白き狼の寵愛【完結】

remo

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Ⅲ.ユラの章【蜜月】

01.

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「食え」

白き狼に攫われて、洞穴の居城に囲われてから、始めはひたすら睦び合うだけだったのが、次第に狼が甲斐甲斐しくユラの世話を焼き始めた。

「ほら、お前は痩せすぎだ」

ユラを膝の上に抱えて、湯気のたつお椀から白粥を一匙すくい、ユラの口元に持ってくる。

最初は恐怖と混乱で食事どころではなく、とても口を開けられずにいたが、白き人狼は容赦なくユラの顎をつかみ、口移しに粥を長い舌でねじ込んできた。

食べるしかない。

ぱくっとスプーンを口に入れると、

「…うん」

狼は満足そうにユラの頭を撫でた。

人狼が粥を作れるなんて知らなかった。

ハイイロは残虐な殺戮者で、その暮らしぶりは謎に包まれている。森の奥に生息していることは知られていたが、こんな風に洞穴を強固な居城に作り替えて、火や水や食器や布を使いこなす様は、人間より器用に見える。毛におおわれ獣然とした姿から野蛮に見えるが、恐らく彼らは人間より頭が良く、はるかに高度な文明を築き上げているようだった。

「お前は寒がりだからな」

ユラは今、ひどく肌触りの良い衣服を着せられているが、大柄な狼が終始そばに張り付いている。彼はとても温かい。

「…あの。狼、さんは、食べないんですか」

お椀の白粥を丁寧にすくいながら一匙ずつユラに食べさせ、そのたび頭を撫でてくる狼は、いかんせん距離が近い。終始見つめられて居たたまれなくなってくる。何しろユラは誰かと食事を共にしたことがない。

「ああ、…うん」

少し当惑したように間をおいて、狼は後ろからユラの口元を舐めた。

長い舌先で唇をくすぐられ、思わず甘い吐息を漏らすと、その隙間から舌が押し入ってきた。未だ縮こまる舌を誘い出され、なぞられ、絡め取られ、吸われて、弄ばれる。

「ふ、…ん、……んん、…っ」

官能が立ち昇ってきて、そんな自分に困惑する。
口づけなど、知る由もなかったのに、狼の熱に浮かされるまま、口を開け、舌を絡ませ、甘い快楽を享受する。

「俺は、お前を食いたい」

後ろから首筋を舐められ、甘い疼きにユラはぴくりと震えた。

言葉通り、人狼は人間を喰らう。
彼らは肉食で、森に棲む小動物を狩って食料としているらしいが、人肉も食す。ただ、人間を襲うのは食用というより娯楽に近いらしい。

余計なことを言ったかも。

考えなしの己の発言をユラは悔やんだ。

自分がここに連れて来られたのは存分に犯して食い殺すため。満月の夜明け、帝都には多くの残虐な遺体が転がっていると聞く。この白き狼も殺すまでの時間を楽しんでいるだけで、どんなに優しく開かれようと、甘い快感だけを教え込まれようと、甲斐甲斐しく世話を焼かれようと、辿り着く先は一つだ。
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