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2章.なりゆきリレーション
04.
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創くんはフラフラした足取りで、女の人に寄り掛かっていた。
「ん~?」
重そうな頭をもたげて、眠そうな瞼を開いて、創くんがぼんやり前を見た。そのまま小さく、「…、のん」消えそうなくらい小さく、唇が叶音ちゃんを呼んだ。
急いで立ち上がったら痺れた足に力が入らなくてよろけた。こんなに弱っている創くんは見たことがない。
胸が痛い。創くんを抱きしめたい。
「ごめんねぇ、妹ちゃん。差し入れ持ってきてくれたんだね。ハジくん、今夜は傷心だから、お姉さんに慰めて欲しいんだって」
華やかな印象の女の人が、私と荷物を見比べて手慣れた仕草で創くんに腕を回す。
胸の奥がキリキリして胃の底が重く沈んだ。
そうか。見たことがないんじゃない。創くんが私には見せてくれなかったんだ。
「…え、差し入れ?」
夢うつつの創くんが私を見つめたままゆらゆら揺れている。
創くんは私の前で、こんな風に酔ったことがない。甘えるように寄り掛かったり、未練がましく叶音ちゃんを呼んだりしない。
「…つー?」
創くんが小首を傾げたまま徐々に目を見開いて、一気に酔いが醒めたような顔をした。
現実を突きつけられる。
私じゃ創くんを酔わせてあげられない。支えてあげられない。
「え? つー? なんで、…」
告白したってキスしたって何の慰めにもならない。私の気持ちは創くんにとって、次の日には酔っぱらって女の人の慰めを必要とするくらい、取るに足らないものなんだ。
「…創くん」
叶音ちゃんの代わりになりたいとかおこがましいことを思っていたわけじゃない。ただほんの少しだけでも、創くんを慰めたかった。
「しようよ」
張りつめていた糸が切れた。
自分でブラウスを力任せに開いて前ボタンを引きちぎった。
「…つぼみっ」
創くんがぎょっとした表情で飛んできてブラウスの前をかき合わせる。
創くんが優しいのは知っている。優しくて、残酷。
創くんは今までもこれからも、私を妹以上には見ない。
「お前、何して、…っ」
「慰めるなら私にさせて? 創くんが好きなの。私だってできるよ。もう、子どもじゃないんだよ⁉」
必死で言い募った私の耳に、冷やかすような口笛の音が聞こえた。
「健気じゃーん。抱いてあげればぁ? ハジくんが好きだから慰めたいんだって~」
女の人の唇が面白そうに歪んだ。
身体のラインが分かるタイトな服装。真っ赤なルージュ。茶色の巻き髪。濃く縁どられた目元。綺麗に磨かれた長い爪。
「差し入れなんて持ってきてさー、妹ちゃんじゃないんだね? でも見るからに初めてそうじゃん。あのねぇ、いいこと教えてあげる。何もかも忘れたいときにこんな重そうな処女相手じゃ楽しめないんだよ? ハジくん、激しいの好きだし、かと言って隠れMだったりもするし、…」
「やめろ‼」
笑いを含んだ女の人の声を遮ると、創くんが上着を脱いで私にかけてくれた。
「つぼみ、落ち着け。そういうのは投げやりにするもんじゃないし、俺はお前を捌け口にはできない」
創くんが。お前じゃダメだって言ってる。
「私は…、創くんになら何されたっていい‼︎」
力の限り創くんにしがみ付いた。
ダメって言わないで。
創くんを慰めたい。投げやりでも捌け口でも何でもいい。
あの女の人みたいに、創くんに必要とされたい。
「ん~?」
重そうな頭をもたげて、眠そうな瞼を開いて、創くんがぼんやり前を見た。そのまま小さく、「…、のん」消えそうなくらい小さく、唇が叶音ちゃんを呼んだ。
急いで立ち上がったら痺れた足に力が入らなくてよろけた。こんなに弱っている創くんは見たことがない。
胸が痛い。創くんを抱きしめたい。
「ごめんねぇ、妹ちゃん。差し入れ持ってきてくれたんだね。ハジくん、今夜は傷心だから、お姉さんに慰めて欲しいんだって」
華やかな印象の女の人が、私と荷物を見比べて手慣れた仕草で創くんに腕を回す。
胸の奥がキリキリして胃の底が重く沈んだ。
そうか。見たことがないんじゃない。創くんが私には見せてくれなかったんだ。
「…え、差し入れ?」
夢うつつの創くんが私を見つめたままゆらゆら揺れている。
創くんは私の前で、こんな風に酔ったことがない。甘えるように寄り掛かったり、未練がましく叶音ちゃんを呼んだりしない。
「…つー?」
創くんが小首を傾げたまま徐々に目を見開いて、一気に酔いが醒めたような顔をした。
現実を突きつけられる。
私じゃ創くんを酔わせてあげられない。支えてあげられない。
「え? つー? なんで、…」
告白したってキスしたって何の慰めにもならない。私の気持ちは創くんにとって、次の日には酔っぱらって女の人の慰めを必要とするくらい、取るに足らないものなんだ。
「…創くん」
叶音ちゃんの代わりになりたいとかおこがましいことを思っていたわけじゃない。ただほんの少しだけでも、創くんを慰めたかった。
「しようよ」
張りつめていた糸が切れた。
自分でブラウスを力任せに開いて前ボタンを引きちぎった。
「…つぼみっ」
創くんがぎょっとした表情で飛んできてブラウスの前をかき合わせる。
創くんが優しいのは知っている。優しくて、残酷。
創くんは今までもこれからも、私を妹以上には見ない。
「お前、何して、…っ」
「慰めるなら私にさせて? 創くんが好きなの。私だってできるよ。もう、子どもじゃないんだよ⁉」
必死で言い募った私の耳に、冷やかすような口笛の音が聞こえた。
「健気じゃーん。抱いてあげればぁ? ハジくんが好きだから慰めたいんだって~」
女の人の唇が面白そうに歪んだ。
身体のラインが分かるタイトな服装。真っ赤なルージュ。茶色の巻き髪。濃く縁どられた目元。綺麗に磨かれた長い爪。
「差し入れなんて持ってきてさー、妹ちゃんじゃないんだね? でも見るからに初めてそうじゃん。あのねぇ、いいこと教えてあげる。何もかも忘れたいときにこんな重そうな処女相手じゃ楽しめないんだよ? ハジくん、激しいの好きだし、かと言って隠れMだったりもするし、…」
「やめろ‼」
笑いを含んだ女の人の声を遮ると、創くんが上着を脱いで私にかけてくれた。
「つぼみ、落ち着け。そういうのは投げやりにするもんじゃないし、俺はお前を捌け口にはできない」
創くんが。お前じゃダメだって言ってる。
「私は…、創くんになら何されたっていい‼︎」
力の限り創くんにしがみ付いた。
ダメって言わないで。
創くんを慰めたい。投げやりでも捌け口でも何でもいい。
あの女の人みたいに、創くんに必要とされたい。
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