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「佐倉っ‼ ちょっと来いっ」
鬼上司、高野チーフの低音ボイスがフロアに響き渡る。
キリリと晴れた平日朝9時。
玩具メーカー(株)トイ・プードル本社ビル3階。
営業3課。この春おなじみの光景。
「また、佐倉さん」
「かわいそうに」
「でも、ちょっと、…」
「「いいよね~~~っっ」」
いやいや、皆さん。
よーく考えてみて下さい。
「お前っ、この報告書はなんだ⁉ 数値は違ってるわ、グラフは切れてるわ、所見は意味不明だわ」
毎朝毎朝、やたら怖い上司にガミガミ怒られたいですか?
「それに、昨日お前が回った店舗からクレームが入ってる。朝イチで謝りに行くから準備しろ!」
爽やかな朝、鬼と2人で地獄のドライブに繰り出したいですか?
「分かったか、佐倉⁉ 返事はっ?」
答えは絶対、
「NO―――っ‼︎」
でしょ。
バシっ
すかさず頭に平手が飛んできた。…痛いし。
恨みがましく見上げると、有無を言わさぬ迫力で睨み返された。…怖いし。
「返事ははい、だ‼」
「はーいっっ」
やけくそに叫ぶと、鬼上司が口角をもたげて嫌味に鼻で笑った。
「きゃあ、笑ったわー」
「今日もご機嫌ね」
いやいや、皆さん。
よーく見てみて下さい。
あれは裏社会のボスがゴミ溜めのゴミを見る時の目ですよ。
「地獄に落ちろ――、白黒パンダ‼ 毎日毎日ネチネチ、ネチネチ、っ」
私。佐倉ここ。24歳。
トイ・プードル勤務3年目。
2年間お客様相談センターでメンタルを鍛え、ここからが勝負って時に、
鬼の高野がいる営業3課に配属され、毎日いびられまくってやさぐれてます。
「まあまあ、ここちゃん」
自席で呪いの言葉を吐いていたら、隣席のまりな先輩がなだめてくれた。
「いいじゃない、高野チーフ。仕事は出来るし、面倒見いいし、大人で優しくてかっこよくて、社内人気NO.1の究極イケメン、…」
「や、先輩。いくら先輩でもさすがにそれは目ぇ腐ってマスって。優しい? かっこいい⁇ ただただ怖いって言うか、極悪パンダって言うか、…」
まりな先輩は、仲良くしてくれる部署の先輩。
優しいし、可愛いし、話しやすいし、オシャレだし、大好き。
「もう、ここちゃんたら。はい、飴あげる」
まりな先輩がちょっと吹き出しながら、いちごキャンディーを差し出してくれた。
この優しさ! いちごセレクト! さすがの人となり!
「ありがとう! 先輩、大好きっ‼」
ありがたく受け取ってまりな先輩に抱きつくと、向かいの席から、
「安っすいオンナだな、佐倉」
なにかと嫌味なシュート先輩の突っ込みが入る。
シュート先輩は私より1年先輩なだけなのに、
偉そうでデリカシーがなくて鬼チーフをリスペクトしているパンダ仲間。
「…コパンダめ」
「なんだよ、パンダって」
そして耳ざとくてなにかと面倒くさいシュート先輩。
だけどまあ、そこはよくぞ聞いてくれました!
「ふっふっふ、白黒パンダ。またの名を極悪パンダ」
右人差し指を立てて特別にシュート先輩にレクチャーして差し上げる。
「高野チーフ、いっつも白黒な格好してるでしょ? ただでさえ表情硬くて華がないのに、冗談通じないし、すぐ怒るし、朝からいちいちうるさいし、…」
「…あ。ここちゃん」
私の人差し指をそっとつかむまりな先輩。
そこはすかさず握り返す。
華奢な指先。細い指が際立つリング。艶やかなネイル。
もうこんな可愛い大人女子います⁇
「あれは絶対彼女に逃げられて、だからいっつも機嫌悪くて、白黒の格好して、センスのなさをカバーし、…」
ベシっ
後ろから書類で思いっきりはたかれた。
「パンダで悪かったな、佐倉ここ」
振り向かなくてもわかったけど、一応振り向いてみると、背後にはやっぱり極悪パンダが仁王立ち。
「あ、…いえ、全然」
愛想笑いを浮かべてみるも、まるで虚しく腕をつかまれて連行された。
「さっさと歩け! ぐずぐずするな!」
パンダって結構どう猛なんですね。
「…あいつ、なんであんなにバカなのかな」
「でもチーフ、めちゃくちゃ可愛がってるよね」
鬼上司、高野チーフの低音ボイスがフロアに響き渡る。
キリリと晴れた平日朝9時。
玩具メーカー(株)トイ・プードル本社ビル3階。
営業3課。この春おなじみの光景。
「また、佐倉さん」
「かわいそうに」
「でも、ちょっと、…」
「「いいよね~~~っっ」」
いやいや、皆さん。
よーく考えてみて下さい。
「お前っ、この報告書はなんだ⁉ 数値は違ってるわ、グラフは切れてるわ、所見は意味不明だわ」
毎朝毎朝、やたら怖い上司にガミガミ怒られたいですか?
