Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「あれは炭酸ガスじゃない、毒ガスの成分表なんだよ」

後ろから、嫌な笑いを含んだ声がした。ざらざらと癇に障る声。

「毒ガス…?」
「おい、…」

前方の男性が後方の男性をたしなめるように声をかけた。

「余計なことはしゃべるな」

えー、毒ガスって何!?
なんかすごく物騒な響きなんですけど。

「痛い目に遭いたくなかったら、預かったものを大人しく渡せ。いいな? 置いてあるところに案内しろ」
「…わかりました」

前方の男性に強引に話を戻されて、とりあえず頷いたけど、内心は焦りまくりだった。

えー、なんかわかんないけど、受け取ってないといけないっぽい。
もの? なんかもらった? もらってないよね?

証拠データを入れるんだから、USBメモリとかSDカードとか?
っていうか、あの電話の後奏くんに会ってないんだから、もらえるわけないじゃん。

「妙な真似はするなよ」

前方にいた男性が先頭に立ち、私の腕を後ろ手に押さえつけたもう一人の男性が何かを背中に押し付ける。

これって銃とか?

そう思ったら恐怖が舞い戻って来て膝が震えた。
銃なんてまともに見たこともないのに。
こんな初体験嫌だ―――――っ

書庫を出て階段で地上に上がる。
こんな時に限って、周りに誰もいない。

いや、そもそも人目につかないように書庫を選んだのか。

「あ、…でも、私が書庫に行ったこと麻雪さんが知ってるから、いなくなったら心配しますよね?」

ほら。外に出るなら誰かに言ってからにしなきゃ。

我ながら超良いこと思いついたと思ったのに、男性2人には嘲笑われただけだった。

「アイツが心配するわけないだろう」
「諜報員なのに」

その言葉は背中に押し当てられている銃らしきものよりも、冷たく背筋を凍らせた。

待って、待って。
え、ちょっと待って。

頭の理解が追い付かないのに身体を巡る血管だけがドクドクと騒ぎ出す。

何その聞きなれない単語。
諜報員って、…いわゆるスパイ?

ええ――っ、
聖女の裏の顔、バイオレンス過ぎるでしょう!?

研究所1階の裏口には警備員の配置がなく、男性たちは悠々とICカードをかざして誰にも見とがめられずに外に出た。

ちょっとー、うちの警備甘すぎじゃない!?
まさかの裏口ノーマーク!?

いや、ICカード持ってるって、この人たち職員なのか!?

混乱しているうちに駐車場についてしまい、

「乗れ」

乗ったら最後のような気がする黒っぽいバン押し込められた。
腕の拘束は解かれたけれど、ものすごくヤバい気がする。

「案内しろ」

運転席に男性が一人、後部座席の私の隣にもう一人。

どうしよう。奏くん、助けて!

無意識にポケットに入れた奏くんのハンカチを握りしめた。
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