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blue.73
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「じゃあな、忘れられるなよ」
意外と意地悪でやっぱり優しい結城医師に頭を撫でられて、翌日無事に退院した。
「のい。とりあえずうちにおいで」
和泉さんが車で迎えに来てくれて、手続きやら荷物やら全部済ませてくれた。
『簡単に男の部屋に入るなよ』
若干お父さんみたいな奏くんの言葉が脳裏をよぎったけど、
「璃乙が会いたがってる」
って聞いたら、やっぱり様子が気になって、そこは素直に頷いた。
病院を出る前に、奏くんに会いに行くと、
「患者安静のため、入室ご遠慮下さい」の札が貼ってあって足がすくんだ。
奏くん…っ
具合悪くなった!?
夜中に押しかけたから!?
私が愕然と立ちすくんでいる間に和泉さんがナースステーションに走ってくれて、看護師さんがやって来た。
「午前中、女性のお見舞い客が殺到してしまって、…まあ、分かりますけどね」
苦笑を浮かべて説明してくれた看護師さんは、病室に確認に行ってくれ、
「大丈夫みたいですよ」
入室許可をくれた。
…奏くん。
さすが彼女一億人の男。
でも、みんな奏くんが好きで奏くんが心配で奏くんに会いたいんだよね。
そう思うと、なんとも言えない気分で、なるべく静かに帰ろうと思って病室をのぞくと、
「カナデ、ダイスキ、ダイスキ、チュウ~~~~~!!」
めっちゃうるさいアメリアがいた。
「アメリア、安静――――っ」
思わず割り込むと、抜群のスタイルで上から見下ろされ、にっこり笑顔で撫でられた。
「Oh, so cute monkey !」
サルは国境を越えた。 ってモンキー違うから!
「青井、モテモテだな」
「…うるせえよ」
奏くんは和泉さんを見てふてくされたような感じだったけど、割と元気そうだったから安心した。
「カナデのフィアンセです。今後ともよろしくお願いします」
のは一瞬で、すぐさまギョッとした。
え!? フィアンセ!?
って、…許婚? 婚約者?
「へぇ…」
和泉さんが言い終わらないうちに、
「…違うから。アミィは、まあ、親戚みたいなもんで、…」
奏くんが口を挟んで、
「カナデに純潔捧げた。一生添い遂げる」
アメリアが言い切った。
…純潔。
「捧げてねえだろ!」
「いや、私の清らかな身も心もカナデが強引に、…」
「いいから、もう黙れ、お前は」
なんかじゃれてるアメリアと奏くんが遠く見えた。
許婚。婚約者。彼女一億人。
なんていうか、胸がチクチクするって言うか、…いや、知ってたけど。十分分かってたけど。
だけどさ。
忘れろとか言っちゃって。
簡単に入るなとか言っちゃって。
「絶対忘れないから、奏くんのバカ!」
気づいたら、口が勝手に動いて、
「お父さんのくせに!」
「…は?」
全然静かじゃない捨て台詞を吐いて帰ってきてしまった。
意外と意地悪でやっぱり優しい結城医師に頭を撫でられて、翌日無事に退院した。
「のい。とりあえずうちにおいで」
和泉さんが車で迎えに来てくれて、手続きやら荷物やら全部済ませてくれた。
『簡単に男の部屋に入るなよ』
若干お父さんみたいな奏くんの言葉が脳裏をよぎったけど、
「璃乙が会いたがってる」
って聞いたら、やっぱり様子が気になって、そこは素直に頷いた。
病院を出る前に、奏くんに会いに行くと、
「患者安静のため、入室ご遠慮下さい」の札が貼ってあって足がすくんだ。
奏くん…っ
具合悪くなった!?
夜中に押しかけたから!?
私が愕然と立ちすくんでいる間に和泉さんがナースステーションに走ってくれて、看護師さんがやって来た。
「午前中、女性のお見舞い客が殺到してしまって、…まあ、分かりますけどね」
苦笑を浮かべて説明してくれた看護師さんは、病室に確認に行ってくれ、
「大丈夫みたいですよ」
入室許可をくれた。
…奏くん。
さすが彼女一億人の男。
でも、みんな奏くんが好きで奏くんが心配で奏くんに会いたいんだよね。
そう思うと、なんとも言えない気分で、なるべく静かに帰ろうと思って病室をのぞくと、
「カナデ、ダイスキ、ダイスキ、チュウ~~~~~!!」
めっちゃうるさいアメリアがいた。
「アメリア、安静――――っ」
思わず割り込むと、抜群のスタイルで上から見下ろされ、にっこり笑顔で撫でられた。
「Oh, so cute monkey !」
サルは国境を越えた。 ってモンキー違うから!
「青井、モテモテだな」
「…うるせえよ」
奏くんは和泉さんを見てふてくされたような感じだったけど、割と元気そうだったから安心した。
「カナデのフィアンセです。今後ともよろしくお願いします」
のは一瞬で、すぐさまギョッとした。
え!? フィアンセ!?
って、…許婚? 婚約者?
「へぇ…」
和泉さんが言い終わらないうちに、
「…違うから。アミィは、まあ、親戚みたいなもんで、…」
奏くんが口を挟んで、
「カナデに純潔捧げた。一生添い遂げる」
アメリアが言い切った。
…純潔。
「捧げてねえだろ!」
「いや、私の清らかな身も心もカナデが強引に、…」
「いいから、もう黙れ、お前は」
なんかじゃれてるアメリアと奏くんが遠く見えた。
許婚。婚約者。彼女一億人。
なんていうか、胸がチクチクするって言うか、…いや、知ってたけど。十分分かってたけど。
だけどさ。
忘れろとか言っちゃって。
簡単に入るなとか言っちゃって。
「絶対忘れないから、奏くんのバカ!」
気づいたら、口が勝手に動いて、
「お父さんのくせに!」
「…は?」
全然静かじゃない捨て台詞を吐いて帰ってきてしまった。
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