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08.担任教諭・水野ヘビイ、レベル9に近づく①
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「レオン様。かあっこいい~~~」
レオンはレベル9が水蛇に襲われそうになると、実体化してほんのひと睨み、いや、ほとんど瞳を動かすこともなく、瞬時に水蛇を抹消した。
まあ、あんな下っ端妖魔、レオン様の敵ではないけど。
ハルトは、隣に戻ってきたレオンを憧れのまなざしで眺める。
レオン様は、本当に強い。優しくて最高にかっこいい。
「……だる。ハルト、後、適当にやっといて」
そして、無気力。
魔界でも最高峰の魔力と最高級の美貌を持っているのに、惜し気もなくさっさと隠して、よりにもよって小豚に化身したレオンは、ハルトの返事を待たずしてレベル9のポケットに収まった。
あああ、あんなにかっこいいのに豚って。豚って……っ
レオンのギャップにこっそり悶えながら、ハルトは任された「後」を抜かりなく行うため、人間の女性を観察しに出かけた。
レオンの好みは三百万年級の魔女だけど、しょせん人間にそんな妖艶さは期待できない。
若い。青い。そそられない。
うーん、まあ、だいたいこんな感じかな。
それでも一応好みを混ぜ合わせた女性の姿に化身して、地上に降り立ち、ショーウィンドウに映った自分の姿を眺めてみる。
うん。いいんじゃないか。
レオン様には遠く及ばないけれど、普通に街並みに溶け込む容姿にはなっている、とハルトは自分の出来栄えに満足した。
全身ピンクコーデの派手過ぎる中年女性が、ルンルン身体をくねらせながら下町の商店街を歩く。
すれ違う人がぎょっとしたように二度見していることをハルトは知らない。
レオン様に任されたんだから、絶対に上手くやってやるぜ。
-----------------------
なんだ、今の。
草村アカリを追いかけて講堂を突っ切り、トイレのドア前に立った真田豹は、信じられない光景を目の当たりにした。
光に包まれた魔神のような男が現れたかと思うと、一瞬にして弾けるように消え、その後、アカリのポケットが光の残像を吸い込んで微かに動いた。
え。人? え。消えた?
「……おい。アカリ?」
高校入学を機に呼び方を「クサムラ」に改めたのに、素の「アカリ」に戻っていることに自分では気づいていない。
今見たものが理解出来ずに、呆然としているアカリに声をかけると、アカリは弾かれたように振り返り、豹を見て明らかにがっかりした。
クソ。こいつは、いつもいつも。
草村アカリは何をしても豹に目を向けない。
腐るほどの金を持ち、幼少期から欲しいものは何でも手に入れてきた。誰もが豹に跪いた。
それなのに。
アカリは思い通りにならない。
貧乏で飛び切り美人でもないくせに、豹を好きにならない。
友だちもいないし弁当も買えないし虐められているくせに。
もう、豹に出来ることは生卵をぶつけるくらいで。
でも今日は特別な日だから他にもちゃんと用意してきた。
それなのに。
苛立ってアカリに近づくと、有無を言わせず腕をつかみ、ポケットの中に手を突っ込んだ。
「ちょ、……っ」
「……っ、痛って―――っ‼」
次の瞬間、大袈裟に手を振り回す羽目になった。
豹より先にアカリの唇を奪ったにっくきマイクロブタにしこたま噛みつかれたから。
「クソ、またお前か」
「……ピグ?」
ピンク色のマイクロブタが豹の指にぶら下がったまま、鼻であしらう。
どうもこのブタ、豹を舐めてかかっている気がする。というか、完全に豹の心情を見透かしている。
「モモ。おいで」
アカリが手を差し出すと、当然のようにブタが飛び乗ってこれ見よがしに頬を擦り寄せる。
こいつ、絶対、俺に見せつけてるよな。
っていうか……
「モモぉ?」
そんな可愛いこぶった名前、こいつに似合うか?
