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3章.困惑マインド
07.
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『癒されたい 癒したい 芳醇なカカオとミルクのコクが織りなす魅惑のスイーツ Calro 新登場 ―――song by Galaxies』
きゃあああ―――っ、ななせがきれいなお姉さんと絡み合ってるっ‼
な、な、な、…
「何してんの、ななせっ‼」
「は?」
多分溶けていくチョコレートとか濃厚な味わいとかそういうのを表したスイーツのCMなんだけど。そのイメージキャラクターにななせが起用されてるみたいで、イメージソングもななせのバンドが担当してるみたいなんだけど、…
なんか、ななせの表情がやらしいぃぃぃ―――っ
あんな顔、皆さんにさらしていいと思ってんのかっ
「ななせのバカっ‼」
「…何怒ってんだよ?」
「ふしだらでしょう―――っ⁉」
何だかよく分からない怒りがこみあげて、ななせに殴り掛かったら、
「ふしだら、なぁ」
そのまま受け止められてななせの胸に収まった。
わーわーわー、…脳内大パニック。これは無理っ‼ これはさすがに心臓が爆発するっ‼
「…お前さ」
ななせの声が頭の上から降って来る。低くかすれた。甘い響き。
ななせの鼓動が耳に振動して、それ以上に壊れそうに高鳴っている自分の心臓の音が聞こえる。
なになになに―――――っ 息が止まる―――っ‼
「…朝ちゃんと起こしてくんない?」
ななせが私の髪を指に巻きつけてくるくる弄ぶ。
あ。…その話、ね。
無意識に止めていた息を一気に吐き出すと、なんだか頭がクラクラした。
その役目。まだ続けていいんだという安堵と、ホントにななせは何も変わらないんだなという寂寞と。複雑で反応に困る。
「聞いてる?」
ななせの指が私の頭をコンコン叩く。
ななせに触られるの気持ちいい。気持ちよくて泣きたい。
「…うん」
ななせにとって私はどこまでも姉なんだな。
あんなことしたけど、ちょっとくらいくっついたって寝室に入ったって、別にどうにもならないんだな。
こんなに近くに居ても、液晶の向こう側みたいに遠い。
私とななせの間には見えない壁がある。
「…すぐだよ」
どうにも寂しさを拭いきれずにいたら、ななせの指が髪を優しく梳いた。
ななせの少しかすれた柔らかい声が、胸に切なく落ちる。
「すぐに、忘れる」
「え?」
顔を上げた時にはななせはもう私から離れて、リビングのソファに座り込んでいた。
「お腹空いた。春巻き、早くね」
そして、何事もなかったかのようにテレビに目を向けた。
そうだっ、火、点けっぱなし。切り干し大根煮込み過ぎだよ。
くったくたになってしまう、…っ
急いでキッチンに走り、火を止めてから、
忘れる。って何を。
振り返ってソファに座るななせの後ろ姿を眺めた。
聞いたら。答えてくれる?
ななせの後姿に、また訳もなく泣きそうになっていたら、カウンターに置いていたスマートフォンが震えた。
『採点中でまだ帰れず』
創くんからのメッセージ。写真が添えてある。
音楽準備室の机に寂しくコンビニおにぎりがのっている。涙マーク。
『お疲れ様』
返信すると、
『日曜、晴れ予報だな』
お日様マークと一緒にメッセージが返ってきた。
日曜日は、海の見える公園に行きたいと言ったら、創くんが、サイクリングやピクニックが出来るところ、夜景や飛行機が見えるところをいろいろ調べてくれていた。
『楽しみ』
送ってから、なんだか胸の奥がズキズキした。
楽しみなのは本当。本当だけど。
ななせの後姿に目を戻す。
柔らかい髪。形のいい耳の先。綺麗なカーブを描く肩のライン。
『すぐに、忘れる』
ななせ。私は。
ななせを忘れられないんじゃなくて、忘れたくないんだよ。
きゃあああ―――っ、ななせがきれいなお姉さんと絡み合ってるっ‼
な、な、な、…
「何してんの、ななせっ‼」
「は?」
多分溶けていくチョコレートとか濃厚な味わいとかそういうのを表したスイーツのCMなんだけど。そのイメージキャラクターにななせが起用されてるみたいで、イメージソングもななせのバンドが担当してるみたいなんだけど、…
なんか、ななせの表情がやらしいぃぃぃ―――っ
あんな顔、皆さんにさらしていいと思ってんのかっ
「ななせのバカっ‼」
「…何怒ってんだよ?」
「ふしだらでしょう―――っ⁉」
何だかよく分からない怒りがこみあげて、ななせに殴り掛かったら、
「ふしだら、なぁ」
そのまま受け止められてななせの胸に収まった。
わーわーわー、…脳内大パニック。これは無理っ‼ これはさすがに心臓が爆発するっ‼
「…お前さ」
ななせの声が頭の上から降って来る。低くかすれた。甘い響き。
ななせの鼓動が耳に振動して、それ以上に壊れそうに高鳴っている自分の心臓の音が聞こえる。
なになになに―――――っ 息が止まる―――っ‼
「…朝ちゃんと起こしてくんない?」
ななせが私の髪を指に巻きつけてくるくる弄ぶ。
あ。…その話、ね。
無意識に止めていた息を一気に吐き出すと、なんだか頭がクラクラした。
その役目。まだ続けていいんだという安堵と、ホントにななせは何も変わらないんだなという寂寞と。複雑で反応に困る。
「聞いてる?」
ななせの指が私の頭をコンコン叩く。
ななせに触られるの気持ちいい。気持ちよくて泣きたい。
「…うん」
ななせにとって私はどこまでも姉なんだな。
あんなことしたけど、ちょっとくらいくっついたって寝室に入ったって、別にどうにもならないんだな。
こんなに近くに居ても、液晶の向こう側みたいに遠い。
私とななせの間には見えない壁がある。
「…すぐだよ」
どうにも寂しさを拭いきれずにいたら、ななせの指が髪を優しく梳いた。
ななせの少しかすれた柔らかい声が、胸に切なく落ちる。
「すぐに、忘れる」
「え?」
顔を上げた時にはななせはもう私から離れて、リビングのソファに座り込んでいた。
「お腹空いた。春巻き、早くね」
そして、何事もなかったかのようにテレビに目を向けた。
そうだっ、火、点けっぱなし。切り干し大根煮込み過ぎだよ。
くったくたになってしまう、…っ
急いでキッチンに走り、火を止めてから、
忘れる。って何を。
振り返ってソファに座るななせの後ろ姿を眺めた。
聞いたら。答えてくれる?
ななせの後姿に、また訳もなく泣きそうになっていたら、カウンターに置いていたスマートフォンが震えた。
『採点中でまだ帰れず』
創くんからのメッセージ。写真が添えてある。
音楽準備室の机に寂しくコンビニおにぎりがのっている。涙マーク。
『お疲れ様』
返信すると、
『日曜、晴れ予報だな』
お日様マークと一緒にメッセージが返ってきた。
日曜日は、海の見える公園に行きたいと言ったら、創くんが、サイクリングやピクニックが出来るところ、夜景や飛行機が見えるところをいろいろ調べてくれていた。
『楽しみ』
送ってから、なんだか胸の奥がズキズキした。
楽しみなのは本当。本当だけど。
ななせの後姿に目を戻す。
柔らかい髪。形のいい耳の先。綺麗なカーブを描く肩のライン。
『すぐに、忘れる』
ななせ。私は。
ななせを忘れられないんじゃなくて、忘れたくないんだよ。
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