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blue.9
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「歩けなかったら、おぶってやるけど」
全く平静な顔をして奏くんがしらっと私をのぞき込む。
「ぜっ、…」
奏くん。こんな人だっけ。
こんなことさらっとしちゃう人だっけ。
「全っ然、大丈夫ですっ」
いや。そうかもしれない。
彼女みたいな人が一億人くらいいたし。
何気ないけどみんなに優しかったし。
「じゃあ、ごはん。行くか」
奏くんが私の手をつかんで植え込みから立ち上がらせる。
足に体重がかかっても全然痛くない。すごい。
「本宮、なんか食べたいものある?」
奏くんの手が。
私の手をつかんだままゆっくり導いていく。
多分私の足に気を遣って歩調を合わせてくれている。
繋いだ手から奏くんの体温が伝わる。
滑らかな肌。長い指。硬い関節。
風に揺れる髪。ざわめき出す街路樹。
浮かれた春の陽気。湿った夜の匂い。
記憶にある制服姿じゃなくて。
スーツ姿の奏くんは知らない男の人みたいだった。
「…ラーメン!」
沈黙に耐えられなくて、慌てて叫んだ。
奏くんは一瞬大きく目を見開いてから、無邪気な子どものような笑顔を見せた。
「うん。俺も」
奏くんが繋いだ手に力を込めて。
すごく優しい目をして私を見るから、
もう全然痛くないのに、足に力が入らなくなって転びそうになって、
すがるように奏くんの手を握り返してしまった。
全く平静な顔をして奏くんがしらっと私をのぞき込む。
「ぜっ、…」
奏くん。こんな人だっけ。
こんなことさらっとしちゃう人だっけ。
「全っ然、大丈夫ですっ」
いや。そうかもしれない。
彼女みたいな人が一億人くらいいたし。
何気ないけどみんなに優しかったし。
「じゃあ、ごはん。行くか」
奏くんが私の手をつかんで植え込みから立ち上がらせる。
足に体重がかかっても全然痛くない。すごい。
「本宮、なんか食べたいものある?」
奏くんの手が。
私の手をつかんだままゆっくり導いていく。
多分私の足に気を遣って歩調を合わせてくれている。
繋いだ手から奏くんの体温が伝わる。
滑らかな肌。長い指。硬い関節。
風に揺れる髪。ざわめき出す街路樹。
浮かれた春の陽気。湿った夜の匂い。
記憶にある制服姿じゃなくて。
スーツ姿の奏くんは知らない男の人みたいだった。
「…ラーメン!」
沈黙に耐えられなくて、慌てて叫んだ。
奏くんは一瞬大きく目を見開いてから、無邪気な子どものような笑顔を見せた。
「うん。俺も」
奏くんが繋いだ手に力を込めて。
すごく優しい目をして私を見るから、
もう全然痛くないのに、足に力が入らなくなって転びそうになって、
すがるように奏くんの手を握り返してしまった。
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