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3章.困惑マインド
01.
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ななせの匂いがする、…
ななせのベッドでななせの布団にくるまってななせを感じる。
あんなにそばにいて、隙間なくぴったり繋がっていたのに、ななせがいないことが不思議で、半身を失くしたみたいに心許ない。
寂しい。足りない。
ななせがいないと息が出来ない。
「…って、そんなわけあるか―――っ‼︎」
またもセレナに頭を叩かれて昼日中のカフェテリアに小気味よい音が響く。
うう。気力だけで登校したのに何するの。
今朝。
ななせのベッドで幸せの余韻に浸りながらいつまでもぐずぐずしていたら、夜勤明けの母が帰ってきてしまい、「今日は授業、昼からなんだ~」と速攻で取り繕って家を出てきた。
緩み切って潤み切って腑抜けた身体に活を入れたけど、本気で腰が立たなくて「あんた、どうかしたの?」と母に心配されてしまう体たらくだった。「ほんの腹痛です」というごまかしを信じてくれたかどうかは神のみぞ知る。
なんかもう、母の目を見れない。
っていうか、ななせにどんな顔して会ったらいいのか分からない。
頭をさすりながら恨みがましくセレナを見上げると、
「いや、さあ。だって、ねえ、…」
セレナは一瞬ひるんだものの、すぐに勢いを取り戻して一気にぶちまけた。
「10数年来の片想いが見事に砕け散ったにしちゃあ、一夜にしてそれを吹き飛ばしてくれるイケメンの弟がいるって、あんたちょっとそれは、同情を通り越して逆にムカつくっていうか、素直に羨ましいっていうか。今すぐキツネうどん買って来いや! っていうレベルだから」
謎にキツネうどんを買いに遣わされ、ついでに朝から何も食べていないお腹のためにワカメうどんも買ってみたけれど、胸がいっぱいで喉を通らない。…こともない。
「そりゃあお腹もすくでしょうよ。もはやその力ない歩き方すら苛立たしい」
セレナが鼻息を荒くしながらキツネうどんを啜り上げる。
ご立腹のセレナ様に返す言葉もないけれど。
「…私、どうしたらいいかな」
だし汁の味が染みたワカメを噛みしめずにはいられない。
「え。何よ? 寂しいとか言って、ななせくんの身体が忘れられなくなっちゃった⁉」
「ちょ、…っ‼」
赤裸々な言葉に顔から火が出る思いで慌ててセレナの口を手で塞ぐ。
昼間の混雑したカフェテリアと言えど、誰が聞き耳を立てているか分からない。
というか。自分でも引くんだけど。混乱の嵐なんだけど。
多分。…そういうことなんじゃないかと思う。
身体中にななせの余韻が残っていて。頭からななせが離れない。
「そりゃあ、あんた、…」
私の顔色から事情を読み取ったらしいセレナが言葉を切って、
「初めてが良すぎたね」
初めて同情の色を見せた。
「あのGalaxisのナナセでしょ? 初心者にはレベル高すぎだよ。忘れられないのも無理はない」
そう言ってもらえるとなんか救われる気がする。
もうずっと長い間創くんしか見えていなかったのに、創くんに拒まれて生きる価値を見失うくらい悲しかったのに、それが何だか遠い昔のことみたいに思える。
それってどんだけ軽薄なんだっていうか。
もはやビッチと言われても仕方ないんじゃないかっていうか。
自分で自分が分からない。
「一つだけ言えるとしたら、『経験を積め』かな」
セレナが真顔で私を諭す。
「初めてだからなのか、ななせくんだからなのか分からないじゃん。経験を重ねて見えてくることもあるよ」
「う、…ん」
セレナの言葉に曖昧に頷く。
あんなこと、他の誰かとするって、今は想像がつかない。
「一番いいのは、好きな人とすることだけど、…あんた今日、高校行くんでしょ? 創くんに再チャレンジするってのは?」