もっとこう、ブウとかドブタとかクソブタとかさ……
片眉を上げて見せたけれど、アカリは豹を見もしない。
クソ、俺だって豹って呼ばれたことないのに。
「ピピピグ……」
おい。このブタ、今、絶対俺のこと見て笑ったよな。
レオンはレベル9が水蛇に襲われそうになると、実体化してほんのひと睨み、いや、ほとんど瞳を動かすこともなく、瞬時に水蛇を抹消した。
まあ、あんな下っ端妖魔、レオン様の敵ではないけど。
ハルトは、隣に戻ってきたレオンを憧れのまなざしで眺める。
レオン様は、本当に強い。優しくて最高にかっこいい。
「……だる。ハルト、後、適当にやっといて」
そして、無気力。
魔界でも最高峰の魔力と最高級の美貌を持っているのに、惜し気もなくさっさと隠して、よりにもよって小豚に化身したレオンは、ハルトの返事を待たずしてレベル9のポケットに収まった。
あああ、あんなにかっこいいのに豚って。豚って……っ
レオンのギャップにこっそり悶えながら、ハルトは任された「後」を抜かりなく行うため、人間の女性を観察しに出かけた。
レオンの好みは三百万年級の魔女だけど、しょせん人間にそんな妖艶さは期待できない。
若い。青い。そそられない。
うーん、まあ、だいたいこんな感じかな。
それでも一応好みを混ぜ合わせた女性の姿に化身して、地上に降り立ち、ショーウィンドウに映った自分の姿を眺めてみる。
うん。いいんじゃないか。
レオン様には遠く及ばないけれど、普通に街並みに溶け込む容姿にはなっている、とハルトは自分の出来栄えに満足した。
全身ピンクコーデの派手過ぎる中年女性が、ルンルン身体をくねらせながら下町の商店街を歩く。
すれ違う人がぎょっとしたように二度見していることをハルトは知らない。
レオン様に任されたんだから、絶対に上手くやってやるぜ。
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なんだ、今の。
草村アカリを追いかけて講堂を突っ切り、トイレのドア前に立った真田豹は、信じられない光景を目の当たりにした。
光に包まれた魔神のような男が現れたかと思うと、一瞬にして弾けるように消え、その後、アカリのポケットが光の残像を吸い込んで微かに動いた。
え。人? え。消えた?
「……おい。アカリ?」
高校入学を機に呼び方を「クサムラ」に改めたのに、素の「アカリ」に戻っていることに自分では気づいていない。
今見たものが理解出来ずに、呆然としているアカリに声をかけると、アカリは弾かれたように振り返り、豹を見て明らかにがっかりした。
クソ。こいつは、いつもいつも。
草村アカリは何をしても豹に目を向けない。
腐るほどの金を持ち、幼少期から欲しいものは何でも手に入れてきた。誰もが豹に跪いた。
それなのに。
アカリは思い通りにならない。
貧乏で飛び切り美人でもないくせに、豹を好きにならない。
友だちもいないし弁当も買えないし虐められているくせに。
もう、豹に出来ることは生卵をぶつけるくらいで。
でも今日は特別な日だから他にもちゃんと用意してきた。
それなのに。
苛立ってアカリに近づくと、有無を言わせず腕をつかみ、ポケットの中に手を突っ込んだ。
「ちょ、……っ」
「……っ、痛って―――っ‼」
次の瞬間、大袈裟に手を振り回す羽目になった。
豹より先にアカリの唇を奪ったにっくきマイクロブタにしこたま噛みつかれたから。
「クソ、またお前か」
「……ピグ?」
ピンク色のマイクロブタが豹の指にぶら下がったまま、鼻であしらう。
どうもこのブタ、豹を舐めてかかっている気がする。というか、完全に豹の心情を見透かしている。
「モモ。おいで」
アカリが手を差し出すと、当然のようにブタが飛び乗ってこれ見よがしに頬を擦り寄せる。
こいつ、絶対、俺に見せつけてるよな。
っていうか……
「モモぉ?」
そんな可愛いこぶった名前、こいつに似合うか?
もっとこう、ブウとかドブタとかクソブタとかさ……
片眉を上げて見せたけれど、アカリは豹を見もしない。
クソ、俺だって豹って呼ばれたことないのに。
「ピピピグ……」
おい。このブタ、今、絶対俺のこと見て笑ったよな。
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