103 / 124
blue.102
しおりを挟む
「おい、コザルっ‼」
何をやったかまるで思い出せないまま就業時間が終わり、
みんなにさっさと帰れと追い出されながらエントランスを出て、
和泉さんの退院をお迎えしようと病院に向かいかけたら、
スマートフォンが震えた。
弾かれたように画面を見たけど、"俺”じゃなかったから、完全に出る気が失せた。
奏くんじゃなければ、後はどうでもいい。
あんまりしつこく震えているので、ものすごくやる気のないまま画面をタップしたら、またもチワワの吠え声が聞こえた。
「奏くん、イギリス帰っちゃったよ!?」
チワワの言葉は、一度死んだ心臓を二重に刺し殺した。
「いつ!?」
死んでる場合じゃない。
早く行かなきゃ‼︎
そのままタクシーをつかまえて空港に向かおうとしたら、
「…とっくに空の上だと思うよ」
チワワが非情に告げた。
「なんか、イギリスに帰って頭冷やすって。…で、アメリアが世話女房気どりで、…って聞いてんのか、コザルっ」
世界がひっくり返った。
と思ったら、自分が仰向けに転がっていた。
冷やすって何⁉ なにその不吉な響き!
冷やしたら、そのまま固まっちゃうじゃん‼
本当に世界がひっくり返って、奏くんが戻って来てくれたらいいのに。
「…大丈夫ですか?」
通りすがりの親切な人に声を掛けられて、うなずいたけど、全然大丈夫じゃなかった。
奏くんがいないと世界が凍る。
奏くんがいない世界をどうやって生きていけばいいかわからない。
「ちょっ、…本当に大丈夫ですか?」
道端に転がってどんなに泣いても、もう世界は戻らない。
1番大事なこと間違えた。
何があっても、どんな時でも、絶対に奏くんの手を離しちゃいけなかったのに。
魂の絞りカスになりながら、ようやく病院にたどり着いた。
完全に人生を見失ってよぼよぼとロビーを横切った時、存在すら忘れていた東堂秘書と鉢合わせた。
「のい子っ‼」
やば。
カスだけの魂を総動員してよぼよぼの身体を立ち直らせ、回れ右の全力ダッシュにかかる。
逃げるしかない。
昨日、図らずも長距離疾走してガタが来ている足腰から大ブーイングが起こったけど、聞いていられない。
皆さん。
病院で走ってはいけません。
結城医師に見つかったら、ものすごく怒られそうな勢いで通路と階段を駆け上がり、
いくつもの角を曲がって行き着いた扉を開け、
よく分からない部屋に逃げ込んだら、そこに居た高級感漂うスーツの背中に突っ込んだ。
事故です。事故です。
鼻血案件再発。
「とりあえず、押さえておきなさい」
高級なスーツの人物から、水色のハンカチを鼻に押し当てられた。
『とりあえず、押さえとけ』
再会した時の奏くんの優しい声が耳によみがえって涙が出た。
「…がなでぐん」
「…何をしておる」
脳が迷走して、目の前の人物にすがり付いて泣いてしまったところ、どこかで見たことのある顔にものすごく迷惑そうな視線を向けられた。
…ラスボス‼ 出たっ‼
「…モンキーか。なんか面変わりしておるが」
取り繕う余裕のないまま、涙で腫れた目と鼻血まみれの顔を上から下までマジマジ見られて、奏くんのおじい様との二度目の対面が果たされた。
モンキーではありません。
「…本宮のいです」
「…ノンキーか」
「……」
笑えと?
