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「おい、佐倉! リトルチャイルドの三谷さんから電話あったぞ」
「わ―――っ、すみませんっ‼ すぐ連絡します‼」
トイレで突然舞い降りた過去の恋に浸っている場合ではなかった。
午後イチで打ち合わせだった。
自席に戻ってとりあえず三谷さんに連絡を入れようとしたら、机上に積んだ書類の山が崩れて盛大に床にばらまいてしまった。
「大丈夫? ここちゃん」
「鈍臭ぇな、佐倉」
シュート先輩の余計な一言をスルーして、まりな先輩がすかさず書類を拾い集めてくれる。
「…すみません。…っ、…」
慌ててかがみこんで急いで書類を拾ったら、紙で指を切った。
動揺が隠し切れない。
「佐倉。ちょっと来い!」
高野チーフに呼びつけられた。
「あ、…はい。でも、…」
「いいから、来い!」
打ち合わせあるのに。
パンダの説教聞いてる場合じゃないのに。
なんかもう泣きたい気分で高野チーフの元に行くと、額に手を押し当てられた。
「な、…っ⁉︎」
動揺が隠し切れない。
「打ち合わせは俺が行く。お前は午後休取るか、デスクワークでもしてろ」
「え、…」
動揺に動揺を重ねて言葉が出ない私の手を取ると、高野チーフが慣れた手つきで素早く指に絆創膏を貼ってくれた。
「死にそうな顔しやがって。その状態で運転したら死人が出る」
高野チーフは手にした書類で私の頭をはたくと、追い払うように手の甲を振って電話をかけ始めた。
「トイ・プードルの高野です。三谷さんお願い出来ますか? …」
「元気だしなよ、失敗は誰にでもあるって」
「…すみません。ありがとうございます」
まりな先輩が拾い集めた書類をきれいに束ねて置いておいてくれた。
自席に戻ったけど、ため息しか出ない。
何やってんの、私。もう3年目なのに迷惑かけっぱなし。
自分が情けなくて涙も出ない。
「そういえば、トイレ、大丈夫だった? 総務からドアノブ交換のお知らせが来てたね」
「あ、…そうなん、ですね」
知らなかったよ。
そうか。それで誰もいなかったのか。
メールの受信履歴を見ると、確かに総務からのお知らせが来ている。
【重要】本日:3階女子トイレ使用禁止のお知らせ
…こんなの来てたか?
既読になっているけど、見た覚えがない。
朝バタバタしてたから、見逃したのかな。
『なんか、…いじめられてる?』
ふと千晃くんの言葉がよみがえる。
いや。…いやいやいや。
「はい、ここちゃん。飴あげる」
まりな先輩が机にレモンキャンディを載せてくれた。
天使! 甘酸っぱい! レモンセレクト!
「先輩大好き~~~っ」
まりな先輩に抱きつくと、
「じゃあ俺は目覚ましブラックガムをやる」
向かい席のシュート先輩から何かが飛んできて、私の頭にこつんと当たった。
「…どうも」
「おい、佐倉。態度違い過ぎるだろ」
…みんな優しい。
ちゃんとしよう。
せめて自分の仕事くらいしっかりやろう。
もうみんなに迷惑かけないように。
高野チーフが貼ってくれた絆創膏を握りしめた。
「わ―――っ、すみませんっ‼ すぐ連絡します‼」
トイレで突然舞い降りた過去の恋に浸っている場合ではなかった。
午後イチで打ち合わせだった。
自席に戻ってとりあえず三谷さんに連絡を入れようとしたら、机上に積んだ書類の山が崩れて盛大に床にばらまいてしまった。
「大丈夫? ここちゃん」
「鈍臭ぇな、佐倉」
シュート先輩の余計な一言をスルーして、まりな先輩がすかさず書類を拾い集めてくれる。
「…すみません。…っ、…」
慌ててかがみこんで急いで書類を拾ったら、紙で指を切った。
動揺が隠し切れない。
「佐倉。ちょっと来い!」
高野チーフに呼びつけられた。
「あ、…はい。でも、…」
「いいから、来い!」
打ち合わせあるのに。
パンダの説教聞いてる場合じゃないのに。
なんかもう泣きたい気分で高野チーフの元に行くと、額に手を押し当てられた。
「な、…っ⁉︎」
動揺が隠し切れない。
「打ち合わせは俺が行く。お前は午後休取るか、デスクワークでもしてろ」
「え、…」
動揺に動揺を重ねて言葉が出ない私の手を取ると、高野チーフが慣れた手つきで素早く指に絆創膏を貼ってくれた。
「死にそうな顔しやがって。その状態で運転したら死人が出る」
高野チーフは手にした書類で私の頭をはたくと、追い払うように手の甲を振って電話をかけ始めた。
「トイ・プードルの高野です。三谷さんお願い出来ますか? …」
「元気だしなよ、失敗は誰にでもあるって」
「…すみません。ありがとうございます」
まりな先輩が拾い集めた書類をきれいに束ねて置いておいてくれた。
自席に戻ったけど、ため息しか出ない。
何やってんの、私。もう3年目なのに迷惑かけっぱなし。
自分が情けなくて涙も出ない。
「そういえば、トイレ、大丈夫だった? 総務からドアノブ交換のお知らせが来てたね」
「あ、…そうなん、ですね」
知らなかったよ。
そうか。それで誰もいなかったのか。
メールの受信履歴を見ると、確かに総務からのお知らせが来ている。
【重要】本日:3階女子トイレ使用禁止のお知らせ
…こんなの来てたか?
既読になっているけど、見た覚えがない。
朝バタバタしてたから、見逃したのかな。
『なんか、…いじめられてる?』
ふと千晃くんの言葉がよみがえる。
いや。…いやいやいや。
「はい、ここちゃん。飴あげる」
まりな先輩が机にレモンキャンディを載せてくれた。
天使! 甘酸っぱい! レモンセレクト!
「先輩大好き~~~っ」
まりな先輩に抱きつくと、
「じゃあ俺は目覚ましブラックガムをやる」
向かい席のシュート先輩から何かが飛んできて、私の頭にこつんと当たった。
「…どうも」
「おい、佐倉。態度違い過ぎるだろ」
…みんな優しい。
ちゃんとしよう。
せめて自分の仕事くらいしっかりやろう。
もうみんなに迷惑かけないように。
高野チーフが貼ってくれた絆創膏を握りしめた。
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