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3章.困惑マインド
02.
「つー先輩の初めてってどんな感じでした?」
う。げっぼゲホゲホ、…っっ‼
母校の調理室にて。
調理部の実習は週1回なんだけど、部としては、家庭科食物調理技術検定試験に挑戦したり、文化祭、オープンスクール、国際交流などで出番があるため、週2,3回活動をしたりする。
今日は試験勉強の日で、私はそのアドバイザーも引き受けている。創くんに会える機会を増やすため、出来得る限り積極的に部の活動に参加してきたんだけど、今となっては自分の浅はかさが恨めしい。
昨日の今日で創くんに合わせる顔がない。
仕方がないから、音楽室には極力近寄らずに終わったら速攻帰ろう、と決めてこそこそと生徒たちの学習を見ていたわけだけど。
「良かった? 痛かった? 感動した⁉」
本日のノルマを達成しサクッと帰るぞと思っていたところ、「つー先輩に折り入って教えて欲しいことがあるんですけど」と数名の生徒たちに囲まれ、今一番触れて欲しくないデリケート過ぎる話題を振られてしまう羽目に。
なぜ? 今? その話題⁇
思いっきり引き攣っている私に、後輩たちが溢れんばかりの期待の眼差しを向けてくる。
いやね。興味あることは分かります。先輩も昔は女子高生だったわけで。親には聞けないし、そういうサイト見ちゃったりね、身近な友だちとか先輩とかの経験談に興味津々なのは、分かりますよ。けどね、…
「あ、…えーっと、…」
なんとか無難に濁して逃げようと試みるも、あまりにもタイムリー過ぎて、昨日のななせの甘い声とか指の動きとか柔らかい唇とかが瞬時によみがえってしまい、全身が熱くなる。
「あっ‼ 赤くなった‼」
「良かったんだ。最高だったんだ‼」
「えー、いいな、いいな」
「聞かせて、聞かせてっ‼」
「最近⁉ 最近なの⁉」
現役JKの観察眼は侮れませぬ。
下手な言い訳じゃ放してくれそうにありませぬ。
「…自分が全部、作り変えられる感じ。…だった」
観念してぼそっと答えると、
「「きぃやああああああ――――っ」」
興奮した女子学生の黄色い声の洪水と共に、
「えっ‼ つぼみ⁉」
調理室のドア影から驚愕の叫びが届いた。
「えっ⁉」
驚いて見ると、教室の入り口にまさかの創くんが立っていて、
「あー、創くん。盗み聞きとかえっちぃー」
「ていうかぁー、そゆこと?」
「あー、なるほどなるほど」
「作り変えた相手ってことね。良かったね、つー先輩」
「あたしら、先に帰ります」
「お二人はどうぞごゆっくり~~~」
空気を読んだ現役JKがニヤニヤしながらそそくさと立ち去って行った。
「つー先輩一途だったもんねぇ」
「よかったねぇ」
可愛い後輩たちに悪気がないのは分かってる。私がいつもバレバレな態度だから、気を利かせてくれたのも分かってる。でも、だけど。今だけはっ
創くんと2人にしないで―――――っっ
私の願いは虚しく、生徒たちがいなくなると創くんが足早に教室の中に入ってきて、
「つぼみ? …お前、誰と⁉」
険しい表情で私の腕をつかんだ。力が強い。腕が痛い。
創くん、めっちゃ怒ってる、…
言葉が出なくて、創くんを見つめたまま身を竦ませていると、ふいに私の腕をつかむ創くんの手の力が緩んだ。
「…ごめん。俺のせいだな」
創くんが殴られたみたいに痛そうな顔をした。
よく見たら、顔色が悪い。目の下に隈がある。昨日はだいぶ酔ってるみたいだった。あの後どうしていたのか知る由もないけど、…もしかしたら、あんまり寝ていないのかもしれない。
「…つぼみ、一緒に帰ろう。送ってく」
腕をつかんでいた創くんの大きな手が、下に滑り落ちてゆっくりと私の手を取った。
節くれだった男っぽい指が、指の間に絡まる。
切なくピアノを奏でる創くんの手。創くんの指。
ずっと。創くんのピアノになりたいと思ってた。だけど…
何も言えないまま、創くんに導かれるに任せて歩く。
すっかり放課後で辺りも暗く、学校に残っている生徒も教職員も少ないけれど、手をつないで歩いていたら、誰に見られるとも限らない。
それでも。創くんは手を離さない。
離すつもりはないみたいで押し黙ったまま私の手を握りしめている。むしろ、恋人つなぎで。
これは、どう受け取ったらいいんだろう。
罪滅ぼし? 慰め? 同情? 後悔?
