さんかく片想い ―彼に抱かれるために、抱かれた相手が忘れられない。三角形の恋の行方は?【完結】

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1章.告白ミッション

02.

「ななせ、起きてっ! 朝ごはん、食べられなくなるよっ! ななせの好きなオムレツだよっ」

同い年の弟、雨宮ななせは朝が弱い。
大声を出しても、ゆすっても叩いても、ちょっとやそっとじゃ全然起きない。

「もう、なな、…っ」
勢いをつけてななせの布団をはがそうとしたら、長い腕に絡めとられて、
「…もっかい」
ベッドの中に引きずり込まれた。
「しよ」

ななせの滑らかな肌。固い胸板。熱い吐息。寝起きの甘い声。
伏せた長いまつ毛。整った鼻筋。寝癖が付いた柔らかい髪。
薄暗い布団の中。密着する温もり。重なる心臓の音。

「ちょ、…っ」
無駄に動揺する心臓をなだめつつ、
「どこの女の子と間違えてんのよっ‼」
覆いかぶさってくるななせに渾身の蹴りをお見舞いする。

「…てっ! 」
ななせが寝ぼけ眼のまま瞬きして私を認め、
 「…なんだ、つぼみ」
罪のない顔で大きな欠伸をする。

なんだとはなんだ! ドキドキを返せ!

憮然として見上げると、整い過ぎたななせの容姿が目に入る。
ホントにななせってずるいくらい綺麗な顔してる。

「…オムレツ食べる。ケチャップかけといて」
長い足を惜しげもなくひけらかしてベットから降りると、ななせが部屋を出る。現金な奴め。

「…ななせさあ、彼女に起こしてもらえばいいじゃん」
その均整の取れた後ろ姿に付いていくと、
「俺、他人がいると寝れねーもん」
無邪気に言い放ち、斜め上から妙に色っぽい流し目に射られた。
く、…オンナの敵。
この可愛い顔をしたケダモノは、来るもの拒まず女の子を食い散らかしているくせに、どんなに遅くなっても律義に家に帰って来る。


ななせは、私が10歳の時に家族になった。

離婚した父親の再婚相手の連れ子で、両親が事故で他界して身寄りがなくなり、雨宮家の養子になった。今思えば母は結構複雑だったのかもしれないけれど、そんな様子は全く見せず、あれから10年、割と仲良く3人で暮らしている。

「つぼみ、これ、…ナス入ってる」

ななせがオムレツを食べながら顔をしかめた。ななせはナスが苦手。だから極力細かくして、ラタトゥイユ風にしっかり煮込んで、随所に混ぜ込む。

「美味しいでしょ」
「…妖怪ナスばあ」

「なーなーせーくん⁉ なんか言った? ナス増量してあげようか?」
ななせのこめかみを両手拳でぐりぐりすると、
「痛えよ。ばか」
ななせが小声で毒づいた。

身体は一人前なのに、偏食で子どもみたいなななせ。ほっとくと何にも食べないし、朝は弱いし、風邪ひきやすいし、迷子になるし。

「私、講義あるからもう行くけど。ななせも遅刻しないようにね。食べたら、お皿流しに入れておいて」
「…ん」
「今日、帰り遅いんだっけ? 夜は実習の残りで角煮丼にする予定なんだけど」
「んー、…レコーディングだから遅くなるけど、とっといて」

母は病院で看護師として働き、ななせは大学に通う傍ら音楽活動をしている。

「OK! 行ってきまーす」

そして、私。
雨宮つぼみは栄養士を目指して大学の家政学部に通っている。
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