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blue.62
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「いった~~~~~いっ!!」
左腕に強烈な痛みを感じて飛び起きると、目の前に超絶美形な顔が見えた。
…誰?
「ああ、…麻酔が切れたか」
白衣姿の美形な男性は医師らしく、てきぱきと私の左腕をひねくり回して事もなげに言い放った。
いや、痛いから、痛いから。
「わずかとはいえ銃弾がかすったからな。射創は感染の危険があるし、きちんと消毒しないと跡が残るぞ」
その魅惑的な美しい顔で言われると、もう全面的に反省するしかない。
すみませ―――ん、…
大人しく左腕をゆだねる。
白い天井、糊のきいたシーツ、規則正しく落ちる点滴。
消毒液の匂い、遠くの方から繰り返し聞こえる電子音。
どうやら病院のベッドの上で、診察を受けているところらしい。
目だけで周囲を見回して、視線を美形な男性医師に戻すと、胸元で『Dr.結城』のネームプレートが揺れていた。
「うん、経過は良好だ」
「…ありがとうございます」
イケメン医師に誉められてちょっと鼻の下が伸びたところで、
「のい? …大丈夫か」
ベッドの周りを囲んでいる白いレールカーテンが動いて和泉さんの顔がのぞいた。
「和泉さん!」
私を見つめる漆黒の瞳が心配の色に揺れている。
「大丈夫ですよ。2,3日で退院できそうです」
美形な結城医師が和泉さんに頷きかけた。
「…のい」
結城医師の診察が終わると、和泉さんが私の枕元にしゃがみ込み、
長い指でそっと私の頬に触れた。
「危険な目に遭わせてごめん」
私の存在を確かめるように、頬を撫でる。
いたわるように見つめる瞳がゆらゆら揺れている。
「無事でよかった」
切なげに目を細め、もう一方の手で私の頭を何度も何度も撫でてくれた。
「のい、…」
髪に指を滑らせ、耳をたどり、
額に瞼に鼻の頭に頬に和泉さんの熱い唇が触れた。
「どんなに大事か思い知った」
私の頭を抱え起こして、そっとその胸に抱きしめる。
大切に愛おしそうに唇を寄せて、頭に目尻に口づける。
「のい。…好きだよ」
吐息まじりの甘い声が耳に響く。
「好きだよ…」
和泉さんの心臓の音が聞こえる。
規則正しく力強く繰り返す。
大きくて温かい優しい胸の中。
安心出来て居心地がいい。
素直に嬉しくて、やっぱり切ない。
和泉さんのこと、すごく好きで。
すごく好きなのに。
あの柔らかくて甘い。
触れるだけの優しい優しいキスを思い出して胸が痛い。
左腕に強烈な痛みを感じて飛び起きると、目の前に超絶美形な顔が見えた。
…誰?
「ああ、…麻酔が切れたか」
白衣姿の美形な男性は医師らしく、てきぱきと私の左腕をひねくり回して事もなげに言い放った。
いや、痛いから、痛いから。
「わずかとはいえ銃弾がかすったからな。射創は感染の危険があるし、きちんと消毒しないと跡が残るぞ」
その魅惑的な美しい顔で言われると、もう全面的に反省するしかない。
すみませ―――ん、…
大人しく左腕をゆだねる。
白い天井、糊のきいたシーツ、規則正しく落ちる点滴。
消毒液の匂い、遠くの方から繰り返し聞こえる電子音。
どうやら病院のベッドの上で、診察を受けているところらしい。
目だけで周囲を見回して、視線を美形な男性医師に戻すと、胸元で『Dr.結城』のネームプレートが揺れていた。
「うん、経過は良好だ」
「…ありがとうございます」
イケメン医師に誉められてちょっと鼻の下が伸びたところで、
「のい? …大丈夫か」
ベッドの周りを囲んでいる白いレールカーテンが動いて和泉さんの顔がのぞいた。
「和泉さん!」
私を見つめる漆黒の瞳が心配の色に揺れている。
「大丈夫ですよ。2,3日で退院できそうです」
美形な結城医師が和泉さんに頷きかけた。
「…のい」
結城医師の診察が終わると、和泉さんが私の枕元にしゃがみ込み、
長い指でそっと私の頬に触れた。
「危険な目に遭わせてごめん」
私の存在を確かめるように、頬を撫でる。
いたわるように見つめる瞳がゆらゆら揺れている。
「無事でよかった」
切なげに目を細め、もう一方の手で私の頭を何度も何度も撫でてくれた。
「のい、…」
髪に指を滑らせ、耳をたどり、
額に瞼に鼻の頭に頬に和泉さんの熱い唇が触れた。
「どんなに大事か思い知った」
私の頭を抱え起こして、そっとその胸に抱きしめる。
大切に愛おしそうに唇を寄せて、頭に目尻に口づける。
「のい。…好きだよ」
吐息まじりの甘い声が耳に響く。
「好きだよ…」
和泉さんの心臓の音が聞こえる。
規則正しく力強く繰り返す。
大きくて温かい優しい胸の中。
安心出来て居心地がいい。
素直に嬉しくて、やっぱり切ない。
和泉さんのこと、すごく好きで。
すごく好きなのに。
あの柔らかくて甘い。
触れるだけの優しい優しいキスを思い出して胸が痛い。
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