Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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麻雪さんが今日は仕事をお休みするというので、和泉さんと二人で出社することになった。

風薫る五月。青々とした新緑。
晴れ渡る空。清々しい朝の街。

同じベッドで寝て、同じ朝ご飯を食べて、同じ家から一緒に出勤。
なんかこれ、新婚さんみたいじゃないですか―――?

麻雪さんには申し訳ないけど、本当に申し訳ないけど。

ちょっと浮かれ気分で歩いていたら、足の長さが違い過ぎて、和泉さんに置いて行かれてしまった。

急いで追いかける私を待ちながら、和泉さんが優しい笑みを浮かべて、

「…つなぐ?」

目の前にその大きな手を差し出した。

「え、…」

これは。アウトですか、セーフですか。
悪魔の誘惑ですか―――!?

「のいは歩くの遅いからな。迷子になりそうだ」

私が動揺に動揺を重ねている間に、和泉さんがさっさと私の手を取る。

「…璃乙と一緒だ」

血圧が急ピッチで跳ね上がり、一気に下降した。
あ、…そういうこと。

そうか、ベッドに入れてくれたのも、璃乙くんと一緒の扱いってことか。
それならわかる、と妙に納得してへこんだ。

「今朝の電話、…」
「え?」
「…いや。何でもない」

何か言いかけた和泉さんが黙ってしまったので、意識がつながれた手のひらにスライドする。

大きい手。温かい手。
私の頭を優しく撫でて。
私を包んでくれる手。

節が骨張っていて、大人の男の人って感じる。
この手でどんな風に麻雪さんのこと、…

うおー、そこは考えたらダメなとこ!

意識を切り替えるべく、

「璃乙くん、すごく大人びてますよね」

へらっとお子さまを誉めてみると、

「…俺のせいだ」

和泉さんは硬い口調で自分を責めるように目を伏せた。

え、なんで? 私、誉めたよね?
なんか地雷踏んだっぽい!?

「俺は、…ダメだな」

しかも和泉さんが反省し出した―――っ

「お前には、幸せになって欲しいと思っているのに」

和泉さんが私とつないだ手に力を込めた。

「…離したくない」

え?

太陽の光が降り注ぐ朝の混雑した道で、見上げても和泉さんの表情が読めない。

心臓が狂ったように凄まじい速さで動き始めた。

今、なんて、…

「だから、…近づくなって言ったんだ」

自嘲気味につぶやいて私に向き直り、するりと私の髪をひと撫ですると、寂しそうな笑顔を見せた。

声が出ない。
心臓の音がうるさい。

それきり和泉さんは何も言わなかったけれど、つながれた温かくて大きな手は、私を離そうとはしなかった。
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