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「奏はわしの自慢の孫でな」
応接室っぽいソファテーブルが並べられた簡素な部屋で、
「青井喜四郎じゃ」と名乗った奏くんのおじいちゃんは、
会談相手に待ちぼうけを食わされているらしく、
…要するに暇らしく、
「まあ座りなさい」と勝手にソファを勧めて、奏くん自慢を始めた。
「昔からわしに似て、顔も良ければ頭も良く、スポーツ万能、女子にもモテモテ」
…おじいちゃん、生粋の日本人顔じゃん。
どう贔屓目に見ても世界遺産級イケメンの奏くんには程遠いじゃん。
「なんじゃ、ノンキー?」
「…おっしゃる通りでございます」
おじいちゃんはふっと息を吐くと、すごく優しい顔をした。
「それに心根が優しくてジジ思いじゃ」
あ。確かに。
おじいちゃんの優しい顔、奏くんとよく似てる。
「息子のレオナルドはバーチャルリアリティーに夢中で、わしが一代で築き上げた青井ホールディングスUKの事業には見向きもせん。見兼ねた奏が幼い頃からわしの跡を継いでくれると言うておってな」
そういえば。なんかアメリアが言ってたな。
おじい様の事業を成功させるには爵位がどうとか。
薄々そんな気はしてたけど、奏くんちってなんか、名門の香りがする。
「それが、反対を押し切って、日本のハイスクールに行ったと思ったら、今度は社会勉強がしたいと新聞社に就職して、また日本に行ってしまいおった」
おじいちゃんが心の奥底まで見抜くような鋭い眼光を私に向けた。
「…どうしても、譲れないものがあるんじゃと」
どうしても譲れないもの?
「わしは奏の、どうしても譲れないものを見るために、日本に来た」
おじいちゃんの瞳が真っすぐに私を射抜いて、鼻血顔のまま動けずにいたら、
「遅くなって申し訳ありません、Mr.青井。病院内に猿が出現したらしく、…」
急に扉が開いて、慌ただしく入ってきた結城医師と目が合った。
沈黙のにらみ合いの末。
「…お前か」
なんか結城医師がすべてを理解したくさい。
「…ノンキーだから?」
笑いかけてみたら無言ではたかれた。
動物虐待禁止!
どうやらおじいちゃんは、自分が運営するグループ会社の病院に結城医師をスカウトに来たらしかった。
「OK,OK! ちょっと自信過剰なとこありますけど、腕は確かですから。今が旬です。お買い得!」
せっかく売り込んだのに、
「なんでお前がOKするんだ」
結城医師が安定の美形にらみで威嚇してきた。
もう。ちょっと美形が過ぎるからってもったいぶって。
「おじいちゃんの会社以上にいいとこないって!」
「俺がいなくなったら、暴走した青井とお前の世話は誰がするんだ?」
「…うん。よく考えよう。だから先生、焦るなって」
なんか、またはたかれた。
動物虐待、ダメ、絶対!
