Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「俺、家に帰るから。お前は和泉についててやれ」

奏くんの瞳は琥珀色で、何の感情も映していない。

「…う、ん」

大好きなあおくんの青と淡褐色の美しい瞳が見えなくて、さみしい。
前にカラーコンタクトって言ってたけど、そのほんのわずかな薄い膜が大きな隔たりのような気がして怖い。

「あのね、奏くん。あの、…」

何か言った方がいい気がしたけど、なんて言ったらいいのかわからない。

奏くんの真っすぐな瞳は心の奥底まで見透かしていて、何を言っても嘘に聞こえてしまいそうな気がする。

和泉さんのそばにいて力になりたい気持ちは確かで、出来ることは何でもするって思うけど、…

なんか。

「早く帰ろ、カナデ」

アメリアが公然と奏くんの腕に腕を絡めて帰路を急がせる。

「Goodbye,monkey お幸せに!」

…なんか、取り返しのつかないことにならないよね?

「青井。ありがとうな」

和泉さんの呼びかけに奏くんは片手を挙げて、
目覚めたお父さんと付き添うお母さん、明治紳士なおじいちゃんとうるさいアメリアを連れて、病院から出て行った。

…なんか。奏くんが遠くに行ってしまいそうで怖い。

アメリアの捨て台詞が耳に残るんだけど、大丈夫だよね?

奏くんのベッドがものすごい勢いで遠ざかっていくような気がするけど、私また、戻れるよね―――!?

「…あの美人さんに勝てるのは早食いくらいじゃない?」

まだ幼さの残る高い声に振り向くと、目を覚ました璃乙くんが聡明さを隠し切れない瞳でじっと私を見ていた。

「璃乙くん‼ 大丈夫?」

璃乙くんに駆け寄る。
いろいろな思いが込み上げて、ママの代わりに抱きしめようとしたら、

「バナナの早食いがいいと思う。おサルだけに」

ヤツは真顔で言い切った。

寝起きの第一声がそれ⁉︎
璃乙、元気じゃん! 通常運転じゃん‼

「うん、うまいっ! もう一本!」
「ダメ。美味いにキレがない。もっとがつがつした感じで」

「うまい―――っ! もう一本‼」
「ダメ。緊迫し過ぎ。もっとユーモラスに」

…ていうか。私は一体何を。

すっかり元気いっぱいに見える璃乙にパシられてバナナの山を買ってきた挙句、早食い競争に向けて特訓に励んでいるわけですが、…

昼下がりの平和な病室で和泉さんが爆笑している。

いや、皆さん。元気そうで何よりです。

ウィンエンターテイメントのビル倒壊現場では、徹夜の救助作業が続き、瓦礫に埋もれた地下から何人かが救出されたと報道されていた。

地下施設跡からも様々な実験の物的証拠が次々と押収されているようだ。

璃乙くんの起爆装置も見つかったらしく、警察の人がやってきて結城医師と何やら綿密に相談していた。

「お前の頭、明日手術するな」

結城医師に告げられた璃乙くんは、私には決して見せたことのない崇拝するような表情で医師を見上げて、

「…よろしくお願いします」

しっかりと頭を下げていた。
璃乙、デキる子。
偉い子。伸びる子。

よしよしと璃乙くんの頭を撫でたら、真顔で提案された。

「おサルも一緒に見てもらったら?」

…余計なお世話だしっ
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