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blue.61

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武邑裕理さん。

この前の合コンで会った奏くんのお友だちじゃん!
官公庁勤めのエリート感丸出しの爽やか好青年。
銀行員姿も似合う…

急に足を止めた私の背中を後ろから続いている男性が促すように押した瞬間、

「のい、伏せて!」

鋭い声が飛んで、訳も分からず頭を抱えてしゃがみ込むと、
四方八方から数名の人が一気に押し寄せて私たちめがけて飛び掛かってきた。

前後の男性たちは受け身をとって構え、飛び掛かってきた人たちともみくちゃになって転がり、

「のい、こっち!」

私は乱闘の中に伸ばされた力強い手に引き寄せられて抱え上げられた。

和泉さん!

どうしてここにいるのかわからないけど、
大きくて温かい頼れる和泉さんの腕の中。

「くそっ」「離せ!」

物々しい騒音と怒声が入り混じる中、パン、パン、という乾いた発砲音と硝煙の匂いが立ち込めた。

熱い…っ!!

と思ったのは、その直後で、

「のい!」

私を抱きかかえていた和泉さんが悲痛な声を上げて、急速に焼けるような強烈な痛みに襲われた。

身体の左側が熱い。痛い。助けて。助けて。

「のい、しっかりしろ!」

和泉さんの声がする。秋くんの声もする。
武邑さんの凛々しい横顔が目の端に映る。

慌ただしく行き交う人の姿も男性たちが大声でわめいている声も、
救急車のサイレンも穴のあいた天井も、
濁った膜の向こうの出来事みたいで現実感がなかった。

「これ、…」

痛みのない右半身を動かして、ずっと握りしめていた奏くんのハンカチをポケットから取り出した。

「ICレコーダーだ。奏くんのスマホと繋がってたんだ。これでお前の状況がわかった」

秋くんの声がして、ハンカチごと手を包まれた。

「よく頑張ったな」

その一言で安心して、痛みのあまり気が遠くなった。
視界が狭い。目の前が赤い。黒い斑点に覆いつくされる。

奏くん。ありがとう。
本当に奏くんとつながってた。

『どんな時でもお前のそばにいる』

私を守ってくれてありがとう。
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