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12章.真犯人を突き止める
07.
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立ち上がった途端足元をすくわれ、もんどりうって祭壇の中に倒れ込んだ。
揺れが激しくて立っていられない。壊れた結晶の塊と共に祭壇を転がり落ちる。頭を抱えながら目を上げると、柱が倒れて、天井が崩れ落ち、激しい音を立てて床で砕け散るのが見えた。
ヤバい。宮殿ごと崩れる。
ここから抜け出さなきゃと焦るけれど、揺れてひび割れ、次々と砕け落ちていく宮殿の中では、動くこともままならない。
どうしよう。どうすれば。
焦燥感だけが込み上げる。
何とか身体を起こして前傾姿勢でバランスを取り、足を踏み出すと、今さっきまで居た祭壇の階段が轟音と共に崩れ落ちた。
ヤバい。
ほとんど転がりながら走る。着地した床が端から崩れ落ちていく。上から砕けた結晶の塊が降って来るのを避ける隙も無い。まだ残っている宮殿の床を祈るように踏んで次の足場に飛び移り、…
…着いた、と思った床は大きく揺れて崩れ、倒壊する宮殿と共に水奥に落ちた。
抗えない力に捕まって水底に飲み込まれる。
ごぼ、…
吐いた息が気泡になって水中に溶ける。
急速に息苦しくなっていくのを感じた。
アクアブルーの宮殿の周りは、巨大なシールドで囲まれて呼吸が守られていたのに、崩壊とともにシールドも消えてなくなってしまったようだった。
《…そうだ。ここは私が守ってきた。愚かなニンゲンどもが存在した忌まわしいイキナ国の跡地。二度と私欲にまみれたシデラン戦争のようなことを繰り返さぬよう、戒めに瑠璃色の花を掲げて、ずっと守ってきたのだ》
頭の中に、声が聞こえた。龍の声。
悲しみに暮れる闇龍の正体は、…
「…ジェームズ、王?」
イキナセナバナを探しにやってきたジェイの洞窟は、かつてシデラン戦争を起こしたイキナ国の跡地にある。怒りの炎でイキナ国を燃やし尽くした獣人国のジェームズ国王の魂は、そこに眠っていると言われていた。
《ラピスラズリは蘇ってはいけなかった。歴史は繰り返す。龍王とニンゲンが結ばれる時、デドフロンティアに悲劇が起こる。ジョシュアはお前を愛してはいけなかった》
ジェームズ王の怨念が悲しみの糸を放って俺を絡めとり、底へ底へと引きずっていく。
《王は、国のために己を捨てねばならぬ。ニンゲンは愚かな生き物だ。過ちを繰り返す。何度も繰り返す。認めてはならない。許してはならない。ジョシュアも知っていることだが、死森の土は毒されていない。毒を運んできたのはニンゲンだ。ニンゲンの貪欲な心が毒を生むのだ》
次第に朦朧とする意識の中で、ジェームズ王の声にトーニ爺さんの声が重なって聞こえた。
いつか、獣人国の温室にあるジョシュアの研究室に入ったことを思い出す。死森の土を持ち帰ったという研究室の中は、澄んでいた。圧倒的に澄み渡った、無菌状態の空間だった。
異種族が交流するということは、毒を飲むのと同じなのかもしれない。
俺は毒で、だからやっぱり、受け入れてはもらえないのかもしれない。
揺れが激しくて立っていられない。壊れた結晶の塊と共に祭壇を転がり落ちる。頭を抱えながら目を上げると、柱が倒れて、天井が崩れ落ち、激しい音を立てて床で砕け散るのが見えた。
ヤバい。宮殿ごと崩れる。
ここから抜け出さなきゃと焦るけれど、揺れてひび割れ、次々と砕け落ちていく宮殿の中では、動くこともままならない。
どうしよう。どうすれば。
焦燥感だけが込み上げる。
何とか身体を起こして前傾姿勢でバランスを取り、足を踏み出すと、今さっきまで居た祭壇の階段が轟音と共に崩れ落ちた。
ヤバい。
ほとんど転がりながら走る。着地した床が端から崩れ落ちていく。上から砕けた結晶の塊が降って来るのを避ける隙も無い。まだ残っている宮殿の床を祈るように踏んで次の足場に飛び移り、…
…着いた、と思った床は大きく揺れて崩れ、倒壊する宮殿と共に水奥に落ちた。
抗えない力に捕まって水底に飲み込まれる。
ごぼ、…
吐いた息が気泡になって水中に溶ける。
急速に息苦しくなっていくのを感じた。
アクアブルーの宮殿の周りは、巨大なシールドで囲まれて呼吸が守られていたのに、崩壊とともにシールドも消えてなくなってしまったようだった。
《…そうだ。ここは私が守ってきた。愚かなニンゲンどもが存在した忌まわしいイキナ国の跡地。二度と私欲にまみれたシデラン戦争のようなことを繰り返さぬよう、戒めに瑠璃色の花を掲げて、ずっと守ってきたのだ》
頭の中に、声が聞こえた。龍の声。
悲しみに暮れる闇龍の正体は、…
「…ジェームズ、王?」
イキナセナバナを探しにやってきたジェイの洞窟は、かつてシデラン戦争を起こしたイキナ国の跡地にある。怒りの炎でイキナ国を燃やし尽くした獣人国のジェームズ国王の魂は、そこに眠っていると言われていた。
《ラピスラズリは蘇ってはいけなかった。歴史は繰り返す。龍王とニンゲンが結ばれる時、デドフロンティアに悲劇が起こる。ジョシュアはお前を愛してはいけなかった》
ジェームズ王の怨念が悲しみの糸を放って俺を絡めとり、底へ底へと引きずっていく。
《王は、国のために己を捨てねばならぬ。ニンゲンは愚かな生き物だ。過ちを繰り返す。何度も繰り返す。認めてはならない。許してはならない。ジョシュアも知っていることだが、死森の土は毒されていない。毒を運んできたのはニンゲンだ。ニンゲンの貪欲な心が毒を生むのだ》
次第に朦朧とする意識の中で、ジェームズ王の声にトーニ爺さんの声が重なって聞こえた。
いつか、獣人国の温室にあるジョシュアの研究室に入ったことを思い出す。死森の土を持ち帰ったという研究室の中は、澄んでいた。圧倒的に澄み渡った、無菌状態の空間だった。
異種族が交流するということは、毒を飲むのと同じなのかもしれない。
俺は毒で、だからやっぱり、受け入れてはもらえないのかもしれない。
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