【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅲ.あかり

16.

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心の中に隠し持っていたものをすべて吐き出そうとしているかのように、瀬能くんは早口に、うつむきがちに語った。

ずっと誰かに、聞いて欲しかったかのように。

「あいつの幸せをめちゃめちゃにしてやりたかった。
でも、あいつの信用が地に落ちて、家族もバラバラで、荒れた生活に突き落としても、俺は満たされなかった。俺の望みは叶ったはずなのに、全然満たされなかった」

血を吐くような悲痛な声だった。

満たされるはずないと思った。
瀬能くんが本当に望んでいたのは、多分違うことだから。

「プールで発見されて意識不明だって聞いて、俺のせいだと思った。
あいつがいなくなるって思ったら恐怖だった。あいつに絶望を抱えたまま、いなくなってほしくなかった」

瀬能くんは本当は。
有輝に近づきたかったんじゃないだろうか。
自分に気づいて欲しかったんじゃないだろうか。

「鳴瀬が無事で、…もう、そっとしておこうと思ったんだ。俺の治療ももう、十分だったし。でも、…」

瀬能くんが溜息を吐いて、一瞬横目で私を見た。

…私?

「久しぶりに見たあいつが、あんたと一緒に歩いてて、すごく満たされた顔してた。すごく、大切そうにあんたを見てた」

視線を前に戻して、また瀬能くんが話し始める。

鳴瀬と一緒に歩いたことは、一度しかない。
有輝が戻ってきてくれた日だ…

「それ見たら、また、何もかもぶち壊してやりたい衝動に駆られて、…自分を止められなかった」

首を垂れた瀬能くんは、病室にいる有輝に懺悔しているように見えた。取り返しのつかない過ちを罰してもらいたいようにさえ見えた。

「…こんなことになるなんて思わなかった。あんたの前で、あいつのカッコ悪いとこ見せられればいいと思っただけだった。
なのに…っ、あいつ、何のためらいもなく、自分を刺した…っ」

その重みをかみしめるように、膝に置いた両手を握りしめて、しばらく、瀬能くんは動かなかった。

通りを過ぎる車の音や信号の音、人々のざわめきに紛れて、絞り出すように瀬能くんの声が漏れた。

「あいつ、ずっと後悔してるって言ったけど、俺だって、…俺だってずっと、後悔してたのに…っ」

泣いていたのは、有輝だけじゃなくて、瀬能くんも、同じだったのかもしれない。

『誰かを傷つけたら、一生後悔する。
俺はずっと、お前にしたことを後悔している』

強くて優しい有輝。

神様。

どうか、この先も
有輝が有輝のままで、生きていけますように。
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