道師の少女に飛びついた。
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