何をやったかまるで思い出せないまま就業時間が終わり、
みんなにさっさと帰れと追い出されながらエントランスを出て、
和泉さんの退院をお迎えしようと病院に向かいかけたら、
スマートフォンが震えた。
弾かれたように画面を見たけど、"俺”じゃなかったから、完全に出る気が失せた。
奏くんじゃなければ、後はどうでもいい。
あんまりしつこく震えているので、ものすごくやる気のないまま画面をタップしたら、またもチワワの吠え声が聞こえた。
「奏くん、イギリス帰っちゃったよ!?」
チワワの言葉は、一度死んだ心臓を二重に刺し殺した。
「いつ!?」
死んでる場合じゃない。
早く行かなきゃ‼︎
そのままタクシーをつかまえて空港に向かおうとしたら、
「…とっくに空の上だと思うよ」
チワワが非情に告げた。
「なんか、イギリスに帰って頭冷やすって。…で、アメリアが世話女房気どりで、…って聞いてんのか、コザルっ」
世界がひっくり返った。
と思ったら、自分が仰向けに転がっていた。
冷やすって何⁉ なにその不吉な響き!
冷やしたら、そのまま固まっちゃうじゃん‼
本当に世界がひっくり返って、奏くんが戻って来てくれたらいいのに。
「…大丈夫ですか?」
通りすがりの親切な人に声を掛けられて、うなずいたけど、全然大丈夫じゃなかった。
奏くんがいないと世界が凍る。
奏くんがいない世界をどうやって生きていけばいいかわからない。
「ちょっ、…本当に大丈夫ですか?」
道端に転がってどんなに泣いても、もう世界は戻らない。
1番大事なこと間違えた。
何があっても、どんな時でも、絶対に奏くんの手を離しちゃいけなかったのに。
魂の絞りカスになりながら、ようやく病院にたどり着いた。
完全に人生を見失ってよぼよぼとロビーを横切った時、存在すら忘れていた東堂秘書と鉢合わせた。
「のい子っ‼」
やば。
カスだけの魂を総動員してよぼよぼの身体を立ち直らせ、回れ右の全力ダッシュにかかる。
逃げるしかない。
昨日、図らずも長距離疾走してガタが来ている足腰から大ブーイングが起こったけど、聞いていられない。
皆さん。
病院で走ってはいけません。
結城医師に見つかったら、ものすごく怒られそうな勢いで通路と階段を駆け上がり、
いくつもの角を曲がって行き着いた扉を開け、
よく分からない部屋に逃げ込んだら、そこに居た高級感漂うスーツの背中に突っ込んだ。
事故です。事故です。
鼻血案件再発。
「とりあえず、押さえておきなさい」
高級なスーツの人物から、水色のハンカチを鼻に押し当てられた。
『とりあえず、押さえとけ』
再会した時の奏くんの優しい声が耳によみがえって涙が出た。
「…がなでぐん」
「…何をしておる」
脳が迷走して、目の前の人物にすがり付いて泣いてしまったところ、どこかで見たことのある顔にものすごく迷惑そうな視線を向けられた。
…ラスボス‼ 出たっ‼
「…モンキーか。なんか面変わりしておるが」
取り繕う余裕のないまま、涙で腫れた目と鼻血まみれの顔を上から下までマジマジ見られて、奏くんのおじい様との二度目の対面が果たされた。
モンキーではありません。
「…本宮のいです」
「…ノンキーか」
「……」
笑えと?
0
あなたにおすすめの小説
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
さんかく片想い ―彼に抱かれるために、抱かれた相手が忘れられない。三角形の恋の行方は?【完結】
remo
恋愛
「めちゃくちゃにして」
雨宮つぼみ(20)は、長年の片想いに決着をつけるため、小湊 創(27)に最後の告白。抱いてほしいと望むも、「初めてはもらえない」と断られてしまう。初めてをなくすため、つぼみは養子の弟・雨宮ななせ(20)と関係を持つが、―――…
【番外編】追加しました。
⁂完結後は『さんかく両想い』に続く予定です。
私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない
朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。
止まっていた時が。
再び、動き出す―――。
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
衣川遥稀(いがわ はるき)
好きな人に素直になることができない
松尾聖志(まつお さとし)
イケメンで人気者
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25)
「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」
◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20)
「京都案内しようか?今どこ?」
再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。
「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」
「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる