Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「璃乙の頭に爆弾…っ!?」

あまりにも日常とかけ離れていて理解が追い付かない。

結城医師が璃乙くんの状態について奏くんに尋ねると、奏くんは静かに言葉を並べた。

「遠隔操作で起爆できるICチップ型の爆弾が脳に埋まってるらしい」

衝撃が強すぎて震える私を奏くんがベッドの上に座って後ろから抱きしめてくれた。

璃乙くんが予知映像を視たり錯乱状態になったりするのは、もしかしてその影響…? 

璃乙くんの毎日は、どれだけの恐怖にさらされているんだろう…

「外科手術で取り除こうと思うんだが、…」

結城医師が奏くんに冷静な顔を向ける。

「うん。ただ、不用意に触るとその瞬間に爆発する、って」

そんな。…そんなこと。
非人道的過ぎて吐き気がする。

そんなこと許されていいの!?

「詳しい経緯はわからないが、和泉が姿を消したのは、璃乙に埋め込まれた爆弾の存在を知らされて、協力を強制されたからだ。あの地下では某国の軍事組織が、日本では想像もつかないような対人兵器の実験を繰り返していた。地下施設にはVRの技術で幻覚のバリアが張られていて、誰も、近づくことはおろか、その存在にすら気づかなかった」

薄暗い地下の資料室や倉庫は、確かによくあるビルの地下だった。
東堂秘書も地下施設の存在はトップシークレットだって言ってた。

…漏らしてたけど。

「ウィンエンターテイメントが某国軍事組織に協力していたことが発覚して、家宅捜索が繰り返され、いずれ地下施設の存在も突き止められてしまう。それを恐れた組織の奴らが和泉の技術を使ってバリアを強靭に作り直そうとしたらしい」

病室に重い沈黙が落ちた。

ビルの爆発倒壊事故で、施設の存在は明かされるだろうし、捜査されるだろうけど、軍事組織って、壊滅させられるのかな。裁かれるのかな。

「親父のVR幻像で奴らの気を逸らしてる隙に和泉と璃乙を連れて逃げようとしたんだけど、璃乙の起爆装置を破壊するのが厄介で、…奴らと奪い合いになって気づいたら大規模な爆発が起こった」

「…なるほど。起爆装置がどうなっているか確認する必要があるが、電子回路を切断すれば切除可能かもしれないってことだな」

結城医師が静かに頷いた。

「和泉さんと璃乙くんの様子、見に行ってもいいですか」

私がおずおずと結城医師を見ると、

「…行ってやれ。あの2人はだいぶ特殊な気体を吸い込んだようだから、まだしばらく目覚めないかもしれないが」

厳しい顔を少し緩めて優しく頷いてくれた。

「逃亡を阻止するために、身体機能を麻痺させるガスを地下に充満させていたみたいだった」

奏くんと結城医師が頷き合っている。

璃乙くんのことを思うと悲しくなる。

すっかり意気消沈していたら、結城医師の手が頭に乗った。

「まあ、心配するな。必ず除去するよ。俺は天才外科医だから」

結城先生。自分で天才言ってるけど。やっぱり優しい。
私の頭に乗せられた手。これが神の手ってヤツだ。

「先生、…」

見上げると、超絶美形な顔が頷きかけてくれた。

「…イジワル美形とか自信過剰大王とか思っててごめん」

素直に謝ったのにはたかれた。ちょっと、神の手!?

「そんなこと思ってたのか、お前は」

優しい頷きが一瞬で消えてただの怖い美形に戻っている。

「自信過剰大王…」

なんか奏くんがにやにやしていて、やっぱり結城医師にはたかれていた。

先生! 神の手、無駄遣いしちゃダメだって!

病室を出ると、通路の窓から東の空が見えた。
外に人影はなく、空は静かに白み始めていた。
眺めていると控えめな白だった空が一瞬の後にきれいな青に染まった。

朝が来る。

目に焼き付いた青空は地上を明るく照らす。
愚かな実験は地下深くに埋もれてなくなり、過ちは新しい光が浄化してくれるような気がした。
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