創くんに拒まれてやけになって初めてを捨てたことに対する、…責任?
う。げっぼゲホゲホ、…っっ‼
母校の調理室にて。
調理部の実習は週1回なんだけど、部としては、家庭科食物調理技術検定試験に挑戦したり、文化祭、オープンスクール、国際交流などで出番があるため、週2,3回活動をしたりする。
今日は試験勉強の日で、私はそのアドバイザーも引き受けている。創くんに会える機会を増やすため、出来得る限り積極的に部の活動に参加してきたんだけど、今となっては自分の浅はかさが恨めしい。
昨日の今日で創くんに合わせる顔がない。
仕方がないから、音楽室には極力近寄らずに終わったら速攻帰ろう、と決めてこそこそと生徒たちの学習を見ていたわけだけど。
「良かった? 痛かった? 感動した⁉」
本日のノルマを達成しサクッと帰るぞと思っていたところ、「つー先輩に折り入って教えて欲しいことがあるんですけど」と数名の生徒たちに囲まれ、今一番触れて欲しくないデリケート過ぎる話題を振られてしまう羽目に。
なぜ? 今? その話題⁇
思いっきり引き攣っている私に、後輩たちが溢れんばかりの期待の眼差しを向けてくる。
いやね。興味あることは分かります。先輩も昔は女子高生だったわけで。親には聞けないし、そういうサイト見ちゃったりね、身近な友だちとか先輩とかの経験談に興味津々なのは、分かりますよ。けどね、…
「あ、…えーっと、…」
なんとか無難に濁して逃げようと試みるも、あまりにもタイムリー過ぎて、昨日のななせの甘い声とか指の動きとか柔らかい唇とかが瞬時によみがえってしまい、全身が熱くなる。
「あっ‼ 赤くなった‼」
「良かったんだ。最高だったんだ‼」
「えー、いいな、いいな」
「聞かせて、聞かせてっ‼」
「最近⁉ 最近なの⁉」
現役JKの観察眼は侮れませぬ。
下手な言い訳じゃ放してくれそうにありませぬ。
「…自分が全部、作り変えられる感じ。…だった」
観念してぼそっと答えると、
「「きぃやああああああ――――っ」」
興奮した女子学生の黄色い声の洪水と共に、
「えっ‼ つぼみ⁉」
調理室のドア影から驚愕の叫びが届いた。
「えっ⁉」
驚いて見ると、教室の入り口にまさかの創くんが立っていて、
「あー、創くん。盗み聞きとかえっちぃー」
「ていうかぁー、そゆこと?」
「あー、なるほどなるほど」
「作り変えた相手ってことね。良かったね、つー先輩」
「あたしら、先に帰ります」
「お二人はどうぞごゆっくり~~~」
空気を読んだ現役JKがニヤニヤしながらそそくさと立ち去って行った。
「つー先輩一途だったもんねぇ」
「よかったねぇ」
可愛い後輩たちに悪気がないのは分かってる。私がいつもバレバレな態度だから、気を利かせてくれたのも分かってる。でも、だけど。今だけはっ
創くんと2人にしないで―――――っっ
私の願いは虚しく、生徒たちがいなくなると創くんが足早に教室の中に入ってきて、
「つぼみ? …お前、誰と⁉」
険しい表情で私の腕をつかんだ。力が強い。腕が痛い。
創くん、めっちゃ怒ってる、…
言葉が出なくて、創くんを見つめたまま身を竦ませていると、ふいに私の腕をつかむ創くんの手の力が緩んだ。
「…ごめん。俺のせいだな」
創くんが殴られたみたいに痛そうな顔をした。
よく見たら、顔色が悪い。目の下に隈がある。昨日はだいぶ酔ってるみたいだった。あの後どうしていたのか知る由もないけど、…もしかしたら、あんまり寝ていないのかもしれない。
「…つぼみ、一緒に帰ろう。送ってく」
腕をつかんでいた創くんの大きな手が、下に滑り落ちてゆっくりと私の手を取った。
節くれだった男っぽい指が、指の間に絡まる。
切なくピアノを奏でる創くんの手。創くんの指。
ずっと。創くんのピアノになりたいと思ってた。だけど…
何も言えないまま、創くんに導かれるに任せて歩く。
すっかり放課後で辺りも暗く、学校に残っている生徒も教職員も少ないけれど、手をつないで歩いていたら、誰に見られるとも限らない。
それでも。創くんは手を離さない。
離すつもりはないみたいで押し黙ったまま私の手を握りしめている。むしろ、恋人つなぎで。
これは、どう受け取ったらいいんだろう。
罪滅ぼし? 慰め? 同情? 後悔?
創くんに拒まれてやけになって初めてを捨てたことに対する、…責任?
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