41 / 41
番外編.もう少しだけあと少しだけ
04.
しおりを挟む
「な、…なせ」
夕食に切り干し大根の春巻きを食べた後、寝静まってから、約束通りつぼみを食べた。何度目かに弾け飛んだあと、疲れ果てて眠るつぼみを一ミリの隙間もないほど密着したまま抱きしめる。
「はる、…まき」
無意識に俺に擦り寄ると、つぼみが薄桃色に腫れた唇を誘うように開いて何かつぶやく。その唇をそっと舐めてから塞ぐと、繋がったままの身体がねだるように俺を締め付けた。
本当は。
俺は代わりなんだと分かっている。
つぼみは、一途にずっと想い続けている人がいて。でも、そいつにもずっと好きな奴がいて。どこまでも噛み合わずに俺のところに落ちてきた。
単純で真面目でバカなつぼみは、つけ込んだ俺に義理立てて創くんとできなかったらしいけど、一度でも経験したらもう戻ってこないと思う。
本当に、本気で、心底愛しいと思う相手は、何もかもが全く違うということを、
俺は最近知った。
でも。
「俺さ、…」
柔らかく濡れて吸い付くように心地よいつぼみの素肌に口づける。俺が触るとつぼみの全身は艶やかに赤く色づき、すぐに潤って、永遠に閉じ込めておきたいほど甘く素直に俺に応える。
「…切り干し大根の春巻き、特別好きなわけじゃないんだけど」
嬉しそうに連日春巻きを揚げ続けているつぼみには、まだ言えずにいる。
本当に伝えたいことは、上手く言葉に出来ない。
「なな、せ、…」
耐えかねてねだるように甘く震えるつぼみを緩やかに揺らして、
「…ごめんな」
言葉ごとつぼみを絡めとって忘我の極みに溶け出す。
その時が来たら。きっと手を離すと誓うから。
今はまだもう少しだけ。俺の腕の中にいて。
こんなに何もかもを譲り受けてしまった後で、手離さなきゃいけないなんて、喪失感は想像もつかない。
多少距離を置いたり、酒に溺れたりしたくらいでは、到底再起できない。
知らなかった頃には戻れない。でも。手に入れなければ良かったとも思わない。
『後悔するなよ』
どうせ失くさなきゃいけないものなら初めから手に入れなければいいなんて思えない。今、この瞬間は嘘じゃない。
心ごと身体ごと、俺の全てでつぼみを抱きしめる。
マーキングなんてしたって、俺につぼみは縛れない。
つぼみの幸せを壊すくらいなら、迷いなく自分を抹消する。
「ななせ、だいすき、…」
満足そうなつぼみに口づける。
世界一残酷で愛しい。かけがえのない俺の宝物。
夕食に切り干し大根の春巻きを食べた後、寝静まってから、約束通りつぼみを食べた。何度目かに弾け飛んだあと、疲れ果てて眠るつぼみを一ミリの隙間もないほど密着したまま抱きしめる。
「はる、…まき」
無意識に俺に擦り寄ると、つぼみが薄桃色に腫れた唇を誘うように開いて何かつぶやく。その唇をそっと舐めてから塞ぐと、繋がったままの身体がねだるように俺を締め付けた。
本当は。
俺は代わりなんだと分かっている。
つぼみは、一途にずっと想い続けている人がいて。でも、そいつにもずっと好きな奴がいて。どこまでも噛み合わずに俺のところに落ちてきた。
単純で真面目でバカなつぼみは、つけ込んだ俺に義理立てて創くんとできなかったらしいけど、一度でも経験したらもう戻ってこないと思う。
本当に、本気で、心底愛しいと思う相手は、何もかもが全く違うということを、
俺は最近知った。
でも。
「俺さ、…」
柔らかく濡れて吸い付くように心地よいつぼみの素肌に口づける。俺が触るとつぼみの全身は艶やかに赤く色づき、すぐに潤って、永遠に閉じ込めておきたいほど甘く素直に俺に応える。
「…切り干し大根の春巻き、特別好きなわけじゃないんだけど」
嬉しそうに連日春巻きを揚げ続けているつぼみには、まだ言えずにいる。
本当に伝えたいことは、上手く言葉に出来ない。
「なな、せ、…」
耐えかねてねだるように甘く震えるつぼみを緩やかに揺らして、
「…ごめんな」
言葉ごとつぼみを絡めとって忘我の極みに溶け出す。
その時が来たら。きっと手を離すと誓うから。
今はまだもう少しだけ。俺の腕の中にいて。
こんなに何もかもを譲り受けてしまった後で、手離さなきゃいけないなんて、喪失感は想像もつかない。
多少距離を置いたり、酒に溺れたりしたくらいでは、到底再起できない。
知らなかった頃には戻れない。でも。手に入れなければ良かったとも思わない。
『後悔するなよ』
どうせ失くさなきゃいけないものなら初めから手に入れなければいいなんて思えない。今、この瞬間は嘘じゃない。
心ごと身体ごと、俺の全てでつぼみを抱きしめる。
マーキングなんてしたって、俺につぼみは縛れない。
つぼみの幸せを壊すくらいなら、迷いなく自分を抹消する。
「ななせ、だいすき、…」
満足そうなつぼみに口づける。
世界一残酷で愛しい。かけがえのない俺の宝物。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました
上日月
恋愛
人情と江戸の風情が残る下町のたい焼き屋「小濱堂」の看板娘・小濱鈴子(こはまりんこ)。
ひょうきんな父と共に毎日美味しいたい焼きをつくりながら、しっかり者の5歳の弟・湊(みなと)になるべく母の不在を感じさせないよう、どんなときも明るい笑顔だけは絶やさずにいた。
実はその可愛らしい顔立ちから、弟が生まれる前まで"こはりん"と呼ばれる、そこそこ有名なキッズモデルだった鈴子。
でも、それは下町唯一の大衆演劇場だった、今はなき「柳生座」の御曹司。のちに日本の映画界を担う二枚目スターとなった、柳生拓真(やないたくま)の存在が大きく関係していた。
演技の道に進むことを選んだ湊の付き添い人として、一生関わらないと決めていた場所へもう一度戻ることになった鈴子。
そして、いきなり天才子役の片鱗を見せた湊は大役を掴み取る!!
ただ、その父親を演じるのが、後味の悪い別れをした元カレ・拓真だとは聞いてないっ!?
可愛い弟の夢を守るため「顔良し!欲なし?元気なし?」な天才俳優のお世話まで引き受ける羽目になる。
小濱 鈴子(こはま りんこ)30歳
たい焼き屋の看板娘
×
柳生 拓真(やない たくま)30歳
天才俳優
cupid👼
小濱 湊(こはま みなと)5歳
天才子役
※エブリスタ・ベリーズカフェにも掲載しています。
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
「四半世紀の恋に、今夜決着を」
星井 悠里
ライト文芸
赤ちゃんからの幼馴染との初恋が、ずっと、心の端っこにある。
高校三年のある時から離れて、もうすぐ25歳なのに。
そんな時、同窓会の知らせが届いた。
吹っ切らなきゃ。
同窓会は三か月後。
私史上、いちばん綺麗になって、けじめをつけよう。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる