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12章.真犯人を突き止める
04.
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「お前の力は私のものだ‼」
金龍が吠え、盛大に暴れ回るので、宮殿が崩壊するんじゃないかと心配になる。金龍は倒壊にはまるで構わず、飛び上がり、鋭い牙とかぎ爪を俺に向けて闇雲に振り下ろしてくる。それを避ける度、透明な羽衣がひらりひらりと空に漂い、光の盾のように俺を守る。
「クソっ、防御するな‼︎」
俺を捕まえ損ねた金龍がしびれを切らして爆音で吠え、崩れて落ちた水晶の塊をつかみ取ると、突然、その切っ先を自らの胸に向けて突き刺した。
「…エイトっ‼」
金龍の美しい鱗がひび割れ、突き刺さった水晶の周りから血が噴き出す。金龍は苦痛そうな声を上げるも、猛り狂ったまま尖った水晶をむしり取り、次々と自分に突き刺して咆哮を上げた。
「エイト、やめろ‼ 何してるんだ‼」
全身から血を滴らせて苦痛に顔を歪める金龍に駆け寄ると、金龍は狂ったような笑い声を上げて、鋭いかぎ爪で俺を捕まえ、握りしめた。それは奇妙な感覚だった。そこには金龍だけしかいないのに、攻撃する金龍とされる金龍、二つの残像が交互に見えた。
「…そうか、ハハハ。お前はエイトリアンを信じられると言ったな。だったらエイトリアンのために防御の力を手放せ。さもないと、このままエイトリアンを殺す」
金龍の目は、虹彩だけでなく、眼球全てが真っ赤に染まっていた。赤い目玉を血走らせて、俺を握りしめる手に力を込める。その赤く染まった目の中に、苦痛に呻くエイトリアンの姿が見えた。
赤目の金龍はエイトリアンであって、エイトリアンではない。
エイトリアンの中に、別の誰かがいる。
それはほとんど確信だった。
エイトリアンも側近獣人たちも怨念か死霊に取り憑かれて操られている。でも、その身体は本人たちのものだから、傷つけられて苦しむのは身体の持ち主だ。傷を負わされたエイトリアンが苦しんでいる。憑りついている奴は、痛くも痒くもないんだ。
「ハハハ、分かったようだな。私を受け入れろ。お前の力は私がもらい受ける。ラピスラズリの力で、今度こそ、ニンゲンを永遠に滅ぼす」
赤目を血走らせた金龍が、俺を握りしめたまま顔を近づけ、鋭い牙で思い切り俺を噛みしめて、…
「…絶対に、嫌だ‼」
光の盾に跳ね返された。
「うおおお、…っ‼」
反撃は想定になかったのか、弾けた光をまともに食らって、金龍は火傷したように身をよじらせて手を振り払い、俺は地面に叩きつけられた。床を転げて散乱している水晶の塊にぶつかる。すぐに身を起こすと、透明な衣が金色に染まっているのに気づいた。
もしかしたら、これはエイトの血なんだろうか。
そう思ったら、猛然と怒りが込み上げてきた。
「そうか、あくまでジョシュアに純潔を捧げるつもりか。だったら、こいつはもう用済みだ‼」
赤目の金龍が怒声を轟かせて全身をくねらせ、翼を広げて飛び上がると、自分の身体目がけて深紅の火をほとばしらせた。エイトリアンの痛ましい呻き声が聞こえた。
『…ラズリ。お前が呼んだらいつでも飛んでくるから』
皮肉屋なのに優しいエイトリアン。人間嫌いで弟想い。人間を憎み切れずに、俺に手を差し伸べてくれる、…
自分の足元から這い上がる怒りの感情を重ねた手のひらに溜めた。
金龍に向けることは出来ない。エイトリアンを傷つけずに、その中に宿っている奴を攻撃するには、…
狙いを定めて、溜めた力を一気に放出させた。
金龍が吠え、盛大に暴れ回るので、宮殿が崩壊するんじゃないかと心配になる。金龍は倒壊にはまるで構わず、飛び上がり、鋭い牙とかぎ爪を俺に向けて闇雲に振り下ろしてくる。それを避ける度、透明な羽衣がひらりひらりと空に漂い、光の盾のように俺を守る。
「クソっ、防御するな‼︎」
俺を捕まえ損ねた金龍がしびれを切らして爆音で吠え、崩れて落ちた水晶の塊をつかみ取ると、突然、その切っ先を自らの胸に向けて突き刺した。
「…エイトっ‼」
金龍の美しい鱗がひび割れ、突き刺さった水晶の周りから血が噴き出す。金龍は苦痛そうな声を上げるも、猛り狂ったまま尖った水晶をむしり取り、次々と自分に突き刺して咆哮を上げた。
「エイト、やめろ‼ 何してるんだ‼」
全身から血を滴らせて苦痛に顔を歪める金龍に駆け寄ると、金龍は狂ったような笑い声を上げて、鋭いかぎ爪で俺を捕まえ、握りしめた。それは奇妙な感覚だった。そこには金龍だけしかいないのに、攻撃する金龍とされる金龍、二つの残像が交互に見えた。
「…そうか、ハハハ。お前はエイトリアンを信じられると言ったな。だったらエイトリアンのために防御の力を手放せ。さもないと、このままエイトリアンを殺す」
金龍の目は、虹彩だけでなく、眼球全てが真っ赤に染まっていた。赤い目玉を血走らせて、俺を握りしめる手に力を込める。その赤く染まった目の中に、苦痛に呻くエイトリアンの姿が見えた。
赤目の金龍はエイトリアンであって、エイトリアンではない。
エイトリアンの中に、別の誰かがいる。
それはほとんど確信だった。
エイトリアンも側近獣人たちも怨念か死霊に取り憑かれて操られている。でも、その身体は本人たちのものだから、傷つけられて苦しむのは身体の持ち主だ。傷を負わされたエイトリアンが苦しんでいる。憑りついている奴は、痛くも痒くもないんだ。
「ハハハ、分かったようだな。私を受け入れろ。お前の力は私がもらい受ける。ラピスラズリの力で、今度こそ、ニンゲンを永遠に滅ぼす」
赤目を血走らせた金龍が、俺を握りしめたまま顔を近づけ、鋭い牙で思い切り俺を噛みしめて、…
「…絶対に、嫌だ‼」
光の盾に跳ね返された。
「うおおお、…っ‼」
反撃は想定になかったのか、弾けた光をまともに食らって、金龍は火傷したように身をよじらせて手を振り払い、俺は地面に叩きつけられた。床を転げて散乱している水晶の塊にぶつかる。すぐに身を起こすと、透明な衣が金色に染まっているのに気づいた。
もしかしたら、これはエイトの血なんだろうか。
そう思ったら、猛然と怒りが込み上げてきた。
「そうか、あくまでジョシュアに純潔を捧げるつもりか。だったら、こいつはもう用済みだ‼」
赤目の金龍が怒声を轟かせて全身をくねらせ、翼を広げて飛び上がると、自分の身体目がけて深紅の火をほとばしらせた。エイトリアンの痛ましい呻き声が聞こえた。
『…ラズリ。お前が呼んだらいつでも飛んでくるから』
皮肉屋なのに優しいエイトリアン。人間嫌いで弟想い。人間を憎み切れずに、俺に手を差し伸べてくれる、…
自分の足元から這い上がる怒りの感情を重ねた手のひらに溜めた。
金龍に向けることは出来ない。エイトリアンを傷つけずに、その中に宿っている奴を攻撃するには、…
狙いを定めて、溜めた力を一気に放出させた。
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