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第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!

開戦準備!

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二人が転移の間に入るとブラドー伯爵を中心に大魔王・フェネクシー、龍王・龍左衛門、ライキンが明るい声で話しをしていた。

「そうか、そうか! 女子おなごの兄は、なかなかの好青年じゃの~」

「フェネクシー! 碧さまは青年と言う年齢では無いぞ! ハハハハ!
 碧さまを殺そうとした我々を気持ち良く許してくださった。
 姫さまのように心の広い方であることは間違いない!」

「まぁ~良かったじゃねーか! お咎めなしでよ~! ハハハハハ!」
ライキンは大声で笑いながらフェネクシーの肩を2回叩いた。

「龍王よ、そなたの子息は碧さまたちと行動を共にしている。
 弟のように可愛がってもらっているそうだ」

「そ、そうか・・・・」
龍王だけは歯切れが悪かった。

「龍の世界には龍の掟があるとは思うが、そろそろ許してやるべきなのではないか?
 そなたの息子は姫様に抱きしめられ嫌がる素振りは何一つ見せなかった。
 本人は『もう終わったこと』と言っていたぞ」

「そうか・・・・そうなのか・・・・そうだな。確かに伯爵の言うとおりかもしれぬ」
と言うと龍王は天を仰いだ。

ライキンは部屋に入ってきたメアリーとカクタスに気がつくと

「お! メアリーじゃねーか! 茜は無事兄貴と再会出来たらしいぞ! 良かった!良かった!!」

両手で杖に体重を掛けながらも嬉しそうに声を上げた。
メアリーには嬉しそうなライキンの声が痛かった。
茜が念願かなって兄と再会できたのは嬉かったが諸手を上げて喜ぶ気持ちにはなれなかった。
どうしても下を向いてしまう自分がいた。

「メアリー様」

!!! ハッとして顔を上げるとブラドーの後に控えていた少女に目をやる。

「ソアラ!!!」

メアリーは大きな声をあげソアラの下に駆け寄ると力一杯、その小さい体を抱きしめた。

「ソアラ! 良かった! ずうっと心配していたのよ! あなたにもしもの事があったらどうしようかと・・・・」

「メアリー様! ご心配おかけしました」

「いいのよ!あなたが無事ならいいのよ!」

「碧さまに助けて頂きました。パーティーの少女に回復魔法を掛けて頂きました」

「そうだったの。それは良かったわ」

サキュバスの女王たるメアリーは魔王勇者の一件で多くの配下を失って以来、自分の部下のサキュバスをことのほか大切にしている。
すべてのサキュバスを自分の娘のように愛していた。


「良かったな、メアリー・・・・・・・・」
スケルシャールの声は悲しかった。


「スケルシャール! カクタスは生きておるぞ!!
 多分、ネギトロと一緒に行動をしていると思われる」

落ち込むスケルシャールにフェネクシーは声を掛けた。

「!!! 本当ですか! ご隠居様!! カクタスが生きていると言うのは!!」

「本当だ!」

ブラドーが詳細を話し始めた。

「碧さまのマジックバッグに捕らわれていたそうだ」

「マジックバッグにか! そんなバッグがあるのか?」

「名無しの女神から贈られた物の様だ」

「なるほど。それなら可能性があるな」

「そして碧さまがワイハルト皇帝に謁見したときネギトロとカクタスが皇帝アクアオーラと偽者の茜さまに奇襲を掛けたそうだ・・・・・」


「「「!!!!!!」」」

3人の長老がブラドーの言葉に驚いた!

「お! おい!ブラドーよ! それはワイハルトへ宣戦布告したのと同じではないか!」
「そ、そうじゃ! これはちとマズイ事になったぞ! 伯爵!」

「ワイハルトが碧さまを捕縛しようとしたとき、カクタスをバッグから解き放ったらしい。
 それでネギトロと一緒に姫様の偽者を成敗しようとしたようだ・・・・・・」
 
「あのバカ何やっているんだ!
 すまんな! 息子は茜の事になると自制が利かなくて。
 偽勇者の話を聞いていてもたってもいられなかったのだろう」

父親であるライキンは息子ネギトロの行動が手に取るように分かった。

「カクタスのバカ、何やっているんだ!」
とスケルシャールは罵ったが口元は笑っていた。

「長老の御三人はどうお考えなのでしょうか?」
すっかり明るくなったメアリーがソアラを後から抱きかかえながら問うた。

「そうじゃの~」
大魔王・フェネクシーは本来の姿であるナマケモノに似た悪魔の姿で禿げ上がった頭を撫でながら言った。

「う~~む」
龍王・龍左衛門は龍の姿で長い顎鬚を触りながら。

「う、うーーん」
先代獣王・ライキンは左手で杖を付きながら右手を眉間に当てた。

「三長老! どのみちリピン国に攻め込んだし、偽勇者に与する国なんだからヤッチまっても良いと思います」

「おい、スケルシャールよ! カクタスみたいに荒っぽいの~」
「そうじゃ! スケルシャールよ、急いではいかんぞ!」

「スケさんはカクサンが無事だったのでテンションが上がっているのですよ」
メアリーが言う。

「おいおい、スケさん。そんなことで一国に手を出してはいかんの~」

「と言う、ご隠居さまも口元が緩んでますよ」

スケルシャールの言葉にフェネクシーは慌てて右手で口元を隠した。
大魔王・フェネクシーもスケルシャールの無事が確認でき口元が緩んでいた。

「伯爵! 紅姫様はどういうお考えを」

龍王がブラドーに聞いた。

「宰相閣下は消極的でしたが姫様はやる気満々でした。
 今回の姫様の偽者の正体は」

ブラドーは一呼吸置いてフェネクシー、龍左衛門、ライキン、メアリー、スケルシャールの顔をゆっくり見ると

「邪神・アリーナ!」

「ア、アリーナ!」
「アリーナだと!」
「邪神か!」
「アリーナですって!!」
「アリーナか!!」

5人は様々の反応をしたが『アリーナ』と聞いた瞬間、和やかだった転移の間の空気は一転し不快なものに変わった。

ドン!

「兵を集めよ!!」
ライキンが怒りを込め杖で床をつくと大声で叫んだ。
その声は獣王を名乗っていたときのように威厳がある声だった。

「空からの奇襲をかけるぞ!!」
龍左衛門が吠える。

「ソアラ! 皆の者に非常招集をかけなさい!」
メアリーは命令を下した。

「ご隠居! 俺とカクタスで一番槍をつとめます!」
スケルシャールがフェネクシーに言う。

「待て! 待て! お主ら、ちょっと待つのじゃ! ブラドーよ! お主も止めるのじゃ!」

「フフフフ! フェネクシーよ!良いのではないか!
 今すぐに侵攻するしないはおいておいて姫様はやる気満々なのだから!
 宰相閣下の命令が下り次第に行動できるよう準備をしておくべきだ」

「おーー! ブラドーも分かるようになったじゃねーか!
 宰相も『何が起こるか分からないから準備を怠るな!』と言っていたろ」
ライキンが言った。

クリムゾン魔国の首脳たちは開戦の準備をすることになった。

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