さんかく片想い ―彼に抱かれるために、抱かれた相手が忘れられない。三角形の恋の行方は?【完結】

remo

文字の大きさ
20 / 41
3章.困惑マインド

06.

「…あのさあ。くどいようだけど、ななせくんが忘れられないなら、なおさら創くんとやるべきだよ。言ったじゃん。経験しないと分からないって」

見かねたようにセレナが繰り返す。
セレナの言いたいことは分かる。分かるんだよ。

「…私、欲求不満なのかなあ。身体めあて。なのかなあ」

ちょっと自分が最低に思えてきて、机に頭を打ち付けたまま、額で支えてグリグリのたうつ。

「だーからっ‼ それを創くんで確かめて来なよ。つーか、もう、とっとと上書きされて来い!」

いい加減、しびれを切らしたらしいセレナに手刀で後頭部をど突かれた。

「上書き、…」

突っ伏したまま後頭部を手でさする。

「だって。ななせくんとはどうにもならないんでしょ? 女の子を渡り歩いてて、星の数ほど経験あって、あんたもその中の一人で。いつも食べてる高級黒毛和牛の中に、今夜はちょっとオージー・ビーフ混ざってたかな、くらいのノリなわけでしょ?」

オージー・ビーフね。上手いこと言ったね。
ななせ、私の気合いの入った半裸を見ても無反応だったもんな。

思い出して、乾いた笑いが込み上げる。

「普通でいられる自信があるから、あんたの頼みを引き受けたんだよ。だったらさ、忘れる努力をした方がいいよ。家族だから毎日会っちゃうじゃん? 忘れなきゃ、あんたがつらくなるだけだよ」

セレナの言う通り。なんだろうな。
家族だから。どうにもならない。近いけど遠い。このまま引きずっていたら気まずいだけ。つらいだけ。

それなのに。

スマートフォンが小さく震えて、メッセージが届いた。

『日曜、どこ行きたい? ①公園  ②遊園地 ③動物園 ④映画館 ⑤タワー』

創くんからだった。

「⑥創くんの部屋」
「ちょっと、セレナっ、何するのっ!」

ナチュラルにスマホを奪って返信しようとするセレナから、慌ててスマホを取り返す。

「いいじゃん。順調じゃん。どうせそうなるんじゃん」

セレナに肘で小突かれながら、

上書き。

心の一番奥深いところで、誰にも聞こえないように、頑なな自分が小さく小さくつぶやいた。

…したくない。

「え? なんか言った? てかさ、切り干しアレンジどうなった? この後コウくんに会うんだけど」

「断然、春巻きです。でも、勿体ないからコロッケ推しです」

「なんじゃそら」


*****


「お前、また切り干し作ってんの?」

きゃ―――っ、ななせっ‼︎
近い。近い。近い。死ぬ。

思考が迷宮入りして、いっそ何も考えられずに、大学から帰って夕ご飯の準備をしていたら、後ろからななせにのぞき込まれた。

ていうか。

「…春巻き。よっぽど気に入ったんだな」

手が勝手に切り干し大根を煮ている―――っ‼ 
無意識に春巻きの皮まで切り分けてる――っ‼ 
…恐るべし、ななせ引力。

「まーいいけど、明日はやめろよ」

ななせが私の頭に手をのせてその上に顎をのせた。

きゃあ―――っっ、ななせの息がかかるっ‼
もう、ありとあらゆる神経がななせと触れ合う髪の毛に集中する。
勿論、息も出来ない。

人が窒息死しそうになっているのに、ななせは気にする風もなく、私の頭の上から長い腕を伸ばして彩りのために洗っておいたミニトマトを摘まんだ。

なにその余裕。トマト食べてる場合か!

「…明日はナスだくの麻婆炒めにする」

止めてた息を一気に吐き出し、肩で息をする。
こっちは眠れないし息も出来ないっていうのに。ななせのバカ。

「は? 豆腐にしろよ」
「絶っ対‼ ナス‼」

ありえないほど力を込めたら、

「…出たよ、ナス婆」

ななせに後ろから両頬を摘ままれた。
きゃああ―――っ、伸びる―――っ

ていうか。無邪気に心を撃ち抜くのやめて欲しい。
ななせの滑らかな指は頬っぺだけじゃなく心を掴んじゃうんだよ。

「お前、なんか調子悪いの?」

ななせが頬を摘まんだまま後ろから私をのぞき込む。

「マジで顔色ナスみたいだし、…って、なんか、赤いし」

お前のせいだよっっ

「なんっ、…でもないよ。ファンデーション変えただけだよ。ななせはあっち行っててよ」

これ以上ななせといたらいろいろ崩壊してしまう。

強引にななせをリビングに追いやると、付けっぱなしのテレビにななせが映っていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?

とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。 高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。 明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!! そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。 「なぁ、俺と結婚しないか?」 直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。 便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。 利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました! 「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

【完結】付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた

ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」 三十二歳、独身同士。 幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。 付き合ってもないのに。 夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。 断る理由が、ない。 こうして、交際0日で結婚することが決まった。 「とりあえず同棲すっか」 軽いノリで決まってゆく未来。 ゆるっとだらっと流れていく物語。 ※本編は全7話。 ※スパダリは一人もいません笑