【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅲ.あかり

21.

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アコーディオンを買ってもらった。

コンビニエンスストアのアルバイトを始めた。
お金を貯めて返すために。

母は、

「あかりらしいわね。あかりがおねだりするの、初めてだったかもしれないから、気長に待つわ」

そう言って笑った。
私はもういい子ではないけれど、父と母のまなざしは変わらない。

「あかり」

この頃、放課後、有輝と土手で演奏している。
アコーディオンは持ち歩けるから楽しい。
有輝の奏でるギターのすぐ隣に並べるのも嬉しい。

水面に反射する陽の光のように、有輝の声が私を照らす。
世界を照らす。

有輝と演奏していると、どこからか人が集まってきて、足を止めて耳を傾けてくれたり、座って聞き入ってくれたりする。

時には、涙ぐんでいる人もいる。

有輝の詩も曲もその声も、有輝にしか持てない神様からの贈り物だと思う。

文化祭で、有輝目当てに集まった女の子たちは、最初有輝を見て黄色い声を上げていたけれど、有輝の声を耳にすると、静かに涙していた。

有輝を敬遠していた男子生徒たちも、その歌声に惹かれて足を止め、耳を澄ませた。

有輝を疎んじていた教師たちでさえ、沈黙し、聴き入って、涙を浮かべる人もいた。

有輝の声が体育館から学校を包み、誰もが心の中に押し隠している、純粋で傷つきやすいものをそっと癒した。

あの日から、私をやっかんだり、妬んだりする声がなくなり、悪意の視線も感じなくなった。

「あ、…あかりちゃんのピアノも、すごく良かった!」
「いろいろ噂もあったけど、鳴瀬くんを想う気持ちが溢れてて、泣きたくなったよ!」
「…深山先輩も聴き入ってたよ」

クラスメイトたちが、気恥ずかしげにそう伝えに来てくれた。
心の奥で本当は泣いていた小さな自分が、ニッコリ笑って立ち上がり、駆けていくのを感じる。

有輝が私にくれたものは計り知れない。
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