75 / 124
blue.74
しおりを挟む
「のいは一途だな」
クールでスタイリッシュなデザインの、なんかカッコいい和泉さんの車の中で、脳内1人反省会を繰り広げていたら、和泉さんが運転席から頭を撫でてくれた。
のいのバカ。お父さんはないわ。
でもなんかこう、
むかむかとイライラとチクチクで我を忘れたというか。
奏くんの周りに女の子がいっぱいいるのはいつものことなのに。
「ずっと、…あおくんだよな」
「…え?」
和泉さんの声が少し寂し気で、その長い指が私の髪を一房絡めてするりと落ちた。
ちょっと待て、のい。
なんかすごく、ものすご―――く、勝手じゃなかろうか。
私、和泉さんのこと、…
「あの、あのっ! 私、和泉さんのこと好きです! 大好きです!」
言いながら自分が最低過ぎて悲しくなってきた。
それは嘘じゃないのに。
ホントにホントに好きなのに。
和泉さんの整った横顔が街の日差しを映して流れる。
「いいよ、分かってる」
和泉さんが片手ハンドルで私の頭を撫でた。
「…のいの、あおくんじゃなくてごめんな」
…和泉さん。
大きくて温かくて優しい手。
大人で頼れて守ってくれる。
…優しさが胸に痛い。
「でも、ずっと、のいが好きだから」
大好きな洋菓子屋さんのいずみちゃん。
ふわふわのマシュマロとさくさくのメレンゲでいつも私を笑顔にしてくれた。
いずみちゃんが本当に女の子だったら良かったのに。
何にも言えなくて、通り過ぎていく街並みにどこまでも胸が沈んだ。
「おサル、…老けたね」
ちょっと――――っ
それ、女子に言ってはいけないワード、堂々の第1位でしょう!!(のい調べ)
和泉さんのマンションに着くと、璃乙くんが安定の冷静さで出迎えてくれた。
「…元気そうじゃん」
その聡明な瞳に視線を合わせると、璃乙くんは一瞬瞳を潤ませて小さく頭を下げた。
「ママがごめんね」
「…璃乙くん」
なんかもうたまらなくなって、璃乙くんを力いっぱい抱きしめた。
この子の瞳は、どれだけ視たくないものを映してしまうんだろう。
母親が関わった事故の悲惨な映像なんて、発狂したくなるに決まってる。
「おサル、…」
璃乙くんが私の胸の中でもぞもぞして、
「ママより全然胸ないね」
言ったとたん、和泉さんが私から璃乙くんを引き剥がした。
ちょっと――――っ
それ、まさかの第2位でしょう!!
「璃乙。のいに触るの禁止」
「…ごめんね、イズミくん。先に触っちゃって」
ほんのり優越感をにじませて舌を出した璃乙くんを、和泉さんが無言ではたいていた。
璃乙。普通に元気じゃん!
クールでスタイリッシュなデザインの、なんかカッコいい和泉さんの車の中で、脳内1人反省会を繰り広げていたら、和泉さんが運転席から頭を撫でてくれた。
のいのバカ。お父さんはないわ。
でもなんかこう、
むかむかとイライラとチクチクで我を忘れたというか。
奏くんの周りに女の子がいっぱいいるのはいつものことなのに。
「ずっと、…あおくんだよな」
「…え?」
和泉さんの声が少し寂し気で、その長い指が私の髪を一房絡めてするりと落ちた。
ちょっと待て、のい。
なんかすごく、ものすご―――く、勝手じゃなかろうか。
私、和泉さんのこと、…
「あの、あのっ! 私、和泉さんのこと好きです! 大好きです!」
言いながら自分が最低過ぎて悲しくなってきた。
それは嘘じゃないのに。
ホントにホントに好きなのに。
和泉さんの整った横顔が街の日差しを映して流れる。
「いいよ、分かってる」
和泉さんが片手ハンドルで私の頭を撫でた。
「…のいの、あおくんじゃなくてごめんな」
…和泉さん。
大きくて温かくて優しい手。
大人で頼れて守ってくれる。
…優しさが胸に痛い。
「でも、ずっと、のいが好きだから」
大好きな洋菓子屋さんのいずみちゃん。
ふわふわのマシュマロとさくさくのメレンゲでいつも私を笑顔にしてくれた。
いずみちゃんが本当に女の子だったら良かったのに。
何にも言えなくて、通り過ぎていく街並みにどこまでも胸が沈んだ。
「おサル、…老けたね」
ちょっと――――っ
それ、女子に言ってはいけないワード、堂々の第1位でしょう!!(のい調べ)
和泉さんのマンションに着くと、璃乙くんが安定の冷静さで出迎えてくれた。
「…元気そうじゃん」
その聡明な瞳に視線を合わせると、璃乙くんは一瞬瞳を潤ませて小さく頭を下げた。
「ママがごめんね」
「…璃乙くん」
なんかもうたまらなくなって、璃乙くんを力いっぱい抱きしめた。
この子の瞳は、どれだけ視たくないものを映してしまうんだろう。
母親が関わった事故の悲惨な映像なんて、発狂したくなるに決まってる。
「おサル、…」
璃乙くんが私の胸の中でもぞもぞして、
「ママより全然胸ないね」
言ったとたん、和泉さんが私から璃乙くんを引き剥がした。
ちょっと――――っ
それ、まさかの第2位でしょう!!
「璃乙。のいに触るの禁止」
「…ごめんね、イズミくん。先に触っちゃって」
ほんのり優越感をにじませて舌を出した璃乙くんを、和泉さんが無言ではたいていた。
璃乙。普通に元気じゃん!
0
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる