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和泉さんと璃乙くんは同じ病室の隣のベッドで眠っていた。
璃乙くんは一回り小さく、あんなにしっかりしているのに、寝顔は幼い子どもそのものだった。
璃乙くん。大丈夫だよ。
神の手がきっと助けてくれるからね。
璃乙くんのさらりとした前髪をそっと撫でると、小さな口が微かに動いた。
「…マ、マ」
どうしようもなく胸が締め付けられて、璃乙くんの手をそっと握った。
麻雪さんは釈放されるのかな。
会わせてあげたいな。
隣のベッドでは和泉さんが静かに眠っている。
その端正な横顔を眺めた。
彫りの深い顔立ち。凛々しい眉。官能的な唇。
顔色が白くて浮き出た頬骨が少しやつれているように見える。
和泉さん。
また会えて嬉しい。帰って来てくれて良かった。
和泉さんがいると心から安心する。
ずっと見ていたら、瞼が動いて、ゆっくりと開いた漆黒の瞳が私をとらえた。
「…のい?」
艶のあるハスキーな声が私を呼ぶ。
久しぶりの、和泉さんの声。落ち着いた優しい声。
「…迎えに行けなくて、…ごめんな」
それを聞いたら言葉が出なくて、涙しか出なくて、黙って首を横に振った。
ずっと、心配していてくれたんだ…
「のい、…抱きしめさせて」
和泉さんがゆっくり身体を起こして両腕を伸ばす。
そっと近づくと、長い腕が優しく私を包んだ。
「会いたかった…」
和泉さんの艶のある声が少しだけ震えていた。
「和泉さんが、…無事、帰って来てくれて嬉しい」
確かめるように和泉さんの広い背中を抱きしめた。
和泉さんの温かくて大きな腕の中は懐かしい匂いがする。
どんな時も私を笑顔にする甘い魔法のお菓子の匂い。
「…のい。もう、離したくない」
和泉さんが抱きしめる腕に力を込めた。
痛いくらい気持ちが伝わってきて、動けなかった。
「見たわ、見たわ、見ぃちゃったわ‼」
和泉さんの腕の中で動けずにいたら、どこかで聞いたことのある高飛車な声が突如病室に響き渡った。
この勝ち誇った物言い。まさか、…
身じろぎしようとしたけど、和泉さんにしっかりつかまえられていて、動けない。
「やっぱりmonkeyは悪魔の使い手。カナデを危険に陥れて、別の男とlove enjoyするなんて、monkeyの風上にも置けないわ。ほらね、おじい様、アミィの言った通り」
…やっぱりアメリアか。
戻ってくるの早かったな。ていうか、いっそ戻ってこなくて良かったのにな。
「うむ。確かにmonkeyじゃ」
厳かな声も聞こえてきた。
ちょっと待て。納得するとこ、そこ!?
顔見てないじゃん‼
和泉さんの腕の中で振り返ると、
病室の入り口に相変わらず抜群のスタイルを保つ金髪碧眼美女と、
明治大正時代の古き良き日本紳士みたいなおじいちゃんが立っていた。
わずかな隙も見逃さないようなおじいちゃんの鋭い眼光が冴える。
うわぁ、なんかアミィがラスボス連れて帰ってきた―――っ
「一途にカナデを思い続けているのはアミィだけ。浮気者のmonkeyは魔女っ子アミィが成敗してあげるわ!」
「…女子たるもの貞淑を重んずべし」
ん? …なんか。タイミング最悪な感じがする。
なにこの浮気現場押さえられた妻の図みたいな。
「カナデっ、やっぱりカナデに相応しいのはアミィだけ。ねっ、ねっ、目が覚めたね!」
嬉しそうなアメリアの言葉によく見ると、病室の入り口に微かに奏くんの影が見えた。
「奏くん⁉」
待って。え。なんか。…劣勢?
これは再会を喜ぶハグであってそれ以上でも以下でもないから。
「…病室で騒ぐなよ。行くぞ」
何の感情も読み取れない奏くんの声がして、騒がしいアミィと重々しい足取りのおじいちゃんを引き連れて、奏くんが振り向きもせずに行ってしまった。
いや、ちょっと。
のい子貞淑の塊だからね。清廉潔白だからね‼
璃乙くんは一回り小さく、あんなにしっかりしているのに、寝顔は幼い子どもそのものだった。
璃乙くん。大丈夫だよ。
神の手がきっと助けてくれるからね。
璃乙くんのさらりとした前髪をそっと撫でると、小さな口が微かに動いた。
「…マ、マ」
どうしようもなく胸が締め付けられて、璃乙くんの手をそっと握った。
麻雪さんは釈放されるのかな。
会わせてあげたいな。
隣のベッドでは和泉さんが静かに眠っている。
その端正な横顔を眺めた。
彫りの深い顔立ち。凛々しい眉。官能的な唇。
顔色が白くて浮き出た頬骨が少しやつれているように見える。
和泉さん。
また会えて嬉しい。帰って来てくれて良かった。
和泉さんがいると心から安心する。
ずっと見ていたら、瞼が動いて、ゆっくりと開いた漆黒の瞳が私をとらえた。
「…のい?」
艶のあるハスキーな声が私を呼ぶ。
久しぶりの、和泉さんの声。落ち着いた優しい声。
「…迎えに行けなくて、…ごめんな」
それを聞いたら言葉が出なくて、涙しか出なくて、黙って首を横に振った。
ずっと、心配していてくれたんだ…
「のい、…抱きしめさせて」
和泉さんがゆっくり身体を起こして両腕を伸ばす。
そっと近づくと、長い腕が優しく私を包んだ。
「会いたかった…」
和泉さんの艶のある声が少しだけ震えていた。
「和泉さんが、…無事、帰って来てくれて嬉しい」
確かめるように和泉さんの広い背中を抱きしめた。
和泉さんの温かくて大きな腕の中は懐かしい匂いがする。
どんな時も私を笑顔にする甘い魔法のお菓子の匂い。
「…のい。もう、離したくない」
和泉さんが抱きしめる腕に力を込めた。
痛いくらい気持ちが伝わってきて、動けなかった。
「見たわ、見たわ、見ぃちゃったわ‼」
和泉さんの腕の中で動けずにいたら、どこかで聞いたことのある高飛車な声が突如病室に響き渡った。
この勝ち誇った物言い。まさか、…
身じろぎしようとしたけど、和泉さんにしっかりつかまえられていて、動けない。
「やっぱりmonkeyは悪魔の使い手。カナデを危険に陥れて、別の男とlove enjoyするなんて、monkeyの風上にも置けないわ。ほらね、おじい様、アミィの言った通り」
…やっぱりアメリアか。
戻ってくるの早かったな。ていうか、いっそ戻ってこなくて良かったのにな。
「うむ。確かにmonkeyじゃ」
厳かな声も聞こえてきた。
ちょっと待て。納得するとこ、そこ!?
顔見てないじゃん‼
和泉さんの腕の中で振り返ると、
病室の入り口に相変わらず抜群のスタイルを保つ金髪碧眼美女と、
明治大正時代の古き良き日本紳士みたいなおじいちゃんが立っていた。
わずかな隙も見逃さないようなおじいちゃんの鋭い眼光が冴える。
うわぁ、なんかアミィがラスボス連れて帰ってきた―――っ
「一途にカナデを思い続けているのはアミィだけ。浮気者のmonkeyは魔女っ子アミィが成敗してあげるわ!」
「…女子たるもの貞淑を重んずべし」
ん? …なんか。タイミング最悪な感じがする。
なにこの浮気現場押さえられた妻の図みたいな。
「カナデっ、やっぱりカナデに相応しいのはアミィだけ。ねっ、ねっ、目が覚めたね!」
嬉しそうなアメリアの言葉によく見ると、病室の入り口に微かに奏くんの影が見えた。
「奏くん⁉」
待って。え。なんか。…劣勢?
これは再会を喜ぶハグであってそれ以上でも以下でもないから。
「…病室で騒ぐなよ。行くぞ」
何の感情も読み取れない奏くんの声がして、騒がしいアミィと重々しい足取りのおじいちゃんを引き連れて、奏くんが振り向きもせずに行ってしまった。
いや、ちょっと。
のい子貞淑の塊だからね。清廉潔白だからね‼
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