セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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柚くんの食えない上司 (前編)

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「橘、俺に相談があるんだって」

平日。終業後。オフィスビル15階。
まだフロアには結構な人が残っているのに、うちの課のチーフが何だか嬉しそうに俺に近づいて来た。

桐生颯人。海外推進部チーフ。
仕事が出来て、穏やかで、大人の魅力に溢れている。

と、噂されているけれど、
実のところ、

「夜の営みのことかな。他の人には相談できないって言ってたもんな」

ちょっと変態で一途なおっさんだと思う。

「柚くん、加減を知らないから」

…柚くん言うな。

おっさんの嫌がらせで海外推進部に異動になって1カ月。まあ、仕事は別にいいんだけど、…

「あおい、従順だからなぁ。何しても拒まないし。あー、可愛かったなー、俺の腕の中で泣いてるあおい」

上司が若干うっとうしい。

まあ。
桐生はあおいのことが好きで離婚したくらいだから、多分、今もまだ想ってるんだろう。

そんなに簡単に忘れられないってことは、よく分かる。

しかも。
こんな手が早そうなくせに、あおいとは、ないらしいし。

あおいは。
…2回目だったから。

『…全部柚くんがいい』

俺が加減出来ないんじゃない。
あの無自覚タヌキが、煽ってくるのが悪い。

「藤倉くん、なんか今の顔ムカつくからその資料今日中に上げといて。俺、先に橘とお前んちで待ってるから」

…なんでだよ。

しょうがねえからパソコンを叩く。
画面を見ながら、先日桐生に聞かされた話が頭をかすめた。

『…海外赴任の話が出てる』

来年からNYにどうかって話で、早くて3年。基本5年。
多分、行った方が仕事の幅が広がる。

でも。

『もう、どこにも行かないでね』

あおいを置いては行けない。

連れて行く、としたら。
あいつの仕事とか家族とか友だちとか、…
あいつと引き離すことになる。

「大丈夫だよ。寂しくないように、橘のことは俺が慰めておくから。お前は仕事に励んでこい」

桐生は楽しそうに言いやがったけど。
どこまで本気かはわからない。

…あおいには、まだ伝えていない。

とりあえず、仕事が終わったのでパソコンを閉じて経理課に行ってみると、本当にあおいがいなかった。

桐生と帰ったのか。
素直過ぎるだろ。

食材を買って家に帰ると、

「あ、おかえり」
「…」

なんで自分ちで上司に出迎えられなきゃならないんだよ…

「柚くん!」

次いで、あおいが飛びついてきた。

「おかえりなさい!」

満面笑顔。
ホントこいつ、…

「…ばかタヌキ」

クソ可愛くてずるいタヌキの頭を軽く殴っておいた。

この笑顔を曇らせたくない。
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