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第一部 俺のハーレム・パーティがちょっとおかしい/ラッキースケベは必要ですか?

イフリート

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と、そのとき町の北の森から凄い爆発音と共に辺りが昼間と思えるほどの火柱が上がった。
部屋が揺れガラスが割れる。
窓から顔を出すと

ズドーーン

ズドーーン

という爆発音と共に火柱が上がる。
今のところ町は無事だが爆発による火柱は近づいてきている。

「俺はギルドへ行く、お前たちも来てくれ。頼む」
ドリスタンさんが部屋から飛び出て行く。
俺たちも後を追いギルドに着くと

「ギルド長!! 魔道師です。仮面の魔道師が攻めて来ました」

「なに!! 何故、ナミラーの町を襲う!」

「分かりません。が、ヤツは確実にこっちへ向かっています」

「全員、非常招集を掛けろ。南に展開している騎士団にも連絡を入れろ!」

「了解しました」

「おい、BLパーティ、お前らも力を貸せ。カレー屋! グリフォンを倒した腕があるならお前も前線に出て戦ってくれ!」

ヘッ?
このときの俺は一体どれくらいマヌケ顔をしていたろうか?
みんなの前で調子に乗って格好つけるのではなかった。
グリフォンを倒したといえば倒したのだが・・・・・あれは闇討ちであって俺の実力では無い。
なんたって俺は料理を作ることしか出来ない一般人なのだから。

「一応、俺たちも行こう。七海なら魔道師に対抗できるだろうから」
智弘が言う。

「ちょっと待て、七海を前面に立たせるのは止めよう」

「白田君。大丈夫よ。聖属性の攻撃以外、深刻なダメージを受けないから。
 魔法の戦いなら私が一番前に出たほうがいいと思う」

「いや、しかし・・・・」

「聖属性の攻撃が来たらすぐ後ろに逃げるから大丈夫」

「そ、そうか・・・・・・」

今ひとつ俺は納得できないが闇討ちしか出来ない俺が最前線に立っても七海の邪魔になるだけだ。
格好つけたがるところは直しておかないと早死にしそうだ。


魔道師のいる方向にある森は赤く燃え上がっている。
火柱が上がり爆発音が聞こえてくる。
やがてその火柱は街道あたりで止まってようだが爆発音は前にも増して激しくなる。
ときどき雷撃系と思われる閃光が走る。
どうやら魔道師が応対しているようだ。
その方向から何人もの剣を持った冒険者が逃げてくる。
戦士系の職業は魔道師とは分が悪いようだ。

「則之、お前は危ないんじゃないか?」

「何、言っているんだ碧!お前はもっと危ないぞ」

言われてみれば俺なんか役に立つわけが無い。
俺が一番魔法耐性が無い。何たって一般人だから。
魔法を喰らったらイチコロかもしれない。

「俺と七海が前に出る! 行くぞ、七海」

「はい」

智弘と七海が走っていく。その後を俺、則之、将太が追いかける。

「強いぞ!」「逃げろ!」「魔道師を呼んで来い!」「撤退だ、撤退」
多くの冒険者達とすれ違う。
そんなに仮面の魔道師は強いのか?


「おい、BLパーティ!協力してくれ!」
ぐは~~定着している。
獣人サリムさんたちのレディース・パーティーだ。

「魔道師、いけるか?」

「はい、私が行きます」
七海が答えまた走り出す。

サリムさんのところも魔道師のライムさんが前に出て魔道師を待ち構えている。
ライムさんの後ろに戦士系のサリムさんとアマネさんが控え少し離れた最後尾に神官のミリアさんが控える。
俺たちもそれに習い七海が最前列に、その後に智弘、則之が並び最後尾に俺と将太がシフトした。

魔道師は100m前に迫る、そこへ火の玉が落下してくる。

「うがーーーーー苦しい! 苦しい!」

火の玉の奥から仮面の魔道師が現れた。
体から火が吹き出ているではないか?
あれは人間なのか? 火の魔人ではなかろうか?
が、歩き方はヨタヨタとおぼつかない。

ガーーーーー ウワーーーー ギャーーーーー
と叫び声を上げながら火炎系の魔法を打ち出しながら徐々に近づいてくる。

「イフリート! 魔人イフリート!!」
ライムさんが叫んだ。

「下がれ!下がれ!」
アマネさんが叫ぶ。

「死ねーー 死ねーー 死ねーー!」

ファイヤーボールを狂ったように撃ってきた。
一体何発撃ってくるのだ!
手首を振るだけで火の玉が発せられている。
魔法を唱えているというより手から発射しているように見える。

その一発がライムさんに直撃し体が燃えた。
サリムさん、アマネさんがライムさんを抱きかかえ後退してきた。

「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」
将太とミリアさんが慌ててヒールをかける。
マジックランドセルから水を取り出しライムさんに掛ける。


「ウギャーーーー、熱い、熱い。ヘルフレイム!!」

今度は魔法を唱えたようだ。
火柱がまた上がる。
魔道師の後ろにあった森はすべて焼かれ荒地になっている。
辺りには焼け焦げた臭いが充満している。

「サンダーボルト!!」
七海の撃ったサンダーボルトが仮面の魔道師に命中したが何とも無かったように歩いてきている。

「七海下がれ!  ウォーターボール!」

智弘が水魔法を撃ち込んだ。

チュドーーーーン!

