【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅲ.あかり

13.

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夏休みも残り少なくなった頃、鳴瀬の退院が決まった。

包帯も少し取れて、両眼が覗くようになった。
左瞼に軽い切り傷があるけれど、眼に異常はなく、鳴瀬のきれいな両眼が私を映してくれると、嬉しくて泣きたくなった。

だけど、その夜、鳴瀬からの電話で。

「―――…もう、大丈夫だから」

やんわりと拒絶された。
足元に穴が開いて、音もなく自分が落ちていくのを感じた。
辛うじてつなぎとめたスマートフォンから、

「夏休み、どこにも行ってないよな? …彼氏にも悪いし」

鳴瀬が、小声で呟くように言うのが聞こえた。

もしかしたら。
鳴瀬がずっと言っていた「ごめん」の意味は。

「あかりに足枷をはめて、悪かったと思ってる。あかりのせいじゃないから。俺がやったことに、…責任、感じなくていい」

鳴瀬が話し終わる前に、スマートフォンをつかんだまま、家を飛び出した。

自転車で夜の街を走る。
ぬるい風の中に、少しだけ、秋の気配を感じた。

真夜中。眠る街。夏の名残。

もう、この世界に鳴瀬がいなくなったと思って、
絶望に駆られて裸足で走った夜を思い出す。

足枷なんかじゃないよ。
鳴瀬がいてくれるから、生きていけるんだよ。

病院の夜間受付を入ると、警備員さんに不審な目を向けられて、当然のことながら病室への侵入を止められた。

他に方法を思いつかなくて、床に手をついて頼み込んだ。
どうしても、1秒でも早く、鳴瀬に会って伝えたかった。

私と警備員さんが押し問答を繰り返していると、巡回中の看護師さんが来て、事情を聴いてくれた。

「508号室の鳴瀬さんですね。さっきまだ起きているようでしたから、ご本人に確認してみます。こちらで待っていてください」

そう言ってくれた看護師さんの言葉で、力が抜けて床にへたり込む私を、警備員さんが鋭い目で見つめて、受付の向こうに戻って行った。

病室から戻ってきた看護師さんの姿が見えた途端、弾かれたように駆け寄った私に、

「ただし、私も同行させてもらいますね」

看護師さんが優しくうなずいて、そう告げた。
心の底から頭を下げた。

「…鳴瀬っ」

5階に着いたら、鳴瀬が病室の前に立っていた。
薄暗い夜の病棟で、まだ顔の半分は包帯に隠れたままだけれど、両目はしっかりと私をとらえてくれた。

深夜なのに、耐えきれずに鳴瀬に向かって走った。

「あかり…」

鳴瀬が私を軽々と受け止めてくれた。
言葉よりも先に涙があふれてしまった私を、鳴瀬はそっと、包んでくれた。

泣くんじゃなくて。伝えに来たんだから。

「鳴瀬と一緒に生きていきたい。責任とかじゃなくて、ただ、鳴瀬のそばにいたいの」

鳴瀬を想う気持ちを、言葉にするのは難しくて、全然上手く言えないけれど、私を包む鳴瀬の腕に力が込められたのを感じた。
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