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Ⅰ.あかり
02.
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放課後の図書室は、あまり人がいない。
私はこのひっそりとした異空間な雰囲気が好き。
聖人の部活が終わるまで、大抵図書室で待っている。
聖人は、いつも申し訳なさそうだけれど
宿題をやったり好きな本を読んだりしながら
聖人を待つこの時間が、私は結構好きだったりする。
そんな。
いつも通りの放課後だった。
ふと。
誰かが図書室に入ってきたのを感じた。
読みかけの小説の中では、主人公が主要人物を集めて謎を解き明かそうとしている。
どきどきのクライマックス。
なのに。
近づく気配に息が出来ない。そちらを振り向くことも出来ないのに、それが誰なのかわかった。
見ない。見ない。
言い聞かせる。
絶対見ない。
ゆっくり近づいてきた鳴瀬有輝は、私の隣の椅子を引く。
自分がつま先まで緊張するのがわかった。
ドウシテ、ココニ、スワルノ。
鳴瀬有輝の衝撃的な過去のうわさ話は、入学後1カ月で、ほぼ全校生徒に知れ渡っていた。
うわさに疎い私の耳にも入るくらい。
傷害事件で中学を変わり、
心中未遂で相手を死なせたーーー…
怖いもの見たさで彼を探すと、確実に捕らわれる。
「美少年」という形容は、彼のためにあると思わせるほど整った容姿と、何もかもを諦めたかのような頽廃的な空気に。
私は、彼を見なかった。
意識的に、目も耳も、心もふさいだ。
彼が怖かったから。
隣に座った鳴瀬が、内緒話をするかのように、顔を近づける。
どうしよう。
どうしたら。
金縛りにあったように動けない。
無意識に目を強く閉じていた。
「15分たったらーーー」
ふいにささやかれた言葉に、滑稽なくらい震えてしまった。
だけど。
同時に、魅せられる
鳴瀬有輝の声。
耳に届いた途端、胸を打つ深い声。
切なさと懐かしさを帯びて、すんなり心の一番奥までたどり着いてしまうような。
顔を上げると、鳴瀬有輝が、私を見ていた。
「起こして」
目をそらすことが出来ない。漆黒の瞳。
鳴瀬の瞳に私が映る。時が止まる。
トラワレルーーー
鳴瀬がふっと息を吐く。
唇が緩やかに弧を描く。
「そんな見開いたら、落ちるよ?」
鳴瀬の長い指が私の頬に触れる。
ひんやりした感触に震える。
親指が優しくまぶたをなでた。
どうして。
泣きたいような気持ちになるんだろう。
一瞬目を閉じて、鳴瀬が手を離す。
そのまま机上に頭を伏せて、・・・って、寝てる?
何この自由な人ーーーーー??
驚きすぎて言葉が出ない。
オレンジ色の髪が日の光に透けて輝く。
柔らかそうな髪の間に長いまつ毛がのぞく。
整った鼻筋。
甘い声を紡ぐ唇。
彼はどうして、こんなにも見る人を魅了するんだろう。
彼の寝顔から、目を離せない。
開けてはいけないといわれた箱を、開けずにはいられないように。
彼は危険な人間だから、決して近づいてはいけない。
心臓が狂ったように早鐘を打っている。
体中が警告を発しているのに、彼から目をそらせない。
湿った本の匂いと、遠くから聞こえる部活のかけ声。
吹奏楽部の音合わせ。
夕日に照らされて舞う埃。
どこかで走る靴音。
ドアの開閉する音。
読みかけの小説は、目の前から消え去り、世界からこの場所だけが取り残されたようだった。
私はこのひっそりとした異空間な雰囲気が好き。
聖人の部活が終わるまで、大抵図書室で待っている。
聖人は、いつも申し訳なさそうだけれど
宿題をやったり好きな本を読んだりしながら
聖人を待つこの時間が、私は結構好きだったりする。
そんな。
いつも通りの放課後だった。
ふと。
誰かが図書室に入ってきたのを感じた。
読みかけの小説の中では、主人公が主要人物を集めて謎を解き明かそうとしている。
どきどきのクライマックス。
なのに。
近づく気配に息が出来ない。そちらを振り向くことも出来ないのに、それが誰なのかわかった。
見ない。見ない。
言い聞かせる。
絶対見ない。
ゆっくり近づいてきた鳴瀬有輝は、私の隣の椅子を引く。
自分がつま先まで緊張するのがわかった。
ドウシテ、ココニ、スワルノ。
鳴瀬有輝の衝撃的な過去のうわさ話は、入学後1カ月で、ほぼ全校生徒に知れ渡っていた。
うわさに疎い私の耳にも入るくらい。
傷害事件で中学を変わり、
心中未遂で相手を死なせたーーー…
怖いもの見たさで彼を探すと、確実に捕らわれる。
「美少年」という形容は、彼のためにあると思わせるほど整った容姿と、何もかもを諦めたかのような頽廃的な空気に。
私は、彼を見なかった。
意識的に、目も耳も、心もふさいだ。
彼が怖かったから。
隣に座った鳴瀬が、内緒話をするかのように、顔を近づける。
どうしよう。
どうしたら。
金縛りにあったように動けない。
無意識に目を強く閉じていた。
「15分たったらーーー」
ふいにささやかれた言葉に、滑稽なくらい震えてしまった。
だけど。
同時に、魅せられる
鳴瀬有輝の声。
耳に届いた途端、胸を打つ深い声。
切なさと懐かしさを帯びて、すんなり心の一番奥までたどり着いてしまうような。
顔を上げると、鳴瀬有輝が、私を見ていた。
「起こして」
目をそらすことが出来ない。漆黒の瞳。
鳴瀬の瞳に私が映る。時が止まる。
トラワレルーーー
鳴瀬がふっと息を吐く。
唇が緩やかに弧を描く。
「そんな見開いたら、落ちるよ?」
鳴瀬の長い指が私の頬に触れる。
ひんやりした感触に震える。
親指が優しくまぶたをなでた。
どうして。
泣きたいような気持ちになるんだろう。
一瞬目を閉じて、鳴瀬が手を離す。
そのまま机上に頭を伏せて、・・・って、寝てる?
何この自由な人ーーーーー??
驚きすぎて言葉が出ない。
オレンジ色の髪が日の光に透けて輝く。
柔らかそうな髪の間に長いまつ毛がのぞく。
整った鼻筋。
甘い声を紡ぐ唇。
彼はどうして、こんなにも見る人を魅了するんだろう。
彼の寝顔から、目を離せない。
開けてはいけないといわれた箱を、開けずにはいられないように。
彼は危険な人間だから、決して近づいてはいけない。
心臓が狂ったように早鐘を打っている。
体中が警告を発しているのに、彼から目をそらせない。
湿った本の匂いと、遠くから聞こえる部活のかけ声。
吹奏楽部の音合わせ。
夕日に照らされて舞う埃。
どこかで走る靴音。
ドアの開閉する音。
読みかけの小説は、目の前から消え去り、世界からこの場所だけが取り残されたようだった。
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