命中した瞬間、とんでもない爆発を起こした。
水蒸気爆発だ。
魔道師は後方にぶっ飛び倒れたがすぐに起き上がり。

「ウウ、痛い。痛い。 ファイヤーボール。燃えろ、燃えろ、燃やしつくせ!」

ファイヤーボールを連発してくる。

「七海、智弘、危ない!」

「危ないのは、お前だ!カレー屋! もっと下がれ」
サリムさんに注意されたが俺は下がる気はなかった。
まぐろ君を右手に中華鍋を左手に頭には両手鍋を被って万全の体制を整えている。

「ウォーターボール! ウォーターボール!」

七海が連続で呪文を唱える。
ウォーターボールが魔道師に命中するたびに爆発がおこる。
そうとう高温な状態なのだろう。

「ウ、ウ、ウ、苦しい」

「ウォーターボール」
「ウォーターボール」

七海と智弘がウォーターボールを連発する。
明らかにダメージが蓄積されている。
だるそうに魔道師は立ち上がるがそれでも魔法を唱えてくる。

「ファイヤーボール ファイヤーボール」

魔道師はファイヤーボールをまたも連発でしてくる。
その一発が七海に命中した。
着ている服や仮面が燃え七海の顔や体が露になる。


「スケルトン!いや、リッチだ!」
「リ、リ、リッチだったのか!」
「リッチか」
「リッチ!」

一呼吸おいてライムさんが七海に向けて魔法を唱えようとした。

「リザレク・・・・うっ、ブ」

俺はライムさんに飛びかかり口を塞いだ。

「止めてくれ。七海は俺たちの仲間だ。見れば分かるだろ。町を守るために戦っているんだよ!」

「カレー屋、リッチは討伐しないといけないんだよ!」
サリムさんが叫ぶ。

「今はあの魔道師のほうが先決だろ。それくらい分かるだろ!」

「く、く、苦しい。ヘルフレイム!・・・・・・・・その声は白田?」

なんだ? なぜ俺の名前を知っている?

「そこにいるのは白田か!  ファイヤーボール! 僕だよ、僕、ファイヤーボール」

「誰!お前は!」

「西原だよ、西原和也だよ。ファイヤーボール」

「やめろ西原、なぜこんな事をする!」

「止められないんだよ。 ファイヤーボール。 
 この仮面のせいだ。外すことはできないんだよ。周りにいるのは水原や黒木たちか。ファイヤーボール」

「冷静になれ。魔法を撃つのを止めろ」

「ダメなんだ、勝手に呪文を唱えてしまうんだ。ファイヤーボール。
 そこのリッチは七海さんなのか。生きていいたんだね。良かった。ファイヤーボール」

七海も智弘も攻撃をするのを止めた。

「お前たち、あいつの仲間か!」
サリムさんが俺たちに剣を向け怒鳴りつける。

「クラスメイトです」

「やっぱり、リッチも信用できない! ミリアに怪我させたのもお前たちの仕込みか!」

「ちょちょっと待ってください。そんな回りくどいことしませんよ。何のメリットがあるんですか」

「苦しい、苦しい、ファイヤーボール!」
西原は辺りかまわず魔法を唱える。

「やめろ西原!」

「もうダメだ、殺してくれ。まだ、人間であるうちに殺してくれ! ヘルフレイム! 
 あと少しでイフリートになってしまう。
 もうこれ以上、人殺しはしたくない。
 ファイヤーボール!友達と思うのなら殺してくれ。頼む!!」

「そんなこと出きるわけないだろう」

「友達だと思うなら殺してくれ。苦しいんだ。
 体も心も苦しいんだ。
 異世界にまで来て人に迷惑を掛けるだけなんて・・・・・ファイヤーボール!」

「西原、落ち着け。落ち着いて話そう」

「無理だ、水原。もう時間がないんだ。
 あと1分も掛からずにイフリートになってしまう。
 これ以上、恥の上塗りはしたくない。早く、早く殺してくれ。もう時間がないんだ。
 人間としての意識があるうちに死にたいんだ!頼む!!」

俺はサックブラッド・ナイフを呼び出した。

「頼む、頼む、早く、早く、殺してくれ。
 人間であるうちに。友達だと思うのなら、友達だと思うのなら!」



友達と思うのなら

友達と思うのなら

友達と思うのなら

俺の心の中に響き渡る。
多分、一生忘れることは出来ないだろう。


中華鍋を体の前に出し一歩一歩近寄る。
鍋に隠されているところは熱さは感じない。
が、それ以外の部分は熱い、熱い、ズボンから繊維が焼ける臭いがする。
10m、これ以上近寄れそうにない。
サックブラッド・ナイフをクラスメイトに投げつけた。
命中、そして、西原はバタリと倒れた。
さっきまでの西原の体から発せられていた炎は嘘のように消えた。

「すまない。助けることが出来なくて」

駆け寄り声を掛けより西原の体を起こす。
先ほどの炎が嘘のように冷たさを感じた。

「ありがとう。白田。人間で死ぬことが出来たよ」

西原は動くことはなくなった。

西原はどこにでもいる典型的な高校生だ。
良い意味でも悪い意味でも目立つことなく自己主張などせず、人の池に流されるどこにでもいる、どこにでもいる普通の高校生だった。

付けていた仮面は散り散りになり砂が飛ばされるように消えていった。
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