Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「歩けなかったら、おぶってやるけど」

全く平静な顔をして奏くんがしらっと私をのぞき込む。

「ぜっ、…」

奏くん。こんな人だっけ。
こんなことさらっとしちゃう人だっけ。

「全っ然、大丈夫ですっ」

いや。そうかもしれない。
彼女みたいな人が一億人くらいいたし。
何気ないけどみんなに優しかったし。

「じゃあ、ごはん。行くか」

奏くんが私の手をつかんで植え込みから立ち上がらせる。
足に体重がかかっても全然痛くない。すごい。

「本宮、なんか食べたいものある?」

奏くんの手が。
私の手をつかんだままゆっくり導いていく。
多分私の足に気を遣って歩調を合わせてくれている。

繋いだ手から奏くんの体温が伝わる。
滑らかな肌。長い指。硬い関節。

風に揺れる髪。ざわめき出す街路樹。
浮かれた春の陽気。湿った夜の匂い。

記憶にある制服姿じゃなくて。
スーツ姿の奏くんは知らない男の人みたいだった。

「…ラーメン!」

沈黙に耐えられなくて、慌てて叫んだ。

奏くんは一瞬大きく目を見開いてから、無邪気な子どものような笑顔を見せた。

「うん。俺も」

奏くんが繋いだ手に力を込めて。

すごく優しい目をして私を見るから、
もう全然痛くないのに、足に力が入らなくなって転びそうになって、
すがるように奏くんの手を握り返してしまった。
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