さんかく片想い ―彼に抱かれるために、抱かれた相手が忘れられない。三角形の恋の行方は?【完結】

remo

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5章.さんかく片想い

01.

「ふぅむ、そうか。分かってしまったか」
「…うん」

カフェテリアでセレナと一緒にコウ先輩作成の切り干しハンバーグを試食する。切り干し大根のサークル実習は終わったんだけど、、リベンジに燃えるコウ先輩は連日切り干しアレンジにハマっていて、おかげでセレナは至極快腸なんだとか。

「え、これ美味しいっ‼ すごい、先輩。美味しいですっ」

ホテル差し入れの顛末から自分の気持ちがはっきり分かったという報告を、セレナにしていたところ、コウ先輩のハンバーグが美味し過ぎて横道に逸れる。

「うんうん、そうだろ。それ、豆腐と味噌とひじきが入ってるの。味噌と切り干しの甘さ、豆腐の旨味が絶妙にいいよなっ」

「うん‼ すごいです‼ これは品評会で絶賛されてたカルボナーラに勝るとも劣りませんっ‼」

コウ先輩に太鼓判を押すと、セレナが冷めた声でつぶやいた。

「そのレシピ、パクリだからね」
「セレナお前、言い方考えろよ。『彼を知り己を知れば百戦あやうからず』って言うだろ。いやあ、みんなホントよく考えるよな」

うんうんと頷いているコウ先輩に気づかれないように、

「オリジナルレシピの開発に限界を感じたみたい」

セレナがこそっと囁きかけた。

そうか、なるほどね。まあでもオリジナルにこだわらなくてもいいと思う。食材を美味しく楽しくいただければそれが一番だと思う。

ななせがナスを美味しく食べてくれるレシピ、見つけたいなぁ。

「…なんかすっきりした顔しちゃって。どうすんのよ? ななせくんに告白するの?」

頬を突いてくるセレナに首を横に振った。

「しないよ。先輩言ってたじゃん。まずは敵情を把握しないとさ。ななせ、好きな人がいるみたいだし、…」

それを考えると、どうにも切ないけど。
『彼女じゃねえよ』
ななせの好きな人、か。考えてみたら、私ななせのこと、全然わかってない。

「あんた、それでまた何十年も片想いするつもりじゃないでしょうね? 20代はあっという間に終わっちゃうんだからねっ」

セレナが耳元でキャンキャン喚く。

「…うん」

そこは素直に頷いた。
分かってる。想ってるだけじゃ何も始まらないって。
結局、創くんだって捨て身の告白をもって初めて本気で向き合ってくれたわけだし。

でも、今は自分の気持ちを認めただけで精一杯というか。
ななせのことをもっと知って、全力で応援できたらいいなあと思う。
勿論、ななせの一番近くに居たいとか、ななせに必要とされたいとか、いろいろ思いはあるんだけど。

そんなわけで、最近はずっとGalaxiesの音楽を聴いている。
突き抜けるようなオリビアちゃんの高音が耳に心地いいサウンドで、ななせのメロディと歌詞が胸に沁みる。ななせの音楽センスに改めて感動する。

目前に迫ったGalaxiesのドームライブ、物凄く楽しみなんだ。



ライブ当日は秋晴れだった。
澄み渡った空は雲一つなく、絶好の行楽日和だった。といっても、Galaxiesのライブは世情を鑑みてハイブリッド型ライブとして開催するらしく、観客は一部関係者に限定されているため、ドーム周辺に人の混雑は見られない。

「つーは晴れ女だな」

しかも開演時間は夕方だから、昼間から会場近辺に居ても仕方がないんだけど。

「先週も晴れたよな」

穏やかな秋の休日。家族連れ、カップル、友だち同士等で賑わいをみせるドーム近くのアトラクションに創くんが私を連れ出してくれた。そわそわして落ち着かなくて家に居られそうにない私を見越して。

創くんには、正直に伝えた。

「他に好きになってしまった人がいるから付き合えない」って。

でも。

「知ってるよ」

創くんは、まるで動じることなく優しく笑って、「今度は俺が追いかけるって言っただろ?」って大きな手で頭を撫でてくれた。

セレナには、「せっかく実ったのに勿体ない。つぼみは天性の片想い気質だな」って呆れられた。

人を変な括りにしないで欲しい。

私だって両想いになりたいよ。でも、好きな人に好きになってもらうのって世界で一番難しいことなんだよ。奇跡なんだよ。

だからせめて、好きな人の幸せを願える人になりたいんだよ。

パラシュートのアトラクションに乗り、シューティングゲームをして、ウォーターショーを観た。ランチをとって、散歩しながら雑貨巡りをして、カフェブレイクした。

ななせに会える夕方17:00。
やっとやっとドームに入れてもらえて、嬉しくて指定座席に駆け寄って座ったら、急に緊張してきて何度もトイレに立ってしまい、「まあ、落ち着け」創くんに笑われた。

開演時刻18:00。
会場の照明が一時全て消えて、Galaxiesの音が流れ始めたら、心臓がつかみ取られるようにきゅうっと締まって微塵も動けなくなった。五感の全てをステージに向ける。そこに立つ、ななせに。

色とりどりの光が降り注いで、会場に光の環が舞う。広い会場が息を止めて見守るステージにまばゆい光が放たれる。その光の中に、ななせがいた。
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