うーん、でも。奏くんがイギリスにいるなら先生も行った方がいいのか⁇
ものすごく真剣に悩んでいたら、
「まあ、返事は急ぎませんから。よろしかったら、一度見にいらしてください」
おじいちゃんから寛大なお言葉があり、
「分かりました」
結城医師が真面目な顔して頷いていた。
「…ノンキーも」
おじいちゃんがついでのように私を見た。
「見に来ても良いぞ」
ラスボスの鋭い瞳から放たれた光が、迷子のチビザルに進むべき道しるべを示した。
「おじいちゃんっ‼」
思わず立ち上がって、奏くんのおじいちゃんの手を取って振り回した。
「おじいちゃん、待ってて! 私、バナナ持ってイギリスに行くから。私にも絶対に絶対に譲れないものがあるっ‼」
泣いてる場合じゃなかった。
アメリアにバナナの早食いで勝って、奏くんにもう一回告白する。
伝わるまで何度でも告白する。
奏くんだけは、絶対絶対譲れないから‼︎
「なぜバナナ?」
「ついにサルを自覚したな」
応接室っぽいソファテーブルが並べられた簡素な部屋で、
「青井喜四郎じゃ」と名乗った奏くんのおじいちゃんは、
会談相手に待ちぼうけを食わされているらしく、
…要するに暇らしく、
「まあ座りなさい」と勝手にソファを勧めて、奏くん自慢を始めた。
「昔からわしに似て、顔も良ければ頭も良く、スポーツ万能、女子にもモテモテ」
…おじいちゃん、生粋の日本人顔じゃん。
どう贔屓目に見ても世界遺産級イケメンの奏くんには程遠いじゃん。
「なんじゃ、ノンキー?」
「…おっしゃる通りでございます」
おじいちゃんはふっと息を吐くと、すごく優しい顔をした。
「それに心根が優しくてジジ思いじゃ」
あ。確かに。
おじいちゃんの優しい顔、奏くんとよく似てる。
「息子のレオナルドはバーチャルリアリティーに夢中で、わしが一代で築き上げた青井ホールディングスUKの事業には見向きもせん。見兼ねた奏が幼い頃からわしの跡を継いでくれると言うておってな」
そういえば。なんかアメリアが言ってたな。
おじい様の事業を成功させるには爵位がどうとか。
薄々そんな気はしてたけど、奏くんちってなんか、名門の香りがする。
「それが、反対を押し切って、日本のハイスクールに行ったと思ったら、今度は社会勉強がしたいと新聞社に就職して、また日本に行ってしまいおった」
おじいちゃんが心の奥底まで見抜くような鋭い眼光を私に向けた。
「…どうしても、譲れないものがあるんじゃと」
どうしても譲れないもの?
「わしは奏の、どうしても譲れないものを見るために、日本に来た」
おじいちゃんの瞳が真っすぐに私を射抜いて、鼻血顔のまま動けずにいたら、
「遅くなって申し訳ありません、Mr.青井。病院内に猿が出現したらしく、…」
急に扉が開いて、慌ただしく入ってきた結城医師と目が合った。
沈黙のにらみ合いの末。
「…お前か」
なんか結城医師がすべてを理解したくさい。
「…ノンキーだから?」
笑いかけてみたら無言ではたかれた。
動物虐待禁止!
どうやらおじいちゃんは、自分が運営するグループ会社の病院に結城医師をスカウトに来たらしかった。
「OK,OK! ちょっと自信過剰なとこありますけど、腕は確かですから。今が旬です。お買い得!」
せっかく売り込んだのに、
「なんでお前がOKするんだ」
結城医師が安定の美形にらみで威嚇してきた。
もう。ちょっと美形が過ぎるからってもったいぶって。
「おじいちゃんの会社以上にいいとこないって!」
「俺がいなくなったら、暴走した青井とお前の世話は誰がするんだ?」
「…うん。よく考えよう。だから先生、焦るなって」
なんか、またはたかれた。
動物虐待、ダメ、絶対!
うーん、でも。奏くんがイギリスにいるなら先生も行った方がいいのか⁇
ものすごく真剣に悩んでいたら、
「まあ、返事は急ぎませんから。よろしかったら、一度見にいらしてください」
おじいちゃんから寛大なお言葉があり、
「分かりました」
結城医師が真面目な顔して頷いていた。
「…ノンキーも」
おじいちゃんがついでのように私を見た。
「見に来ても良いぞ」
ラスボスの鋭い瞳から放たれた光が、迷子のチビザルに進むべき道しるべを示した。
「おじいちゃんっ‼」
思わず立ち上がって、奏くんのおじいちゃんの手を取って振り回した。
「おじいちゃん、待ってて! 私、バナナ持ってイギリスに行くから。私にも絶対に絶対に譲れないものがあるっ‼」
泣いてる場合じゃなかった。
アメリアにバナナの早食いで勝って、奏くんにもう一回告白する。
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奏くんだけは、絶対絶対譲れないから‼︎
「なぜバナナ?」
「ついにサルを自覚したな」
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