Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「いや、悪かったね、本宮さん。君はとても優秀だそうで、和泉が助かると言っていたよ」

…はあ。

午後の広報課に戻ると、マイデスクは技術研究所の所長に占拠されていた。

やや後退した生え際。白髪まじりのオールバック。
黒縁メガネ。無理やりスーツに押し込まれたお腹。

「濱名さんも、優秀な新人が入って心強いんじゃないかね、ん?」
「まあ、…そうですね」

私の椅子は明らかに橙子さんに向いていて、もはや所長は橙子さん見たさに来たとしか思えない。
森先輩が無言で投げた消しカスが、所長のクシの跡がついた頭頂部に貼り付いた。

「じゃあ本宮さん、研究所に戻ろうか」

だいぶ負荷をかけられていた私の椅子は、所長が立ち上がってひと安心な様子でクルクル回っているが、立ち上がった所長に肩を組まれた私は正直ぞっとした。

この人、ただの女好き!?

「所長、社員への不要な接触はセクハラです。手をどかして下さらないなら、本宮を研究所にお貸しすることはできません」

橙子さんのきっぱりとした声が聞こえ、所長が慌てて私の肩に回した手をどけた。

「ふん、女のくせに偉そうに」

けど、小声で言い捨てる声が聞こえたので、思わず所長の足を踏みつけ、

「すみません、足が長くて」

人生で一度は言ってみたいセリフBEST32位(のい調べ)を口にした。

「わ、…私は多忙なので先に失礼するっ」

所長は屈辱に顔を赤く染めると足音も荒く先にフロアを出て行った。

「やるじゃん、本宮」

橙子さんとハイタッチ。森先輩ともハイタッチ。

「嫌なことあったら、すぐ和泉さんに言うんだよ」
「はいっ」

元気に返事して研究所に向かったものの、和泉さんにどんな顔して会ったらいいんだろう、と思って研究室に入るのを躊躇してしまう。

中には、当然麻雪さんもいるわけで。

しかし午後の始業時間は過ぎている。突っ立っているわけにはいかない。
行け、のい。楽あれば苦あり苦あれば楽あり!

意を決してドアを開けようとしたら、内側からドアが開いて出てきた人とぶつかりそうになった。

って、こんなんばっか。

「…のい」
「和泉さん…」

研究室の中から出てきた和泉さんは私の姿を認めると、ふっと表情を和らげて

「遅いから、迎えに行こうかと思った」

屈みこんで私に目線を合わせると、大きくて温かい手で私の頭を撫でた。

それだけで、胸がいっぱいになる。
困らせるのに、好きが溢れそうになってしまう。
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