無気力魔王子レオン、最上級の魂【レベル9】を宿す平凡貧乏女子高生を護る

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07.美し過ぎる光の剣士が現れる②

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 一連の事件の報道を思い出した。

 犯人の痕跡はどこにもない。失われた臓器も見つかっていない。
 警察では、臓器を抜き出した方法について疑問視している。
 被害者の身体には小さな傷跡一つ残っていないのだが。
 傷をつけずに臓器のみを抜き出すなんて、出来るのだろうか、と。

 まるで目に見えない手が身体の表面をすり抜けて、内臓だけえぐり出したようだ、と伝える事件の記事もあった。
 それこそ、人ならざる者の手による犯行のようだ、と。

 これだ。蛇だったんだ。
 絶望の中で納得した。

 この蛇たちが、跡を残さずに内臓に入り込んで……――

 考えるだけでおぞましいのに、脳内が冷静に分析を始める。その一方で、毒々しく光る赤い蛇の目玉から目が離せない。
 口の中がカラカラに乾く。見られている。狙われている。

【次は、お前だ。】

 個室から這い出した白い蛇が舌なめずりをしながら首をもたげる。狙いを定めて大きな口を開け、アカリの顔めがけて飛び掛かってきた。

「いやあああっっ‼」

 目をつむり、顔を背けて、極力身体を縮こまらせ、床にうずくまる。

 次の瞬間、閉じた瞼の向こうに光の咆哮ほうこうが映った。

 痛く、ない、……?

 その瞬間に備えて固く縮こまらせていた身体には、痛みも違和感も何も感じない。
 恐る恐る目を開けたアカリは、自分と蛇の間に守るように立ちはだかった美しい後姿を見た。

「お前らみたいな下等生物まで魅かれてんのか」

 剣士のような袴姿ですっきり伸びた背筋。肩から背中へのきれいなライン。無造作に束ねられた銀髪。

「レベル9に近づけたことは褒めてやる。だが、これは俺のもんだ。己の高望みを地獄で後悔するんだな」

 低くて艶のある甘い声が、耳に心地よく響いた。

 誰だろう。いつの間に、ここに。

「そんな、……そんな、レオン様、……」
「まさか、レオン様が、……っ」

 ざわざわと騒めきが広がり、白蛇たちが断末魔のような声にならない悲鳴を上げた。

 ギギギ、ギギギ、ギギギ、――――――――――――――…

 美しい後姿の人が、何かをしたのだろう。
 蛇たちの生気が吸い取られ、ミイラのように乾いた皮だけが残り、やがて、全て粉々に砕けて光の中に溶けていった。

 一面濡れていた床は、すっかり乾き、水溜まりもなくなっている。
 光の洪水が止んで、剣士のような格好の人がゆっくりとアカリに振り返った。

 それは、人知を超越した美しさだった。

 目を奪われて、逸らすことが出来ない。
 息が止まって、動くことが出来ない。

「……早く来いよ。お前は俺のもんだからな」

 低くかすれた甘い声が心をつかむ。
 瞬きする間もなく、何を言うことも出来ず、ふいに美し過ぎる男性が消えた。

 え?

 弾かれたように瞬きを繰り返す。目をこすってみる。

 いない。どこにも。
 夢か幻か。妄想か現実か。

 人間離れした美し過ぎる男性は、周囲を見回しても、何回確認しても、もうどこにもいなかった。
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