それはさすがに心臓に毛が要るわ、…
ななせのベッドでななせの布団にくるまってななせを感じる。
あんなにそばにいて、隙間なくぴったり繋がっていたのに、ななせがいないことが不思議で、半身を失くしたみたいに心許ない。
寂しい。足りない。
ななせがいないと息が出来ない。
「…って、そんなわけあるか―――っ‼︎」
またもセレナに頭を叩かれて昼日中のカフェテリアに小気味よい音が響く。
うう。気力だけで登校したのに何するの。
今朝。
ななせのベッドで幸せの余韻に浸りながらいつまでもぐずぐずしていたら、夜勤明けの母が帰ってきてしまい、「今日は授業、昼からなんだ~」と速攻で取り繕って家を出てきた。
緩み切って潤み切って腑抜けた身体に活を入れたけど、本気で腰が立たなくて「あんた、どうかしたの?」と母に心配されてしまう体たらくだった。「ほんの腹痛です」というごまかしを信じてくれたかどうかは神のみぞ知る。
なんかもう、母の目を見れない。
っていうか、ななせにどんな顔して会ったらいいのか分からない。
頭をさすりながら恨みがましくセレナを見上げると、
「いや、さあ。だって、ねえ、…」
セレナは一瞬ひるんだものの、すぐに勢いを取り戻して一気にぶちまけた。
「10数年来の片想いが見事に砕け散ったにしちゃあ、一夜にしてそれを吹き飛ばしてくれるイケメンの弟がいるって、あんたちょっとそれは、同情を通り越して逆にムカつくっていうか、素直に羨ましいっていうか。今すぐキツネうどん買って来いや! っていうレベルだから」
謎にキツネうどんを買いに遣わされ、ついでに朝から何も食べていないお腹のためにワカメうどんも買ってみたけれど、胸がいっぱいで喉を通らない。…こともない。
「そりゃあお腹もすくでしょうよ。もはやその力ない歩き方すら苛立たしい」
セレナが鼻息を荒くしながらキツネうどんを啜り上げる。
ご立腹のセレナ様に返す言葉もないけれど。
「…私、どうしたらいいかな」
だし汁の味が染みたワカメを噛みしめずにはいられない。
「え。何よ? 寂しいとか言って、ななせくんの身体が忘れられなくなっちゃった⁉」
「ちょ、…っ‼」
赤裸々な言葉に顔から火が出る思いで慌ててセレナの口を手で塞ぐ。
昼間の混雑したカフェテリアと言えど、誰が聞き耳を立てているか分からない。
というか。自分でも引くんだけど。混乱の嵐なんだけど。
多分。…そういうことなんじゃないかと思う。
身体中にななせの余韻が残っていて。頭からななせが離れない。
「そりゃあ、あんた、…」
私の顔色から事情を読み取ったらしいセレナが言葉を切って、
「初めてが良すぎたね」
初めて同情の色を見せた。
「あのGalaxisのナナセでしょ? 初心者にはレベル高すぎだよ。忘れられないのも無理はない」
そう言ってもらえるとなんか救われる気がする。
もうずっと長い間創くんしか見えていなかったのに、創くんに拒まれて生きる価値を見失うくらい悲しかったのに、それが何だか遠い昔のことみたいに思える。
それってどんだけ軽薄なんだっていうか。
もはやビッチと言われても仕方ないんじゃないかっていうか。
自分で自分が分からない。
「一つだけ言えるとしたら、『経験を積め』かな」
セレナが真顔で私を諭す。
「初めてだからなのか、ななせくんだからなのか分からないじゃん。経験を重ねて見えてくることもあるよ」
「う、…ん」
セレナの言葉に曖昧に頷く。
あんなこと、他の誰かとするって、今は想像がつかない。
「一番いいのは、好きな人とすることだけど、…あんた今日、高校行くんでしょ? 創くんに再チャレンジするってのは?」
それはさすがに心臓に毛が要るわ、…
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