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あおくんのハイスクール白書 【ネタバレ】含みます。72話以降にお読み下さい。
あおくんのハイスクール白書③【卒業式】(前編)
しおりを挟む卒業おめでとう。桜が咲く頃、きっとまた会いに来る。
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「ねぇねぇ、タイ交換する?」
「するでしょ! だって永遠に結ばれるんだよ?」
3月に入ってから、卒業に向けて周りが騒がしい。
卒業式にネクタイとリボンを交換すると、
その後も相手とずっと結ばれるとかいう迷惑なジンクスがあり、
高校生活最後のイベントみたいな感じで、
男子も女子もどこかそわそわしている。
「なんか奏、機嫌悪くない?」
「連日女子にネクタイせがまれて囲まれてるからじゃない?」
「…贅沢なヤツ」
だいたい、ネクタイどころじゃない。
卒業したら、イギリスに帰ることになっている。
もともとハイスクールの間だけっていう約束で日本に来た。
それなのに。
あのバカは。
まるで気づかねえし。
悶々としていたら、友人のナオがボソッとつぶやいた。
「俺、本宮にリボンもらおうかな」
「…はぁ!?」
ナオの言葉に思わず大声を上げてしまった。
友人たちが驚いた顔で固まっている。
「どしたん、奏?」
「あ、いや、…なんでもない」
…わけあるかよ。
「本宮って、小さくってちょろちょろしてて、なんか可愛くね?」
「あー、分かる分かる、いつも一生懸命な感じ」
「可愛いよな!」
友人たちが盛り上がり始めた。
その視線の先にいるのいは、自分が話題の対象になってるなんてまるで気づかず、教室の机で女子と集まって談笑している。
笑うたびに髪がサラサラ揺れて、表情がくるくる変わる。
…マジか。
卒業式当日は、
桜が花開き、どこまでも澄んだ青空が広がっていた。
最後の制服姿。
校門も校庭も体育館も教室も、のいと過ごした時間が詰まっている。
授業中、眠気に負けて頭が揺れていたり、
校庭の光の中、風を切って走ったり、
黙々と掃除をしていたり、大口開けて弁当食べたり。
どこを見ても何を見ても、のいが浮かぶ。
式典が終わって教室に戻ると、高校生活も本当に終わりなんだという感じになり、泣いている女子たちがいて、連絡先の交換や写真撮影が行われている。
打ち上げの準備も何となく始まっている。
写真撮影に飽きてのいを見ると、リボンをしていなかった。
どこに行ったのか、ナオの姿もない。
「おい、…ちょっと来い」
呑気な顔で友だちとわいわいしているのいを、廊下に連れ出して問い詰めた。
「お前、リボンどうした?」
まさかナオにあげたんじゃねえよな?
「リボン? あげたよ?」
きょとんとした顔でのいが俺を見る。
「…なんで⁉」
お前はあおくんが好きなんじゃねえのか。
頼まれれば誰でもいいのか。
俺の語気が荒かったのか、のいが驚いたように大きな目をまん丸に見開いて、
「だって、伝えたかったから。…高校卒業したよって」
ちょっと言い訳するみたいに答えた。
「……。誰に?」
俺の問いに当然のようにのいが小首を傾げた。
「…あおくん」
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