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「じゃ~ん、3番が右隣にキス!」
恐ろしいくじ引きをさせられた上、恐ろしい宣告が下る。
3番、って。
「あ、3番…」
柚くんがくじの札を広げる。
右隣、って。
「いや~~~ん! 清水葉留絵、キス待ち顔披露させていただきま~す」
「いよっ、ハルエちゃ~ん」
「…てか、絶対仕込んだよな」
柚くんが清水さんにキスする。
心臓がおかしな動きを始めた。
ただのゲームでも。お遊びでも。そんなの。
そんなの見たくない。
目と耳を塞いでテーブルにうつむいた。
隣で柚くんが動く衣擦れの音がかすかに聞こえて。
「あ、間違えた」
わずかに頭を引き寄せられたかと思うと、こめかみに柔らかい唇が触れるのを感じた。
「やだぁ~、ひろやン。間違えちゃったとか、か・わ・い・い~~」
「おいこら、藤倉。こっちは完全な噛ませ犬かい!」
「…自業自得でしょう」
身体中の血液が、顔に集中した。
こめかみの感触がリアルで、火がついたように熱い。
今、…今、…っ
頭が爆発して涙腺が壊れた。
「…主任? 大丈夫ですか?」
周りの喧騒は何も聞こえない。目を開いているのに何も映らない。
「お、…」
自分が何を言って、どう動いたのかも定かではないけれど。
「お手洗いに行ってきます!」
どうにかその場を離れた。
「すみません、ビールお代わり! 瓶で!」
「もお~、橘ちゃんたら、乙女」
「経理課の葵上は永遠の処女ですからね。ちゃんと謝れよ、藤倉」
「……じゃねえし」
お手洗いの壁に頭を打ち付けた。
落ち着け、落ち着け、あおい。
ゲーム! ゲームだから!
だけど。
柚くんのあの長い綺麗な指が私の頭に触れて、
柚くんのあの桜色の柔らかい唇が確かに私の、…
あああああーーーーーっ
どうしよう、死ぬ。
血管が切れて死んでしまう。
ほんの一瞬だったけど、リアルな感触が繰り返し脳内再生されて
まともに息ができない。
トイレでかれこれ30分は悶絶してからようやくドアを開けると、
待っていたらしき女の人がいい加減にしろ、酔っ払いという顔で見てきた。
そうだ、宴会の余興。酔っ払いの戯れ。
…何の意味もない。
水道の水をかぶってようやく顔のほてりが覚めた。
泣いたりかぶったりでもう化粧がぐちゃぐちゃだ。
あの場を収めるための、…無意味なキス。
洗面台の鏡には、疲れた顔のあか抜けないオバサンが映っていて
成長のない自分に嫌気がさした。
ため息をつき、自分を奮い立たせてトイレから出ると、通路に柚くんが立っていた。
ヤバい、泣きそう。
今、柚くんの顔を見たら、せっかく修復したメンタルが速攻で崩壊してしまう。
身体を動かすことが出来ず、通路の途中で立ち止まる。まともに前を向けず、床に視線を落とす。後からトイレに入った女の人が、この酔っ払い迷惑オンナ、と言わんばかりに足音荒く私の横を抜けていった。
柚くんの長い脚がゆっくりと私に近づく。
無理…っ
硬く目を閉じて無意識に息を止めると、
むに。
両頬を指でつままれた。
恐る恐る目を開けると、すぐ目の前に柚くんの綺麗な顔がある。
「…ばか」
柚くんのきれいな瞳が真っすぐに私を見ていた。
柚くんは軽く私の頭を小突くと、背中を向けて先に戻って行く。
バカ、…だよね。
柚くんの背中が涙でにじむ。
柚くんの言葉が甘く聞こえてしまう。
柚くんの手が優しく感じてしまう。
柚くんのキスに意味を探してしまう。
ホント、バカだよね。
恐ろしいくじ引きをさせられた上、恐ろしい宣告が下る。
3番、って。
「あ、3番…」
柚くんがくじの札を広げる。
右隣、って。
「いや~~~ん! 清水葉留絵、キス待ち顔披露させていただきま~す」
「いよっ、ハルエちゃ~ん」
「…てか、絶対仕込んだよな」
柚くんが清水さんにキスする。
心臓がおかしな動きを始めた。
ただのゲームでも。お遊びでも。そんなの。
そんなの見たくない。
目と耳を塞いでテーブルにうつむいた。
隣で柚くんが動く衣擦れの音がかすかに聞こえて。
「あ、間違えた」
わずかに頭を引き寄せられたかと思うと、こめかみに柔らかい唇が触れるのを感じた。
「やだぁ~、ひろやン。間違えちゃったとか、か・わ・い・い~~」
「おいこら、藤倉。こっちは完全な噛ませ犬かい!」
「…自業自得でしょう」
身体中の血液が、顔に集中した。
こめかみの感触がリアルで、火がついたように熱い。
今、…今、…っ
頭が爆発して涙腺が壊れた。
「…主任? 大丈夫ですか?」
周りの喧騒は何も聞こえない。目を開いているのに何も映らない。
「お、…」
自分が何を言って、どう動いたのかも定かではないけれど。
「お手洗いに行ってきます!」
どうにかその場を離れた。
「すみません、ビールお代わり! 瓶で!」
「もお~、橘ちゃんたら、乙女」
「経理課の葵上は永遠の処女ですからね。ちゃんと謝れよ、藤倉」
「……じゃねえし」
お手洗いの壁に頭を打ち付けた。
落ち着け、落ち着け、あおい。
ゲーム! ゲームだから!
だけど。
柚くんのあの長い綺麗な指が私の頭に触れて、
柚くんのあの桜色の柔らかい唇が確かに私の、…
あああああーーーーーっ
どうしよう、死ぬ。
血管が切れて死んでしまう。
ほんの一瞬だったけど、リアルな感触が繰り返し脳内再生されて
まともに息ができない。
トイレでかれこれ30分は悶絶してからようやくドアを開けると、
待っていたらしき女の人がいい加減にしろ、酔っ払いという顔で見てきた。
そうだ、宴会の余興。酔っ払いの戯れ。
…何の意味もない。
水道の水をかぶってようやく顔のほてりが覚めた。
泣いたりかぶったりでもう化粧がぐちゃぐちゃだ。
あの場を収めるための、…無意味なキス。
洗面台の鏡には、疲れた顔のあか抜けないオバサンが映っていて
成長のない自分に嫌気がさした。
ため息をつき、自分を奮い立たせてトイレから出ると、通路に柚くんが立っていた。
ヤバい、泣きそう。
今、柚くんの顔を見たら、せっかく修復したメンタルが速攻で崩壊してしまう。
身体を動かすことが出来ず、通路の途中で立ち止まる。まともに前を向けず、床に視線を落とす。後からトイレに入った女の人が、この酔っ払い迷惑オンナ、と言わんばかりに足音荒く私の横を抜けていった。
柚くんの長い脚がゆっくりと私に近づく。
無理…っ
硬く目を閉じて無意識に息を止めると、
むに。
両頬を指でつままれた。
恐る恐る目を開けると、すぐ目の前に柚くんの綺麗な顔がある。
「…ばか」
柚くんのきれいな瞳が真っすぐに私を見ていた。
柚くんは軽く私の頭を小突くと、背中を向けて先に戻って行く。
バカ、…だよね。
柚くんの背中が涙でにじむ。
柚くんの言葉が甘く聞こえてしまう。
柚くんの手が優しく感じてしまう。
柚くんのキスに意味を探してしまう。
ホント、バカだよね。
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