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blue.99
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夕食を食べに出て、病室に戻ろうとしたところ、後ろから急に腕をつかまれた。
「のい子っ」
「うわあああっ」
ぎょっとして振り返ったら、相手もぎょっとした顔をしていて、しばし無言のまま見つめ合ってしまった。
あ。見たことある黒いスーツと必死感漂う固まった前髪。
「やっぱり、のい子っ! どこに行っていたんだ? 社長が重傷を負われて、お前に会いたがっているぞ。さあ、早くこっちへ!」
もう二度と会わないはずだった東堂秘書が改めて私の腕をつかみ直し、ぐいぐい引っ張る。
いや、それ会ったらものすごくマズいヤツだから!
「…なんか、人違いじゃ、…」
苦しい言い訳をつぶやくも、東堂秘書の耳には全く届いていないようで、意外な怪力に引きずられていると、
「彼女から手を離してもらえますか」
静かだけど逆らえない凛とした声と力強い腕が割り込んで、強引に引き離してくれた。
和泉さんの広い背中がかばうように私と東堂秘書の間に入る。
「いや、私は別に、…」
「行こう。様子を見に来て良かった」
もごもご言ってる東堂秘書を尻目に、和泉さんが私の手を取って足早に歩きだす。
「のい子っ、後で必ず、…」
東堂秘書の声が追いかけてくるけど、ヤバすぎて振り向けない。
和泉さんは私に優しい顔を向けるとしっかりとつないだ手に力を込めた。
和泉さんの手が熱くて、力強くて、思いが伝わってきて、…振りほどくなんて出来なかった。
病院の消灯時間が近づき、璃乙くんが眠りに就いた頃、
「イズミくん、…っ‼」
処分保留で保釈されたらしい麻雪さんが病院にやってきた。
降り積もったばかりの雪のような儚さをそのままに、瞳いっぱいに涙をためて麻雪さんが和泉さんに駆け寄ると、
「触らないでくれないか」
聞いたこともないような冷たい和泉さんの声が病室に響き、麻雪さんは足を止めて立ち尽くした。
「あなたには二度と会いたくないし、話すことも何もない」
胸を切り裂かれそうなほど冷たい声に、麻雪さんの目から大粒の涙が静かにこぼれ落ちた。
一瞬にして病室の空気が凍りつき、息をするのもはばかられる。
いたたまれなくて、そろりそろーりと忍び足で病室を抜け出そうとしたら、和泉さんにがっちり手をつかまれた。
いや。あの。私。
ちょっと、場違いと言いますか、お邪魔なような、…
「…ただ」
どうしたもんかと2人の様子をうかがっていると、和泉さんが小さく息を吐いた。
「…あなたには、璃乙を幸せにすることだけを望んでる」
次の瞬間、麻雪さんが声を上げてその場に崩れ落ちた。
清らかさとか美しさとかとは無縁の獣みたいな雄叫びを上げる。
激しい号泣に、ベッドの璃乙くんが身じろぎし、
「…ママ?」
むっくり起き上がって、裸足でベッドから降りてきた。
「…泣かないで、ママ」
床にしゃがみ込んでむせび泣く麻雪さんを璃乙くんの小さな腕が抱きしめる。
「僕が守ってあげるから」
和泉さんが繋いだ手に力を込めた。
多分、同じことを思っているんだって分かった。
神様どうか。
この健気な子どもの未来が明るいものでありますように。
ガスの人体実験に使われても、
頭に爆弾を埋められても、
泣くこともせずに母親を守ってきたこの子が
どうか幸せに生きていけますように。
「のい子っ」
「うわあああっ」
ぎょっとして振り返ったら、相手もぎょっとした顔をしていて、しばし無言のまま見つめ合ってしまった。
あ。見たことある黒いスーツと必死感漂う固まった前髪。
「やっぱり、のい子っ! どこに行っていたんだ? 社長が重傷を負われて、お前に会いたがっているぞ。さあ、早くこっちへ!」
もう二度と会わないはずだった東堂秘書が改めて私の腕をつかみ直し、ぐいぐい引っ張る。
いや、それ会ったらものすごくマズいヤツだから!
「…なんか、人違いじゃ、…」
苦しい言い訳をつぶやくも、東堂秘書の耳には全く届いていないようで、意外な怪力に引きずられていると、
「彼女から手を離してもらえますか」
静かだけど逆らえない凛とした声と力強い腕が割り込んで、強引に引き離してくれた。
和泉さんの広い背中がかばうように私と東堂秘書の間に入る。
「いや、私は別に、…」
「行こう。様子を見に来て良かった」
もごもご言ってる東堂秘書を尻目に、和泉さんが私の手を取って足早に歩きだす。
「のい子っ、後で必ず、…」
東堂秘書の声が追いかけてくるけど、ヤバすぎて振り向けない。
和泉さんは私に優しい顔を向けるとしっかりとつないだ手に力を込めた。
和泉さんの手が熱くて、力強くて、思いが伝わってきて、…振りほどくなんて出来なかった。
病院の消灯時間が近づき、璃乙くんが眠りに就いた頃、
「イズミくん、…っ‼」
処分保留で保釈されたらしい麻雪さんが病院にやってきた。
降り積もったばかりの雪のような儚さをそのままに、瞳いっぱいに涙をためて麻雪さんが和泉さんに駆け寄ると、
「触らないでくれないか」
聞いたこともないような冷たい和泉さんの声が病室に響き、麻雪さんは足を止めて立ち尽くした。
「あなたには二度と会いたくないし、話すことも何もない」
胸を切り裂かれそうなほど冷たい声に、麻雪さんの目から大粒の涙が静かにこぼれ落ちた。
一瞬にして病室の空気が凍りつき、息をするのもはばかられる。
いたたまれなくて、そろりそろーりと忍び足で病室を抜け出そうとしたら、和泉さんにがっちり手をつかまれた。
いや。あの。私。
ちょっと、場違いと言いますか、お邪魔なような、…
「…ただ」
どうしたもんかと2人の様子をうかがっていると、和泉さんが小さく息を吐いた。
「…あなたには、璃乙を幸せにすることだけを望んでる」
次の瞬間、麻雪さんが声を上げてその場に崩れ落ちた。
清らかさとか美しさとかとは無縁の獣みたいな雄叫びを上げる。
激しい号泣に、ベッドの璃乙くんが身じろぎし、
「…ママ?」
むっくり起き上がって、裸足でベッドから降りてきた。
「…泣かないで、ママ」
床にしゃがみ込んでむせび泣く麻雪さんを璃乙くんの小さな腕が抱きしめる。
「僕が守ってあげるから」
和泉さんが繋いだ手に力を込めた。
多分、同じことを思っているんだって分かった。
神様どうか。
この健気な子どもの未来が明るいものでありますように。
ガスの人体実験に使われても、
頭に爆弾を埋められても、
泣くこともせずに母親を守ってきたこの子が
どうか幸せに生きていけますように。
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