さんかく片想い ―彼に抱かれるために、抱かれた相手が忘れられない。三角形の恋の行方は?【完結】

remo

文字の大きさ
34 / 41
5章.さんかく片想い

06.

やっちまっただ…

洗いざらいぶちまけて、やっと理性が戻ってきた時には何もかもが遅かった。あっけに取られた顔をしたななせが長いまつ毛を瞬かせ、固まったまま動かない。

終わった。終わったよ。

走馬灯のように今までの人生が脳裏をよぎる。

それなりに真面目に生きてきた。こんなはずじゃなかった。
女の子に慣れ腐ってる天然たらしの弟にあっという間に落とされて、逆切れの告白するって、さすがにないわ。恥ずか死ねる天才の私でも、こればっかりはないわ。

そんなつもりなかったのに。
ななせの足を引っ張るようなこと、したくないのに。ななせの役に立てるように、全力で応援するって思ってたのに。

「…ちょっと、アナグラ入ってモグラから出直してきます」

いたたまれなくてすごすごと布団に潜り込んだ。ななせの顔が見れない。

「…探さないでください」

今なら熱で頭おかしくなってたって思ってもらえるかも。ていうか、何言ったか分からなかったってこともありうるかも!

「…上書きってお前、創くんとやってないの? そんな俺が好きなの?」

…な、訳なかった―――――っ
しっかりばっちりご理解されてる上、この期に及んで無自覚に甘いななせの声にダメ押しされた。

なにこの辱め。
もう絶対言わない。何も言わない。何が何でもここから出ない。
石のように固い決心で天照大御神よろしく岩屋に閉じ籠っていたのに。

「つぼみ?」

すぐそこにななせの気配がする。布団の上からななせの手の温もりを感じる。

「出てこいよ」

ずるい。甘くかすれて優しい声。柔らかく溶けるななせの声。

「つぼみ。顔見せて?」

ずるいよ。心地良い響き。甘く震える響き。私の名前を呼ぶ、ななせの声が好き。

「…キスしてやるから」

心を全部つかまれる、甘い誘惑。抗えない魔法。惹きつけられて離れられない、…

って。

「ななせ、みんなにしてるじゃんっ‼」

思い出しても胸が軋む。危ない危ない、無自覚たらしめ。

ななせは少し黙ってから、

「…お前、楽屋来たんだっけ。あれは、事故だから」

どこか痛そうな声音で続けて、

「わ、私にもしたじゃんっ。簡単に、誰にでもしてるんじゃんっ」

「…簡単じゃねえよ」

静かに深い感情を見せた。

そっと布団の隙間からのぞくと、布団を捲り上げられて抗う間もなく、ななせの長い腕に引き寄せられた。

「簡単じゃない」

ベッドに乗り上げたななせの長い足の間に収まって、ななせの硬い身体に包まれる。張り付いた身体から、ななせの鼓動が伝わる。背中に回された腕の強さを感じる。

見上げたら、澄んだきれいな瞳が真っすぐに私だけを映していた。

ななせの唇がそっと優しく誓うように私の唇に重ね合わされた。

「ななせ、…」

ななせを感じる。伝わる。愛しい。愛しい、ななせ。
無理だ。隠せない。なかったことになんて出来ない。

「大好き…」

ななせが好き。ななせが欲しい。ななせだけが欲しい。
もう頭も身体も心の中も。ななせでいっぱいでななせだけしか入れない。

ななせがすごく優しく瞳を緩めて、腕の中に私を閉じ込めると深い深いキスをした。

引き寄せられてぴったり張り付いた身体からななせの体温が伝わる。ななせの匂いに包まれる。自分が溶けて溢れて全力でななせを求める。

「な、…なせ。うつる、よ…」

ほんの一瞬、ななせが離れた隙になけなしの理性が戻ってきて、ななせを伺い見ると、ななせはちょっと楽しそうに片頬を上げた。

「俺、薬飲んだし」

「声、出なくなったら、…」
「いいよ。俺歌わないから」
「歌ってたよね…?」
「お前が居たからな」

それって、どういう、…

意味なのか聞きたかったのに、開きかけた唇はななせの性急な舌に塞がれた。

絡めとられて絡み合って蕩けて溶かされて、混ざって交わって潤んで潤って、溢れ出して、もう何も考えられない。

ななせの熱に浮かされるまま、気が付いたら身にまとうものがなくなって素肌にななせを感じていた。

「ななせ、…」
「…無理。抱かせて」

下からななせを見上げたら、泣きたいくらい綺麗なななせが切なさと愛しさの入り混じった瞳を揺らして私を見ていた。

「俺がこの間、どんな思いでお前抱いたと思ってんだよ?」

どんな、…

「…ホントむかつく。病み上がりとか知らねえから」

ななせが滑らかに引き締まった美しい身体全てで、痛いくらい強く私を抱きしめた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?

とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。 高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。 明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!! そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。 「なぁ、俺と結婚しないか?」 直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。 便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。 利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました! 「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

【完結】付き合ってもいないのに、幼なじみの佐藤がプロポーズしてきた

ぽぽよ
恋愛
「俺らさ、結婚しない?」 三十二歳、独身同士。 幼なじみの佐藤が、たこ焼きパーティの最中に突然言い出した。 付き合ってもないのに。 夢見てた甘いプロポーズじゃないけれど、佐藤となら居心地いいし、給料もあるし、嫁姑問題もないし、性格も知ってる。 断る理由が、ない。 こうして、交際0日で結婚することが決まった。 「とりあえず同棲すっか」 軽いノリで決まってゆく未来。 ゆるっとだらっと流れていく物語。 ※本編は全7話。 ※スパダリは一人もいません笑