Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

blue.8

頭に何かがコツンとぶつかって、
気が付くと、広報課の森先輩がエナジードリンクをデスクに置いて去って行くところだった。

「あ、…どうもありがとうございます」

後姿にお礼を言うと、片手をあげてそのまま歩いていく。

広報課は、課長と橙子さんと森先輩と派遣の木下さん、そして私の5人なんだけど。
森先輩はひたすらパソコンに向かっていてほとんど口を利かない。
好奇心に負けてちょっとくすぐってみたけど、「うへ」の一言もない。

でも。
本当は周りをよく見ていて、優しくて気が利く。

森先輩、ありがとうございます。

エナジードリンクを有難く頂いてから、また黙々と打ち込んだ。
資料を何回も読んで何とかそれらしくまとめられた時には、もうフロアにはほとんど人が残っていなかった。

ビルを出ると外は真っ暗で、朝、門扉をくぐった時から数えると12時間どころか18時間くらい会社にいたことになるから、

「長かったな」

ですよね！

って。

「奏くん！」

門扉の柱にもたれて、奏くんが立っていた。

「ど、…どうし、…」

奏くんの天然ボイスは無駄に心拍数を上げるから突然現れないで欲しい。

「とりあえず、はい」

奏くんは袋から湿布を取り出すと、私を横抱きにして植え込みを囲う縁石に腰かけさせた。
そのまま私の片足をつかんでパンプスを脱がせる。

「ちょ、…っ！」

奏くんの滑らかな指が私の足先に触れて激しく動揺する。

なんか艶めかしくてくすぐったくて、どうにも動けない。
全く関係ないのに息を止めてしまう。

「これ、破ったら怒るよな？」

ちょっといたずらっぽい目をしてストッキングをつまみながら私を見上げる奏くんは全然余裕なのに、私は彼をガン見したまま1ミリも動けない。

奏くんはそんな私を鼻で笑って、ストッキングの上から湿布を貼りつけ、包帯を巻く。

とたんに足首の痛みが嘘みたいに引いていき、そんな自分にまた動揺する。

やっぱり足捻ってたんだ。
それで結構痛かったんだ。

奏くん、よく気づいたな…