Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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強く握りしめると、柔らかいハンカチの下で指先に何か硬いものが触れた。

あ。っと思ったけど、
そのことを、隣に座っている男性に気づかれないように平静を装った。

指先の感触だけで確かめる。
親指の爪より一回り大きいくらいの、ごくごく小型な何か。
取り出して確認することは出来ないけれど。

『搬送される時、奏くんがつかんでた』
『うわ言で名前を呼んでた』

これ、すごく大事なもののような気がする。
この人たちが探してるの、もしかして、これなんじゃ。

「預かったものは彼の病院の近くにある銀行の金庫に入れてあります」

金庫なんて借りたことないけど、銀行には貸金庫があるんだよね。

小型の何かの存在が奏くんとつながってる気がして、少しだけ勇気づけられた。

よし。
とにかく、適当なこと言ってるってバレないように時間を稼ごう。
それで、人がいるところで助けを求める!

車は私が言った通り静岡方面に向かって進んでいく。

この道、今朝も通った。

奏くん。
絶対切り抜けて会いに行くからね。
だから、早く目を覚ましてね。

高速道路は空いていて、晴れ渡った空がまぶしい。
山や森が音を立てて通り過ぎていく。

沈黙のドライブが続いて、少しだけこの状況に慣れ、

「あの、…毒ガスって、どういうことですか」

隣に座る男性に小声で話しかけてみた。

「あのゲーム会社は某国の対人兵器実験場だったってことさ」

退屈だったのか、意外にも律儀に返答してくれた。
けど、その内容が想定外すぎて、全くピンとこなかった。

つまり、どういうこと?

隣の男性を見ていると、

「余計なことを知ると、生きて帰れなくなるぞ」

運転席から低い声が飛んだので、慌てて口をつぐむことにした。

それはそうだ。
第一優先は生きて切り抜けることだもんね。

再び車内には重い沈黙が満ちて、そのままバンは滑るように高速を走った。

しかし、到着したところで策がない。

何の解決方法も思い浮かばないまま、遂には、奏くんが入院している病院の外観が見えてきた。

えーっと、どうしよう。
金庫、金庫、…

「あ、鍵!」

金庫を開けるには鍵がいるよね。

「鍵、なくしちゃったんですけど、どうすればいいでしょう?」
「……」

車内にげんなりした空気が立ちこめる。

けど、再発行してもらうには窓口に相談しなきゃだから、そこにチャンスがあるかも!

私のひらめきを見透かしたかのように、

「…お前、本当に金庫にあるんだろうな」

運転席から核心を突く質問がとんだ。ヤバい。

「ある、あります、本当です!」

わー、食い気味に頷き過ぎて、ものすごく胡散臭そうな顔された。

高速を降りるとあっという間に銀行に着いた。バンが指定駐車場に停まる。
また、前後を男性2人に挟まれながら銀行の入り口に向かって歩いた。

この体勢、ちょっと変じゃないかと思うのは私だけみたいで、特に誰にも不審がられずに銀行の自動ドアをくぐる。

どうやって助けを求めたらいいかな。

窓口に目を向けると、

あ…!

知ってる顔が見えて、信じられなくて何度も瞬いた。
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