【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅱ.有輝

17.

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(なる、…)

ほんの少し、眠そうにかすれて、だけど変わらず柔らかい声音。
電話の向こうのあかりの声が、俺を包む。
底知れない安堵と、自分に対する失望に胸が軋む。

あかりから離れるために慎弥さんに無理を言ってここに来たのに、結局俺は、あかりにすがっている。

「…誰か、俺を沈めて、…」

気配を伺うような沈黙に、慎重なあかりの姿が見える気がした。

あかり、驚かせてごめんな。
ありがとう。

通話を切った。

今夜は、この声を抱いて眠ろう。
耳の奥で繰り返し繰り返しあかりの声を想う。

ギターを弾く指先が軽い。
さっきまで、世界にたった一人でいたのに、今はもう、潮騒も月明かりも、俺に寄り添っていた。

雑音に過ぎないギターの音でさえ、曲のように躍っていた。

あかりが俺の名前を呼んだ気がしたのは、俺の願望が見せた夢か。
それとも、極限状態が見せた幻だったのだろうか。

その夜は携帯電話を抱いて眠った。
今までの苦痛が嘘のように、穏やかな眠りが訪れた。

「有輝、少しは眠れたか」
「はい」
「良かった。いよいよ病院に行かなきゃならんかと思ったが、お前は今、病院に行きやすい状況とは言えんからな」

翌日、俺の顔色を見て、政さんがほっとしたように言った。

その通りだと思う。
これ以上、政さんに迷惑をかけるわけにはいかない。

15秒でいい。
あかり、俺を許して。

それから、俺は1時43分に、あかりに電話をかけ続けた。

薄気味悪がって、おびえているかもしれないと思ったけれど、あかりの声はいつも穏やかだった。
到底あり得ないことだけど、この電話を待っているような気さえした。

「ーーー…俺」

「ーーー…うん」

俺を受け入れてくれたような錯覚に陥るほど、あかりは優しく柔らかい声音で俺を包む。



「なあ、有輝。…大人になれよ」

ビニールハウスの脇で昼食休憩をしている時に、政さんが、空を見上げながら言った。

「…はぁ」

上手く意味が飲み込めなくて、曖昧な相槌になる。
俺が子どもっぽいってことだろうか。

「…まだ、答えを出すのは早すぎる。自分をあきらめるな」

空を見上げたままだけど、政さんの声には、力があった。
俺も、政さんに倣って空を見上げてみた。

どこまでも澄んだ青空に雲が漂う。
青い色が痛いくらい眩しい。

濁りのないものは染まりやすく。
純粋なだけに傷つきやすい。

「少年時代なんて、葛藤だらけだろうが、過ぎ去れば一瞬だ。生き急ぐなよ」

青空を見上げていると、政さんの言うことを素直に聞ける気がした。
灰色に濁った雑多な街で、同じようなことを何度言われても、俺は耳をふさいでいたのに。
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