「それに、昨日お前が回った店舗からクレームが入ってる。朝イチで謝りに行くから準備しろ!」
爽やかな朝、鬼と2人で地獄のドライブに繰り出したいですか?
「分かったか、佐倉⁉ 返事はっ?」
答えは絶対、
「NO―――っ‼︎」
でしょ。
バシっ
すかさず頭に平手が飛んできた。…痛いし。
恨みがましく見上げると、有無を言わさぬ迫力で睨み返された。…怖いし。
「返事ははい、だ‼」
「はーいっっ」
やけくそに叫ぶと、鬼上司が口角をもたげて嫌味に鼻で笑った。
「きゃあ、笑ったわー」
「今日もご機嫌ね」
いやいや、皆さん。
よーく見てみて下さい。
あれは裏社会のボスがゴミ溜めのゴミを見る時の目ですよ。
「地獄に落ちろ――、白黒パンダ‼ 毎日毎日ネチネチ、ネチネチ、っ」
私。佐倉ここ。24歳。
トイ・プードル勤務3年目。
2年間お客様相談センターでメンタルを鍛え、ここからが勝負って時に、
鬼の高野がいる営業3課に配属され、毎日いびられまくってやさぐれてます。
「まあまあ、ここちゃん」
自席で呪いの言葉を吐いていたら、隣席のまりな先輩がなだめてくれた。
「いいじゃない、高野チーフ。仕事は出来るし、面倒見いいし、大人で優しくてかっこよくて、社内人気NO.1の究極イケメン、…」
「や、先輩。いくら先輩でもさすがにそれは目ぇ腐ってマスって。優しい? かっこいい⁇ ただただ怖いって言うか、極悪パンダって言うか、…」
まりな先輩は、仲良くしてくれる部署の先輩。
優しいし、可愛いし、話しやすいし、オシャレだし、大好き。
「もう、ここちゃんたら。はい、飴あげる」
まりな先輩がちょっと吹き出しながら、いちごキャンディーを差し出してくれた。
この優しさ! いちごセレクト! さすがの人となり!
「ありがとう! 先輩、大好きっ‼」
ありがたく受け取ってまりな先輩に抱きつくと、向かいの席から、
「安っすいオンナだな、佐倉」
なにかと嫌味なシュート先輩の突っ込みが入る。
シュート先輩は私より1年先輩なだけなのに、
偉そうでデリカシーがなくて鬼チーフをリスペクトしているパンダ仲間。
「…コパンダめ」
「なんだよ、パンダって」
そして耳ざとくてなにかと面倒くさいシュート先輩。
だけどまあ、そこはよくぞ聞いてくれました!
「ふっふっふ、白黒パンダ。またの名を極悪パンダ」
右人差し指を立てて特別にシュート先輩にレクチャーして差し上げる。
「高野チーフ、いっつも白黒な格好してるでしょ? ただでさえ表情硬くて華がないのに、冗談通じないし、すぐ怒るし、朝からいちいちうるさいし、…」
「…あ。ここちゃん」
私の人差し指をそっとつかむまりな先輩。
そこはすかさず握り返す。
華奢な指先。細い指が際立つリング。艶やかなネイル。
もうこんな可愛い大人女子います⁇
「あれは絶対彼女に逃げられて、だからいっつも機嫌悪くて、白黒の格好して、センスのなさをカバーし、…」
ベシっ
後ろから書類で思いっきりはたかれた。
「パンダで悪かったな、佐倉ここ」
振り向かなくてもわかったけど、一応振り向いてみると、背後にはやっぱり極悪パンダが仁王立ち。
「あ、…いえ、全然」
愛想笑いを浮かべてみるも、まるで虚しく腕をつかまれて連行された。
「さっさと歩け! ぐずぐずするな!」
パンダって結構どう猛なんですね。
「…あいつ、なんであんなにバカなのかな」
「でもチーフ、めちゃくちゃ可愛がってるよね」
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